2016年12月12日、リクルートライフスタイルが、東京国際フォーラムにおいて「Airレジカンファレンス2016」を開催した。執行役員の大宮英紀氏は、基調講演の壇上でさまざまな新サービスを発表したが、中でも本誌が注目したいのがアップルペイへの対応だ。この対応が市場にどのような変化をもたらしていくのだろうか。
小規模店舗の負担を下げる
「Airレジ」は、リクルートライフスタイルが提供するiPad用POSレジアプリだ。最大の特徴は、初期費用・月額費用ともに無料であるということ。通常、小売店や飲食店がPOSレジシステムを導入しようとすると数十万円のコストがかかり、これが新規開店の足かせとなる。Airレジはこうした障害を取り除くソリューションとして多くの事業者に支持され、今や25万5000アカウントが利用している(2016年9月末時点)。2016年12月12日、東京国際フォーラムにてAirレジカンファレンスが開催されたが、ローンチから3年目を迎えたこのサービスは、広い会場を多くの参加者で埋め尽くすまでに成長した。
同社は、Airレジと連携可能なクレジットカード・電子マネー決済サービスとして「Airペイ」を提供しているが、カンファレンスの基調講演ではそのAirペイをアップルペイに対応させると発表した。
Airペイは、専用のカードリーダをiPhone/iPadにつないで決済を行う仕組みで、月額固定費と振り込み手数料が無料になっている。Airレジと同様に、店舗の負担を大幅に下げるサービスだ。このサービスがアップルペイに対応するということは、小規模の小売店や飲食店が低コストでアップルペイを導入できるということにつながる。
利用開始は2017年4月を予定。主要な国際クレジットカード6種のほか、スイカ(Suica)など各種交通系カードにも対応予定だという。提供後に広く認知されるようになれば、ハードルの低さからこのサービスを導入する店舗がさらに増えるだろう。アップルペイは、大手チェーンより先に意思決定の速い小規模店舗を中心に浸透していくかもしれない。
意欲的なサービスが続出
AirレジとAirペイは、ともにアップル製品を利用したソリューションであり、導入する店舗が増えることはiPadやiPhoneの普及にもつながる。2016年2月、同社はアップルのモビリティパートナーとなり、iPadをベースとしたビジネス支援をアップルと一緒に取り組んできた。これまでアップル直営店でのセミナーなどを開催してきたが、11月からはさらに連携が進み、アップル直営店のビジネススタッフがAirレジ・Airペイの導入相談に応じる体制が出来上がった。レシートプリンタなどの周辺機器も申し込めるようになったという。
また同社は、アップルとのパートナーシップだけでなく、ビックカメラとの協業も強化している。ビックカメラでは、実際にAirレジを見て、試して、相談できる「Airレジサービスカウンター」の設置を進めており、全国26カ所で展開している(2016年12月時点)。必要な周辺機器の販売はもちろん、事業者に対してiPadや周辺機器の購入費用が補助される「軽減税率対策補助金」の申請書作成サポートも行っている。こうしたパートナーシップの強化も、Airレジ・Airペイの普及に寄与していくはずだ。
さらに同社は、このカンファレンスで数多くの新しい取り組みを発表した。予約管理や顧客管理を行うための「レストランボード」、ポイントによる販売促進を支援するアプリ「POICHI for Airレジ」など発表されたものは多岐に渡る。中でもPOICHI for Airレジは、昨今の店舗運営にとってポイントサービスがリピーター獲得の重要な要素になっていることもあり、興味を持つ店舗が多いはずだ。このサービスを利用することでTポイントやポンタ(Ponta)のポイントプログラム導入も可能になるという。
このように革新的なサービスを意欲的に繰り出すAirレジが、今後さらに大きく飛躍していくのは間違いないだろう。同社が提供する複数のサービスが互いに連携し合うことで、店舗のメリットにも、顧客のメリットにもつながっていく。iPadとAirレジにより、中小事業者のビジネスは大きく変貌を遂げることになるだろう。