アップルはエイズ撲滅を掲げる(RED)との提携を拡大し、12月1日からキャンペーンを展開した。新たなPRODUCT(RED)製品の発表に加えて、自社プラットフォームを活かした多彩な寄付方法を提供。そこからアップルの変化を感じ取ることができる。
(RED)のケースが登場
アップルと(RED)の提携は、2006年の(RED)設立以来、10年目となる。(RED)は、エイズを世界から撲滅することをミッションに、世界的ロックバンド「U2」のボノが発起人となったことでも知られている。
アップルとボノとの関係は深く、2004年にはU2 iPodをリリース、そのブラックのボディと赤いホイールの意匠はiPodクラシック(Classic)まで引き継がれた。また、2014年のiPhone 6発表会にはU2が登場し、ライブを披露、新アルバムをiTunesで無償配信した。
ボノは、TEDカンファレンスなどでも、積極的に(RED)の活動をアピールしている。それによるとHIVを持って生まれてくる新生児の数は2005年の1日1200人から現在では1日に400人にまで激減し、(RED)の活動を通じて2020年までにこの数字をゼロにできるとしている。
アップルはGAPやコカ・コーラ、セールスフォース(Salesforce)などとともに、(RED)の企業サポーターでもあり、これまで、iPodのPRODUCT(RED)モデルや、赤いiPhone/iPadケースなどを製品化してきた。2016年のキャンペーンでは赤いiPhone 7向けスマートバッテリケースや、iPhone SE向けレザーケースをラインアップに加え、傘下のBeatsからも赤いヘッドフォンが登場した。
プラットフォームの活用
また、今回から新たにキャンペーンに加わったのが、アップルペイ(Apple Pay)だ。アップルは、キャンペーン期間中、直営店またはオンラインストア、アプリでアップル・ペイを使うごとに1ドル、最大100万ドルまでを寄付することを発表。アップルペイはすでに、慈善団体の寄付受付に利用できる仕組みを持っていたが、アップル自身が決済から(RED)に対して寄付を行うのは初めてのことだ。
さらに、アップストア(App Store)でのキャンペーンも行われた。アップストアでは、賛同するアプリアイコンが赤くなり、ストア全体が真っ赤に染まった。加えて、20ものゲームアプリでは特別なアイテムなどが配信され、課金額が寄付される。こうした(RED)に対する新しい取り組みは、アップルの決算書類から判断しても実に妥当なものだ。
アップルは2016会計年度、減収減益に転じた。2015年度に含まれた驚異的なiPhone 6の販売からの反動ともいえるが、その一方で、巨大になったユーザベースを背景にしたプラットフォームビジネス、すなわち決算サマリーでいう「サービス」部門が四半期ベースで前年比二桁成長を続けている。
アップルペイもアップストアも、このサービス部門に含まれており、まだまだ製品の販売と比べれば規模は小さいが、着実なビジネスの柱として成長を遂げているところだ。製品によるチャリティからサービスによるチャリティへの移行は、アップルの企業の柱が徐々に移行していることを象徴している。
アップルでポリシー&ソーシャルイニシアティブを担当する副社長、リサ・ジャクソン氏は、2016年3月に行われたスペシャルイベントで、地球環境問題や人々の健康について、アップルが社会的責任を受け持つことを強調。今回も、(RED)への賛同を「10年目を特別なものにする」と意気込みを語っていた。
アップルが今後、社会的な取り組みに関して、どのような問題にどのような手段で取り組むのか、注目していきたい。