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IBMが実践する?次世代の働き方●IBM × Appleのビジネス大変革

IBMが実践する?次世代の働き方●IBM × Appleのビジネス大変革

多忙な業務もなんのその。仕事と生活の統合こそがこれからの営業職に必須のワークスタイル

松浦 光_Matsuura Hikaru

日本IBMソーシャル事業部第一テクニカルセールス部長。「人と人」、「人と情報」の接点となるコラボレーション・ソフトウェアの技術営業部隊を率いる。“働く人をよりスマートに”をモットーに、誰もがイノベーティブな仕事ができるような働き方を提案している。趣味は、旅に関する風景・料理・ヒコーキなどの写真撮影。

“自らの生産性を上げるために、思い立って実行したのがルーティーン仕事をやめることでした”

どこでも仕事ができる環境

ソーシャル事業部に所属する松浦光氏の仕事はテクニカルセールス。一般の営業職とペアになって、法人顧客に対し、メール、チャット、社内SNS、WEB会議などのシステムやサービスを提案する。特定の製品については、その技術的価値を社内向けにプレゼンを行うことも。講演会、イベントなどに呼ばれることもある。カレンダーはこのような予定でびっしりと埋まっている。それだけ見たら目が回るほどの忙しさだが、松浦氏には余裕がある。

松浦氏の1日は就寝前に始まる。明日の予定を見て、どう動くかのイメージプランを作るのだ。たとえば午前中は自宅で資料作成、前から行きたかったレストランで早目の昼食をとり、それから客先へ訪問、その後出社して社内プレゼンを行い、部下と打ち合わせのあと退社、自宅で技術資料の読み込みというように、明日を思い描いてみる。翌朝起きる時間から逆算して就寝時間を決めているという。

また、一週間という単位でもおおまかなプランニングをする。月曜日は社内会議が多いので朝から出社、火曜日は大阪に出張し数件の客先を訪問、水曜日も客先訪問で忙しい。ところが木曜日は肉体的な疲労を蓄積させないため、ゆっくり起きて自宅で仕事。

「ベッドに寝転びながらiPadで技術資料を読んだり、集中が途切れたら掃除をしたりします。どこでも仕事ができる環境が整っているので、物理的な身体はどこにあってもいいんです」

目指しているのは仕事と生活を絡み合わせ、適切なバランスをとる「ワークライフインテグレーション(仕事と生活の統合)」だ。

「仕事と生活を時間で区切るのではなくうまく融合させる。それで生活の質を上げ、心身ともに健康な状態を維持し、仕事の質も上げる。それが理想的なスタイルです」

モバイルワークに欠かせないものたち

MacBookエア、iPadエア、iPhoneの3点は常に持ち歩く。中央の円盤状のものは、電話会議のためのブルートゥース接続のスピーカ。クライアント先での打ち合わせに、社内の技術者にリモートで参加してもらう際などに使用する。その右にあるのはLTEのモバイルルータ。プロジェクタ出力のためのケーブルやLANケーブルなど、ケーブル類はミニバック1つに収納。

カレンダーには予定がびっしり

1日に何件もの予定をこなす松浦氏。これだけ見るとかなりハードな日々を想像してしまうが、生活と仕事を限りなく統合することで、身体は休めながらも効率的に業務を行っている。

毎年同じやり方は通用しない

このワークライフインテグレーションを支えているのが、クラウド環境と人事評価システムだ。

IBMでは、「IBMコネクションズ(IBM Connections)」というコミュニケーションツールにより、ファイルやテキスト情報が簡単に共有できるようになっている。同僚や部下の動きはカレンダーの共有と在席状況やチャットでわかる。ポイントは社内SNSの使い方だ。

世間一般でも社内SNSが注目を浴びているが、一歩使い方を誤ると膨大な数のタイムラインを追いかけることに忙殺され、かえって生産性を下げてしまうことにもなりなかねない。ましてや松浦氏の場合、世界中のIBMの開発部門、研究部門が発信するメッセージを読む必要があり、タイムラインは1日で数百件にもなる。

「なのでタイムラインをいちいち追いかけることはしません。自分がフォローしている情報を1日に1回、内容を要約したまとめをメールで送ってくれる機能があるのでそれを読み、必要を感じたら深く読むようにしています」

もう1つの大きなポイントが人事評価システムだ。IBMでは部課ではなく個人に目標が設定され、しかもそれは自分自身で決める。自らを成長させるため、目標は毎年高く設定していく。今年達成したからといって、来年も同じやり方をしていたのでは到達できるとは限らない。だから松浦氏は、目標達成後、自分のワークスタイルを見直したり、セミナーや勉強会に出席して自身のスキルアップを図っている。

「一種の挑戦です。僕はもう40歳になろうとしていますが、学生のときよりも勉強に対する意欲が湧いてきています」

重要な人、もの、ことがわかるメール

効率的な業務に欠かせないのが、自身も営業活動を行う「IBMコネクションズ」。ファイル共有機能のほか、カレンダーやメールなどのアプリケーションも備える。その中のメールアプリ「Verse」は、あまたあるメールの中から重要なものだけをピックアップしてくれる機能が特長だ。

社内情報の収集はSNSで

IBMコネクションズの社内SNS機能では、部内の情報共有だけでなく、新製品情報といった社内全体の動きをチェックする。全世界に広がるIBMでは、社内プロジェクトが山のようにあり、業務に関係する範囲だけでも膨大な情報量に。これらが要約されたメールが1日に1回届くので、すべてをチェックできなくても概要は把握できる。

働き方は模索し続けるもの

松浦氏も、最初からこのような理想的なワークスタイルが確立できていたわけではない。新人の頃は右も左もわからず、自然と長時間労働になりがちだったというが、体力まかせでは毎年の目標達成ができないと感じた。

そこで思い立ったのが「ルーティーンをやめてみる」ことだった。「朝の満員電車での出社に労力を費やすこと」「実はやらなくてもいいのに習慣化してしまった仕事」というルーティーンを点検し、やめてみる。このようなルーティーンは貴重な時間を浪費し、生産性を著しく下げる要因となる。これをやめることで余裕が生まれ、自分の時間をより重要なことに振り分けられるようになったという。

しかし、「ルーティーンをやめるとつらいこともあります」。それは自分を律しないといけないということだ。どこで仕事をしてもいい、何をしても自由では、自分を厳しく律しないと、ただの「仕事をしない人」になってしまう可能性もある。そのために、明日を、一週間を、自分のキャリアをプランニングするという作業が必要になってくる。

こうした自由度の高いワークスタイルの広がりは決定的な流れになっている、と松浦氏は見る。

「決まった時間に決まった場所で勤務する固定したワークスタイルをとっている企業でも、よく見てみると自分のiPhoneやiPadを仕事にもうまく使い、ワークライフインテグレーションを考えている人は増えてきました」

現在は感度のいい人から自由度の高いワークスタイルを選び、企業側が追いかけるようにその環境整備をしている段階だ。松浦氏の仕事は、そのような企業にIBMのコミュニケーションツールを提供することで、ワークスタイルの変革を加速することでもある。

周囲の変化が激しく、昨年と同じワークスタイルでは来年は通用しない。そのため必然的に働き方を考え、その最適解を常に模索している。模索し続けることが松浦氏の働き方の一部になっている。

 

連携が欠かせない広報でも、リモートワークが普通。アジャイルな意思決定が情報共有の質を高める

鈴木 恭平_Suzuki Kyohei

日本IBMマーケティング&コミュニケーションズ広報。ハードウェアやモバイル、デジタルマーケティングなどのコミュニケーションおよびソーシャルメディアのアカウントを担当。iPadでDJのようなことをするのが趣味。

“物理的に社内にいようがいまいが、変わらずに社内外でコミュニケーションをとり意思決定を行えるようになりました”

最先端ツールを使いこなす

マーケティング部で広報を担当する鈴木恭平氏の主な仕事内容は、メディア対応およびフェイスブックやツイッター、タンブラーなどSNSを通じた情報発信だ。広報担当はこれらの対外的な活動に加えて、広告代理店など社外企業との接点も多く、コミュニケーションと情報共有の効率化が重要なポイントになってくる。そこで鈴木氏は、IBMの社内SNSといくつかのクラウドサービスを併用して、広報チームの業務効率化と生産性向上を実現している。

「これまでどおりメールを使う場面もありますが、社内関係者との情報共有には社内SNSが欠かせません。認証すれば協力会社の担当者もグループに参加できるので、関連するスレッドを追うだけでプロジェクトがどのような状態なのかすぐに把握できます。また、チャットコミュニケーションにはスラック(Slack)、ファイルそのもののやりとりにはボックス(Box)を使っています」

個人情報などの機密情報を除く「99%」をクラウドで管理しているという鈴木氏のメインマシンは12インチのMacBookだ。

「2015年夏より、社内にMac@IBMのプログラムが導入されて、社内で使うマシンとしてMacを選択できるようになりました。私が購入したのはそのプログラム導入の直前だったので、社内にいるMacユーザの有志が作成したマニュアルを見ながら、セキュリティやエンタープライズ向けWi−Fiの設定などを手動で行いました。実に大変でしたね。今ではこのプログラムのおかげで、数クリックで設定できるようになっています。ちょっと悔しいくらいですね(笑)」

グローバルで5万台のMac導入を促進した「Mac@IBM」プログラムは、大企業が業務利用で大量にMacを導入する際に最初に現れる大きなハードルを解消する画期的なシステムだ。このノウハウを活かす形で生み出されたのが、IBMが企業のMacの導入、管理、運用などの支援を行う「Managed Mobility Service for Mac」のソリューションである。

「IBMの社員自らが最先端のツールを実際に使いこなすことで得られたノウハウや知見を、お客様に対しても提供する。IBMがアップルデバイス活用のショールームであるという心意気が、このプログラムからわかってもらえると思います」

「Mac@IBM」で容易になったMac導入

IBM社内のMac導入は、「Mac@IBM」プログラムにより劇的に容易なものとなった。WEBブラウザから自分が利用したいデバイスを選択するだけで、Over-the-airプロビジョニングや仕事で利用するためのソフトおよびセキュリティポリシーの設定などが自動的に展開され、利用準備が整う。

プロジェクト管理は社内外で共有

IBMコネクションズの社内SNS機能は、協力会社とプロジェクト進行を共有する際にも活躍。必要な情報はすべてここで共有しておけば、繰り返しの確認作業などの無駄が減る。昨年のプロジェクトの動きなどを振り返る際も便利。

データそのもののやりとりはBoxで

必要な情報は社内SNSで共有しつつ、ファイルの保存・やりとりはボックス上で行う。昨年IBMがボックスと提携して以降は、社員全員がアンリミテッドのフル機能を使える状態になっているという。

リモートワークで効率的に

MacBookやiPhone、iPadなどモバイルデバイスを積極的に業務活用するIBMだが、このことは鈴木氏自身の働き方にも大きく影響を与えているという。特に対外的なやりとりも多い広報の仕事では、本社オフィス内だけでなく、自宅からのVPN接続によるリモートワークや、都内各所に配置された「ビジターオフィス」と呼ばれる同社のサテライトオフィスも有効活用している。

IBMにはグローバル企業ならではの「リモートワークが当たり前」という感覚があり、自分の働き方を自分で決められる風土がある。その恩恵を一番実感しているのは「子育て」のシーンだという。

「私の家庭は共働きですが、子どもの送り迎えが必要だとわかっているときは前日までにメールで上司に連絡しておけば、自宅で柔軟に動くこともできます。自宅と職場の往復に2時間かかる人が、早退などして家庭生活を維持するよりは時間の使い方としてもはるかに効率的ですよね。また、本社内にも保育所があるので職住接近を選ぶ社員もいますし、いずれにせよ子育てのしやすい会社だなと実感しています」

都内各所にリモートワークの環境が

写真は、日本IBM幕張事業所内のビジターオフィス。社員であれば所属に関係なく利用できる施設だ。打ち合わせの前後などの時間を有効に活用したり、リフレッシュしたいときに気分を変えて仕事に臨むことができる。IBMでは、このように自社の「座席」にこだわることなく、どこでも仕事ができる環境が整っている。

アジャイルな仕事ぶり

企業に勤めながら、時間と場所に制約されない働き方を実践している鈴木氏。さらにテクノロジーの導入で、仕事そのものの進め方についても大きな質的変化が起きているという。これを開発の分野でいう“アジャイル(俊敏な)”になぞらえて説明してくれた。

「広報という仕事はやや独特で、特にSNSを少人数で回したり外部と連携して運用している場合には、これまでのように社内プロセスを踏んでからという意思決定のスピードでは間に合わなくなります。施策実施の頻度や改善サイクルを高速に回すために、社内SNSやスラックなどを活用することで、私自身が物理的に社内にいようがいまいが、変わらずに社内外を連携するスタイルがこの数年で実現できました。これは開発でいう“アジャイル(俊敏な)”とは厳密な意味は違うかもしれませんが、情報共有の観点では明らかにスピードが変わりました」

このようなアジャイルなワークスタイルの実現によって、無駄な仕事も減ったという。

「さまざまなナレッジを、関係者内ですべて共有しておけば無駄な繰り返し作業はなくなります。たとえば、プロジェクトに関するファイルを社内SNSに上げておけば、バージョン管理もできますので、昨年のプランがどうだったかをメールボックスから探し回るといったこともなくなるのです」

これらのテクノロジーによって働き方の自由度やスピードを上げていくというIBMのカルチャーは、社員のダイバーシティ(多様性)を高めるというIBMのポリシーに支えられているという。

「IBM自身がこの100年の間、社員の働きやすさの変革を自ら成し遂げてきました。これはダイバーシティを重視する考え方につながっています。我々はテクノロジーの会社ですから、常に最先端だと思われなければ優秀な人も集まりません。同様にこのダイバーシティこそがIBMという会社の強さを支えているのだと思います」

 

IT担当者の仕事はインフラ構築のみならず。会社の変化そのものを推進・加速させる

浅利 信治 Asari Nobuharu

日本IBMストラテジー・セールストランスフォーメーション&オペレーションズ担当、常務執行役員。全社のトランスフォーメーションを担当する中で、CIOという立場でITを用いるバックオフィス全般を管理する。

“デバイスの使い分けが当たり前の今、ユーザ目線で社内システムを捉え直すのは自然な流れなのです”

モバイルを前提に社内改革

浅利信治氏は、2016年4月に日本IBMの常務執行役員、ストラテジー・セールス・トランスフォーメーション&オペレーションズ担当に就任した。その役割の1つがCIO(チーフインフォメーションオフィサー)で、ITに関連したバックオフィス業務全般を管理する立場だ。だが、多くの一般的な企業におけるIT管理責任者とはやや趣が異なり、特に2014年のアップルとの提携以降は社内変革の責任者としての職責が大きくなりつつある。

「IT部門の責任者といえば、かつては社内インフラの構築・社員へのサービスの提供といった役割が大きかったのですが、今日ではスマートフォンやタブレットを使ってIBM社員がどのように日々の仕事をやりやすくするか、どのように変化を推進していくかということを考える比率が高くなっています」

一番大きな環境の変化は、ビジネスで利用するITツールの主流がデスクトップPCからモバイルへと変化したことにあるという。

「これまで社内情報システムといえば、作り手の目線で要件定義をして皆同じようなデスクトップマシンで利用するのが基本でした。しかし、いまや誰しもが日常的にモバイルデバイスを利用し、ユーザとデバイスの関係は大きく変化しています。ユーザは自由にデバイスを選びたいし、シチュエーションによって利用するデバイスを使い分けるのも当たり前の時代になりました。こうした要求があるのであれば、社内システムもユーザ目線で捉え直すのは自然な流れといえます」

モバイルに適した社内システムを確立

モバイルデバイスの利用が一般的となった今日、ビジネスのうえでもその利活用は当然のこと。IBMはそのことにいち早く気づき、モバイルに適した社内システムを確立した。より働きやすく、より生産性の高いワークスタイルを社員全般に促す、そのための社内変革が浅利氏のミッションだ。

アップル製品がスタンダードに

アップルとの提携による最初の具体的な取り組みは、2014年にiPhoneとiPadを営業部門を中心に約3500名の社員に段階的に配付するところからスタートした。その直前までは社用PCにシンクパッド、携帯電話は法人契約のフィーチャーフォンという組み合わせであったが、現在はウィンドウズPCを使う必要がある場合を除き、IBM社内ではアップルデバイスがスタンダードな選択肢になったという。

「先日、Macを社内標準とすることに関して改めて議論したのですが、“問題なし”との結論でした。社長・役員も強い意志をもってこの変革を推進しています」

ウィンドウズからアップルデバイスへ、短期間でのIT環境の変化に対して社内に戸惑いや抵抗がなかったのかを尋ねたところ、そうした反応が皆無ではないがテクノロジーのリーディングカンパニーとしては、そのような認識では務まらないという。

「半年前にできなかったことが今日できるようになっているのがITの世界のスピード感です。むしろ我々が率先して新しいテクノロジー利用を実践していかなければなりません」

浅利氏自身も現在の役職に就任したのを機に、業務で13インチのMacBookエアを使い始めた。当初はメールのファイル添付方法の違いなどに戸惑うこともあったが、周囲には、Mac特有の操作方法を尋ねれば回答が得られる環境が予想以上に浸透していたという。現場の社員も、自発的にMacの使い方を学習しお互いに教え合っているようだ。部門内にMacユーザが少ない場合でも、サポートオフィスに電話で問い合わせてトラブルを解決する仕組みが整っている。

もともとIBMはITリテラシーの高いテクノロジーの会社ではあるが、iPhoneやiPad、Macをはじめとするモバイルテクノロジーやユーザ目線に立った運用にいち早く適応を果たしたようだ。3000台以上のアップルデバイスへの切り替えを数カ月というごく短期間で成し遂げた実績は、何よりも説得力を持って語りかけてくる。

「IT管理の仕事を担当しているという観点から見ても、弊社の“変化”への対応能力は高いのではないかと感じています。というのも、IBMには創業以来、変化・進化し続けるという企業文化があるからです。ハードウェアからサービスへ、サービスからモバイル、クラウド、コグニティブへとIBMはだいたい10年刻みでテクノロジーや環境の変化に伴い、社内の仕組みごと進化してきました。人事や経理といったバックオフィスのアウトソーシングも進めていますし、今後も起き続けるさまざまな変化にも対応していけると確信しています」

スタンダードマシンとしてのMac

IBMで用いられるマシンは、これまでウィンドウズPCが主流だった。しかしアップルとの提携を機に、Macをスタンダードマシンとすることに決定。前出の「Mac@IBM」プログラムなど、Mac導入の仕組みを整えた。そうした自社の取り組みが、提供するサービスの品質向上に大いに役立っている。

新しいスタイルの先導者として

自ら変化し続けることをポリシーとし、ストイックなまでに追及するIBMだが、その最終的な狙いはいったいどこにあるのか。

「我々がMacの社内標準をはじめとする変革を推進するのは、やはり最終的には自分たちの経験に基づいたソリューションをお客様に対していかに提供できるかがポイントになってきます。IBMは、その新しいワークスタイルの総合的なショーケース化を目指しています」

また、変化のきっかけとなった提携のパートナーであるアップルという企業についてどのように感じているかについて尋ねたところ、卓越したブランディングに加え、クライアント・エクスペリエンスへ対応するスピード感やユーザオリエンテッド(ユーザ志向)な発想など、見習うべきところがたくさんあるという。

「我々の変化は一般的な企業に比べれば速いほうかも知れませんが、アップルに比べるとまだまだスピード感が足りないと感じています。今後も新しいテクノロジーを駆使し、さらにトランスフォーメーションを加速させるのが私の役目といってもいいのではないかと思います」