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Drop&Typeで、カンタン!楽しい! オリジナルフォント作り

著者: 伊達千代

Drop&Typeで、カンタン!楽しい! オリジナルフォント作り

誰もがフォントを楽しめる

従来のヒラギノフォントや游明朝体に加え、macOSシエラでは新たに游教科書体や凸版文久書体がバンドルされ、Macで使える日本語フォントの種類は豊かになってきました。ビジネスの場面ではプレゼンテーションや書類作成のためによりいっそうの表現力が求められ、同人誌の創作や趣味の発表といったパーソナルな用途でも書体のデザインが重要視されてきています。たとえば力強く表現したいときには幅広で極太線のゴシック体を大きく配置したり、優美に見せたいときには線の細い縦長プロポーションの明朝体を使ったり…。今や誰もが書体デザインの持つ力に気づき、またその表現力を使いこなすことのできる時代といえるでしょう。

しかしそんな中にあってなお、フォントを「作る」作業は、素人が手を出せる領域ではありません。デザインについてのさまざまな知識を持ち、数千~数万の文字(1書体あたり)を1つ1つ描き、できた文字をコードと結びつけてデジタルデータに落とし込む。これら一連の流れは、ほとんどが専用ソフトを使って行われるものであり、またどこをとっても専門家にしかできない作業なのです。

Mac用ソフト「ドロップ&タイプ(Drop&Type)」は、フォント制作会社のタイププロジェクトから今年4月にリリースされたフォント作成支援ツール。もともとは自社で試作書体を手早く確認するために開発されたものでした。

アドビイラストレータで作成したファイルをドロップ&タイプにドロップするだけと、操作や機能はいたってシンプル。1つのフォントとして登録できる文字数は最大280字まで、作成したフォントの販売は不可(無料配布はOK)などの制約はあるものの、文字種(ひらがな、漢字、点や丸といった記号など)の組み合わせは自由で、作成したフォントは商用利用可能です。ドローソフトを使っていちから文字を描くこともできますが、手書きの文字をスキャンしたものを利用するほうが手早く、またオリジナリティのあるフォントを作成できるでしょう。

デザインの仕事をしている人ならショップや会社のためのオリジナルフォントのデザインや、POPやチラシを効率よく作るためにフォントを作成することが可能です。また、自分の手描き文字で心のこもった挨拶状や名刺、年賀状を作りたいといった、よりパーソナルなニーズにも応えてくれます。何よりもドロップ&タイプには、これまでメーカーでしかできなかったフォント生成の作業を、ほんの数十秒で終らせてしまう手軽さがあります。誰もが書体のデザインを楽しむことで、よりパーソナルでクリエイティブなフォントが作られ、思いもよらない使われ方も出てくるのではないでしょうか。新たなフォントのステージを感じさせる製品です。

オリジナルフォントは面白い! 使い方のアイデアあれこれ

1・年賀状にひとこと添えて

テンプレートで作った年賀状も、プリント前に手書き文字でひとこと添えると温かみがアップ。書き損じの心配もありません。

2・イラストやコミックに

既存のフォントではイメージが堅すぎる場合も、オリジナルフォントならイメージを自在に変化させられます。色やサイズも変更自由。

3・詩や小説に味わいをプラス

同人誌や写真集を作るとき、専用のフォントを作っておけばオリジナリティが格段にアップします。文字が変わるだけで、同じ文章でもまったく違って見えます。

4・メニューやPOPに

一度フォントを作ってしまえばあとでメニューを作り替えるのも簡単。筆で書いているメニューも、フォント化することで省力化が可能に。

5・街のステキ文字を集めて

看板や張り紙など、デジタルフォントにはない面白い文字を見つけたらiPhoneでパシャ! 自分だけの街フォントを作ってみるのも楽しいでしょう。

 

Drop&Typeでフォントを作ってみよう!

ソフトのインストール

(1)まずはタイププロジェクトのオンラインショップでドロップ&タイプを購入します。決済後に送られてくるメール(銀行振込の場合は振込確認後)の指示に従ってダウンロードの手続きをします。フォルダにはソフトの本体のほかに、説明書やサンプルシート、ドロップシートなどがありますので、フォルダごと[アプリケーション]に移動しておきましょう。

Drop&Type 1.0

【販売】Type Project

【価格】2500円

【URL】http://typeproject.com/apps/dropandtype

【備考】アドビイラストレータCS5以上がインストールされたMac OS X 10.6.0以上。学校法人版もあり(要申込/10ライセンス以上)。

(2)[ドロップ&タイプ]でフォントを作るためには、アドビイラストレータCS5以降が必要です。今回はCC(2014)でテストしています。

元になる文字を用意しよう

(1)フォントにしたい文字を書きます。文字種は使用する分だけで構いません。筆記具は筆でもペンでも自由ですが、ある程度大きさを揃えて書くようにしましょう。漢字は既存のフォントと組み合わせることにして、かなを中心にいくつかのパターンを用意してみました。

(2)手書き文字をスキャンします。スキャナがなければ、iPhoneカメラで撮影してもOK。スキャナやカメラアプリ、フォトショップなどの画像編集ソフトで明暗のコントラストを高めておくと、あとの作業が楽になります。

(3)手書き文字の画像をイラストレータで開きます。画像を選択して[オブジェクト]メニューから[トレース]→[作成]を選びます。トレース精度については[画像トレース]パネルで調節します。よければ[拡張]ボタンをクリックして文字をパスにします。

文字を専用シートに配置

(1)[Drop&Type製品版]フォルダ内の[ドロップシート]を開くと、使用するイラストレータのバージョンごとにドロップシートが用意されています。バージョンに合ったファイルを開きましょう。

(2)ドロップシートには、マス目と文字が入力されています。対応する文字がある場合は、そのマス目にトレースした文字を配置します。サイズは適宜調節しましょう。

(3)シートに対応する文字がない場合は、別のマス目に配置して文字を書き換えます。これで自分に必要な漢字や記号などを追加することができます。入力が終ったら[ファイル]メニューから[別名で保存]でシートを保存しましょう。

フォントを生成する

(1)ドロップ&タイプを起動します。小さなウインドウが開きますので、トレースした文字のフォント名や作者などを入力し、作成したドロップシートをウインドウ内にドラッグ&ドロップしてください。

(2)フォントの生成にかかる時間は、数秒~数十秒ほど。完了すると表示されるダイアログで[OK]をクリック。自動的にフォントブックが起動するので、[フォントをインストール]をクリックします。

(3)これでフォントがインストールされました!フォントブックを開くと、そこに自分が作ったオリジナルフォントを確認できるはずです。以降は、Mac内の各ソフトのフォントリストから、そのフォントを選べるようになります。