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iPhone 7/7 Plus USER REPORT

Photo●井上直哉

素材の質感さえも目と指で楽しめる圧倒的な美しさ

人を喜ばせる触感

ジェットブラックのiPhone 7の背面はこれまでのiPhoneの中でも傑出した美しさだと思います。手に持ったときのヌメっとした感触はiPhone 3Gに少し似ていますが、それをアルミ合金で実現しているのが驚きです。しかも、3Gの時代とは本体の薄さも軽さも桁が違います。見た目の美しさだけでなく、手に伝わる触感が持つ人を喜ばせてくれます。

もちろん、これは「iPhoneで何ができるか」という機能とはまったく関係のない話です。でも、ほかのスマートフォンではなく、あえてiPhoneを選ぶ人には、こうしたスペックシートに表れない部分の価値も大事にしてほしいと思いあえて書きました。

新たに搭載されたスイカ対応やステレオスピーカは日々のライフスタイルを変える重要な機能改善で、私自身も大喜びしていますが、実はこうした機能の恩恵に授かっている時間は意外に短いものです。それと比べて、机の上に何気なく置いたとき、視界の隅に入る美しさであったり、歩きながらなんとなく握りしめているときの肌心地の良さの恩恵のほうが時間にしても長いと思います。

おそらく、こんなところにこだわらなくてもiPhoneは、機能だけでも十分売れることでしょう。そういう意味では人によっては、これが無駄な投資に思えるかもしれません。

しかし、だからこそ工業製品の世界で、こうしたところにこだわってくれるアップルは希少であり貴重な存在なのです。今回のジェットブラックの仕上げの開発でも、硯の上に薄く伸ばした墨汁のようなどこまでも深い闇から鋭いまでの光を反射させる超光沢の仕上げを実現するべく、9つの工程からなる1時間以上に及ぶ製造工程を開発しました。iPhoneの年間総出荷台数が約2億台であることを考えると、数千万台近いiPhoneにこの手間がかけられている計算になります。

LTEに移行したiPhone5以降、Dライン(アンテナの線)と呼ばれ目立っていた背面でアンテナも、今回は構成部品と製造技術の進歩で本体の上と下端に寄せられ目立たなくなり、再び背面いっぱいに広がった素材の質感を指で楽しめるようになりました。

新たな「大小」の選択基準

最近のiPhoneのもう1つの特徴としては突き出したカメラがあります。これまではレンズをリングで囲むような仕上がりになっていたものが、iPhone 7では墨汁の上に垂らした墨滴のような滑らかな線を描いて盛り上がっていて目を楽しませてくれます。しかも、これまでは位置がやや中央寄りだったのですが、ギリギリまで隅に寄せられ、本体の上端からも左端からもほぼ等距離にバランスよく配置されています。この見た目の美しさにスイカ対応や防水対応などの魅力が加わったiPhone 7は、かなり魅力的な製品だと思います。

しかし、今回、そのiPhone7を素直に選べない原因を作っているのがiPhone 7プラスの存在です。大きな液晶を搭載するべく大柄な作りなので、iPhone 7と比べると若干見劣りしますが、iPhone 6sプラスとの比較ではかなり引き締まった印象を受けます。

また、年内にも公開されるという、2つのレンズを使って撮影した人物の部分を認識して背景をきれいにぼかすポートレート撮影モードの仕上がりに夢が膨らみます。また、標準レンズに加え望遠レンズの搭載、デジタルズームを加えて最大10倍ズームまで撮影できるようになったことで、写真を撮る楽しさが大幅に増しています。

大小のiPhone、これまでどちらを選ぶかは片手文字入力のしやすさと、画面サイズに大きくよっていました。しかし、これからは手に持ったときを含めた本体の見た目の美しさ、つまり「リアルなアピール」と、カメラで撮ったときの写真の美しさ、つまり今で言えば「ソーシャルなアピール」の問題も加わってきます。

これまでで最高のiPhone。iPhone 4s以来のエポックではないかと思います。

文●林 信行 Nobuyuki Hayashi

aka Nobi/デザインエンジニアを育てる教育プログラムを運営するジェームス・ダイソン財団理事でグッドデザイン賞審査員。世の中の風景を変えるテクノロジーとデザインを取材し、執筆や講演、コンサルティング活動を通して広げる活動家。主な著書は『iPhoneショック』ほか多数。

 

防水とフェリカ対応でより幅広い人へ届くスマートフォンに

耳からうどん

iPhone 7とiPhone 7プラスを使い始めて20日ほどが経過しました。発売日前から使い始めていますが、本体カバーをつけた状態であれば、電車の中で使っていても誰からも注目されることはありません。周りにはiPhoneユーザが多いのですが、iPhone 7/7プラスは、本体サイズやデザインが前のモデルとほとんど変わらないため、「発売前の機種を使っている」とは気がつかれなかったようです。

本体色は新色となるジェットブラックとブラックですが、カバーをつけてしまうと、それすらわかりません。iPhone 7/7プラスは「目新しさに欠ける」のは事実であり、新製品を持っていたからと言って、街中で注目を浴びることはないでしょう。

ただ、実際に使ってみると「今までと大きく違う」と感じるところがあります。中でもホームボタンの変化は無視できない「違和感」があります。これまでの動くボタンから単なる凹みになってしまったことで、ちょっと慣れが必要です。さすがにiPhoneを何年も使い、1日に何十回もホームボタンを押してきたことを考えると、凹みに慣れるには少々時間が必要なようです。

イヤフォンジャックがなくなったことに関してもちょっと不満です。3.5ミリからライトニングに変換するケーブルが付属するのですぐに困ることはないのですが、変換ケーブルを間に入れるのは決してカッコよくはないし、取り回しもイマイチな気がします。

アップルでは「エアポッズ」もオプション品で用意しており、そちらを活用すれば解決するのかもしれません。実際、エアポッズを耳に装着して音楽を聴いてみましたが、自分の耳にはとりあえずフィットするので問題なく使えそうです。耳に挿入して落ちたりしないかどうか、装着した状態で50回ほど縄跳びをしてみました(二重跳びは子どもの頃からできた試しがない)が、落ちることなく安定して使用できました。

あとは、エアポッズを耳に挿入した状態が、耳からうどんが出ているような見た目なので、外出時に羞恥心を克服できるかが課題と言えそうです。

お風呂に投入

また、iPhone 7/7プラスを持ってお風呂に入って防水性能も試してみました。シャワーを浴びせたり、浴槽にダイブさせたり、お風呂のお湯をiPhone 7/7プラスで混ぜてみたりしましたが、特に壊れずに使えています。iPhone 7/7プラスが満たしているIP67というのはお風呂のお湯などは想定されてはいないそうですので、良い子の皆さんは真似をしないようにしてほしいのですが、シャワーの水がiPhone 7にかかってしまうと水滴によっていろんなアプリが起動したり、終了したり、激しい誤操作が繰り返されたりします。

また、画面に水滴がついた状態で指で操作しようと思っても、反応しないこともありました。万が一、入浴中に使うときは、できるだけ画面に水滴がかからないようにすることが大切です。もちろん、本体が濡れた状態で充電することは故障につながります。さらに、石鹸水や海水につけることも、壊れる原因になるので注意しましょう。

なんだかんだと不満も述べたりしましたが、本音で話すと、iPhone 7/7プラスはかなり気に入っています。カメラ性能が向上し、特にiPhone 7プラスなら、ちょっとした望遠で撮影できるのがかなり便利。仕事柄、記者会見やインタビューで毎日のように撮影する機会があるのですが、これからはiPhone 7プラスで記事用の写真を撮影しようかと思うほどです。

もちろん、もう1つのお楽しみがフェリカで、今からiPhoneで電車に乗るのが楽しみで仕方ありません。これまでのiPhoneの弱点であった防水とフェリカに対応したことで、幅広い人に受け入れられるiPhoneになったのではないでしょうか。

ちなみに、自分はiPhone 7とiPhone 7プラスの両方を購入しました。

文●石川 温 Tsutsumu Ishikawa

ジャーナリスト。1975年生まれ。中央大学商学部卒。「日経TRENDY」編集記者を 経て2003年に独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。NHK Eテレ「趣味どきっ!『はじめてのスマホ』」で講師役を務める。スマホの最新事情をまとめた週刊メルマガ「スマホ業界新聞」を配信中。