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アップルが実践しているキャッチコピーのテクニック●アップルに学ぶ「刺さる」キャッチコピーの作り方

アップルが実践しているキャッチコピーのテクニック●アップルに学ぶ「刺さる」キャッチコピーの作り方

Technique 1 ?? 同じ言葉を繰り返す

“先端まで、最先端の革新を。”

iMac(2015)

このキャッチコピーは、現行iMacのデザインを解説する文章に添えられたもの。レティナディスプレイを搭載しながらも最薄部5ミリのエッジを実現したことをコンパクトなフレーズで表現しています。このキャッチコピーでは、短いフレーズの中に「先端」という言葉を繰り返し使っています。このように、似た音の単語を繰り返すことでフレーズにインパクトを与えることができ、さらに言葉のリズムも良くなって相手の印象に残りやすくなります。

Technique 2 ?? 七五調を意識する

“あなた自身がパスワード”

iPad Pro(2015)

iPadプロのタッチIDを「七五調」で表現したキャッチコピーです。この例文に限らず、アップルのキャッチコピーには5文字や7文字のフレーズがかなり多く使われています。たとえば、iPadミニのキャッチコピーでも「ミニなのは、サイズだけ。」と5文字のフレーズが繰り返されています。日本語では、5文字や7文字のフレーズにすることでリズムが生まれ、心地よさ感じます。キャッチコピーも七五調を意識することで、見た人の頭にスッと入っていくようになるのです。

Technique 3 ?? 短い言葉で表現する

“とてつもないミニです。”

iMac mini(2014)

アップルのキャッチコピーは、短い文章で表現されたものが多いのですが、とりわけ印象的なのがこのコピーです。Macミニのコンパクトさとパワフルさを最小限のフレーズで表現しています。WEBサイトや広告などでは、人は瞬間で「自分に関係あるかどうか」を判断します。長い文書はしっかりと目を止めなければ意味を解読できないため、読み飛ばされてしまいがちです。正確さにこだわって長いフレーズにするより、より直感的に短い言葉で伝えることが大切なのです。

Technique 4 ?? 倒置法を活用する

“すべてを変えていきます。もう一度。”

iPhone 4(2010)

iPhone普及のきっかけを作り出したiPhone 3G/3GSに対し、デザインを一新して世に送り出されたiPhone 4。倒置法は、順序を逆にすることで後半の言葉に力を持たせることができ、この文章でも「もう一度」という部分が強い意志を持って伝わってきます。これが単に「もう一度すべてを変えていきます」だと、フレーズの力が弱まり、受け手の印象に残りません。また、倒置法には「適度な違和感」により受け手の頭に残りやすいという効果もあります。

Technique 5 ?? 強く言い切る

“軽さしかないノートブックとは、一線を画します。”

MacBook Air(2012)

MacBookエアは、かつてない薄さと軽さを実現したノートブックとして2008年に登場。その後、MacBookエアを模倣したような軽量ノートPCがいくつも市場に出回りましたが、このキャッチコピーにはそれらを一喝する迫力があります。消費者は、当然ながらより良いものを求めており、自社製品の魅力を強い言葉で言い切ることは効果的です。アップルはほかにも「Macへ。それが究極のアップグレードです。」という自信たっぷりのキャッチコピーを使っていたりします。

Technique 6 ?? 逆の意味の言葉を使う

“小さなボディの大きな一歩。”

iPhone SE(2016)

「大」と「小」など、逆の意味を持つ言葉を合わせて使うと、フレーズに深みを感じさせることができます。アップルは、ほかにも「軽いボディ。ヘビーなパワー。(iPadエア2)」「唯一変わったのは、そのすべて(iPhone 6s)」のように、逆の言葉を巧みに活用したキャッチコピーをいくつも生み出しています。逆の意味を使ったフレーズは、「悪貨は良貨を駆逐する」など、ことわざや成句でも多用されるキャッチコピーの王道テクニックです。

Technique 7 ?? 異質な言葉を組み合わせる

“おなじみの形が革命を起こします。”

Apple Pencil(2015)

「おなじみ」という日常的で平穏な単語と、「革命」という壮大な言葉の組み合わせ。先ほどの「逆の意味の言葉を使う」にも似ていますが、かけ離れた意味の言葉を並べて使うことで、見た人に「おや?」と思わせ、注目してもらうことができます。もともとアップルのキャッチコピーには「革命的」「驚異」「圧巻」などといった勢いのある言葉が多用される傾向がありますが、そこに異質な単語を組み合わせるようにすると、より効果が大きくなるのです。

Technique 8 ?? 利便性を想像させる

“あなたのソファをホームベースのすぐ後ろに。”

AppleTV(2012)

米メジャーリーグ専門チャンネル「MLB.TV」など数多くのコンテンツを楽しめるアップルTV。第3世代のアップルTVが発表されたとき、その魅力を伝えるために使われたのがこのキャッチコピーです。製品をアピールするときには、その製品が「利用者にどのような恩恵をもたらすか」を語ることが重要。しばしば「ベネフィット」という言葉で語られる広告コピーの基本テクニックですが、アップルはスマートにユーザのベネフィットを表現しています。

Technique 9 ?? 五感に訴えかける

“どこに触れても、より良い体験を。”

iOS 9(2015)

五感に訴える言葉を選ぶことで、受け手がより直感的にメッセージをイメージしやすくなります。また、iOS自体は形のないものですが、そこに「触覚」につながる言葉を入れることで、見た人はさまざまな想像を膨らませることができます。なお、2011年に5色のiMacが登場したときのキャッチコピーは「Yum.(英語で「おいしい」の意味)」。フルーツカラーのバリエーションを説明するだけでなく、おいしいものを食べたときの幸福感までイメージできる名作キャッチコピーです。

Technique 10 ?? ユーモアを込める

“Retinaディスプレイ。あなたの目が息をのむ。”

iPhone 4s(2011)

単に機能を説明するだけでなく、ユーモラスな表現を加えることで相手の記憶に残るものが作れます。「目」が「息をのむ」という、あえてミスマッチな言葉を組み合わせたこのキャッチコピーは秀逸です。以前「ロックスター募集中。経験不要。(Garageband)」というキャッチコピーもありましたが、こちらもユーモラスで印象的ですね。