Wi-Fiやブルートゥースの通信がいきなり遅くなったり、途切れたりといった経験をしたことはないだろうか。これらは2.4GHz帯という帯域で電波を飛ばしているが、驚くべきことにこの帯域に干渉するノイズがUSB3.0の端子から発生しているという。この問題に詳しい有限会社電机本舗の代表、由井清人氏に詳細を伺った。
2.4GHzの大渋滞
一般に、携帯電話やWi-Fi、無線機などは「電波」を使って信号をやりとりしている。電波は文字どおり波の性質を持ち、1秒間に揺れる波の数を「ヘルツ(Hz)」という単位で数える。CPUやメモリの速度などを示す単位として認識している読者も多いことだろう。
Wi-Fiやブルートゥースの電波は2.4GHz帯の電波を使って通信を行う(Wi-Fiは5GHz帯も使用)が、通信中に、近い帯域の別の電波が発生するとそれがノイズとなる。代表的なノイズに電子レンジから発生する電磁波があり、レンジを使っているときに無線LANにつながりにくくなったり、ワイヤレスマウスの調子が悪くなるのもこれが原因だ。
最近ではWi-Fiやブルートゥースが一般的になり、こうした情報は広く認知されているが、実は電子レンジ以外にも2.4GHzに干渉する脅威がある。それがUSB3.0製品だ。案外知られていないことだが、USB3.0製品から発生するノイズの周波数は2.4GHz帯に近く、干渉する可能性が極めて高い。アップルのWEBサイトにも「一部のUSB3デバイスは、無線周波数干渉を引き起こすことがあります」と記載があるほどだ。
Wi-Fi、ブルートゥース、そしてUSB3.0はいずれも広く普及しているが、この問題が一般のユーザに広く知られているとは言い難い。こうした状況に危機感を持ち、ユーザにUSB3.0製品の選び方を伝えたいと語るのが、有限会社電机本舗の代表、由井清人氏だ。電机本舗は80年台からソフト・ハードを開発・販売している老舗メーカーで、由井氏は自身のブログでもUSB3.0端子のノイズについて考察している。今回はノイズの傾向と、その対策方法を伺った。
■USB3.0コネクタから出るノイズの比較グラフ
スペクトラムアナライザを使用してノイズを測定した結果。青い線がUSB未接続時、緑の線は金属シールドを施したUSBコネクタ、赤い線は金属シールドを付けていないUSBコネクタから出るノイズをそれぞれ測定したもの。未接続時と比べると、接続した際のグラフにノイズが発生しているのがわかるが、非シールドだと明らかにノイズが増えている。
対策方法はシンプル
「たとえばUSBハブの場合、ノイズの発生源は大きく分けて3カ所あります。1つはケーブルの先端にある、Macと接続するコネクタ部分。ケーブルとコネクタが丸ごと金属製の皮膜で覆われていればほとんどのノイズはカットできるのですが、多くの場合、コネクタの金属カバーがケーブルとの接続部まで達しておらず、この隙間からノイズが漏れ出してしまいます。コネクタとケーブルが透明な樹脂でできていれば内部の様子がわかるので、購入時に確認するとよいでしょう。もう1つはハブの基板です。基板が鉄板で覆われていればよいのですが、そういったハブはあまり売っていません。外部のカバーが金属製の物を選ぶと、ノイズは低減できます。3つ目はハブに接続するUSB機器ですが、これは対策が難しいので、ハブとMacの距離を取って使う必要があります。1メートル以上離して使うのが望ましいでしょう」
ノイズの発生源がMac本体に近いほど、その影響も強くなる。特にMacBookなどはディスプレイのヒンジ部分に配置されているアンテナが、コネクタやケーブル、その先にあるUSB機器からのノイズを拾いやすいのだという。
「流通しているデバイスの数は多いのに、この問題はあまりユーザに知られていません。また、WEBサイトでUSB製品を買う場合、これらの対策ができているものを事前に把握して買うことはとても難しいです。よって、電机本舗では現在、ノイズ対策済みのUSB3.0ハブを開発しています。Wi-Fiなどの通信が途切れて悩んでいるユーザには、ぜひ使用感を聞かせてほしいですね」
現在、電机本舗ではノイズを低減した試作USB3.0ハブのモニターを募集しているとのことだ。USB3.0を使うと無線機器に影響が出てしまって困る!というユーザは、下に記載のURLから応募してみてはいかがだろうか。
ノイズ対策済みUSB3.0ハブ電机本舗にてモニター募集中!
電机本舗では現在、試作中のUSB3.0ハブのモニターを募集しています。詳細は下記URLにてご確認ください。【URL】http://hwuh3.dnki.co.jp/
企画協力:有限会社電机本舗