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Mac Fan メールマガジン

掲載日:

鈴木恭平@IBM/西山正一@Adobe

鈴木恭平@IBM/西山正一@Adobe

STORY Ⅰ @IBM

【URL】https://www.ibm.com/jp-ja/

鈴木恭平 Suzuki Kyohei

日本IBMの広報として、ハードウェアやモバイル、デジタルマーケティングなどのコミュニケーションおよびソーシャルメディアのアカウントを担当。iPadでDJのようなことをするのが趣味。

「ソーシャル・ファーストで企業の情報発信が変わる」

最近ではTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアで企業のアカウントが情報発信をすることが一般的になっています。個性的な投稿をする人気アカウントもあり、企業を友人のように身近に感じられるのが魅力ですね。私は日本IBMというIT企業の広報でTwitterやFacebookの情報発信を担当する、いわゆる「中の人」をやっています。1人だけではなく、編集部のような体制で投稿するネタを探したりコンテンツを作ったりしています。日々ソーシャルメディアで情報発信をしていると、読者の皆さんが何に関心があるのかがコメントやいいね!などの反応でわかり、それを踏まえて投稿するネタを工夫するなど双方向でコミュニケーションができるのが楽しみです。

私が「中の人」としてソーシャルメディアに関わる中で、最近印象的な出来事がありました。日本IBMは今年の3月に「ソードアート・オンライン ザ・ビギニング Sponsored by IBM」という、人気作品とコラボしたバーチャル・リアリティ(VR)イベントを開催しました。228名のイベント参加者枠に10万を超えるご応募をいただき、世界中で話題となりました。IBMはB2BのIT企業なので、なかなか若い世代に名前に触れてもらう機会が少なく、こういったイベントを通じてIBMがテクノロジーで未来を作る会社なのだということを伝えたいと考えたのです。

このイベントの開催を告知する際、従来であればメディア向けのプレスリリースで発表をするのですが、このときには「ソードアート・オンライン」という作品のファンの人たちはきっとこの話を聞いて喜んでくれるのではないか、だとすると一緒に盛り上がれるような仕掛けをしたいという思いから、作品のファンの人が多いと見込んだTwitterだけで告知をしました。このように企業がソーシャルメディアで直接人々に情報を発信する姿勢を私は個人的に「ソーシャル・ファースト」と名付けています。

いざ発表という時間に、私は会社の年次イベントに参加するため米国ラスベガスにいました。日本時間で正午にツイートを投稿したとき、ラスベガスは夜中。日本にいるチームメンバーから連絡があったときには「炎上したか!?」とドキドキしましたが、Twitterを見てみるとリツイートの数は2時間後には2000を超えていて、フォロワーの数も激増。炎上ではなく、盛大に盛り上がっていたのです。その後リツイートの数が伸び続け、最初のツイートに2万3000を超えるリツイート、1万5000を超えるいいねをいただき、Twitterのトレンドにも入りました。ツイートは2つ用意していて、1つ目は詳細を書かず、2つ目にサイトのURLなどを入れていたのですが、1つ目のツイートを投稿した直後にはサイトの存在に気づいた人たちがTwitterにそのサイトのURLを投稿していて、話題になっているのを発見したメディアでも記事が掲載されるなど、まさにお祭り騒ぎのような状況で、最終的にはソーシャルメディアでのインプレッションは1億2千万以上というものすごい反響となりました。

これがソーシャルメディアの力なのだな、とそのときにしみじみと感じました。たった1つのツイートをきっかけに1億人以上もの人に感動や喜びを届けることができる。このときは「ソードアート・オンライン」という作品のファンの方の力が大きかったと思いますが、「ソーシャル・ファースト」でメッセージを届けたい人に直接語りかけることで、企業と人々の関係は変わるのではないか、そんな可能性を感じる出来事でした。

 

STORY Ⅱ@Adobe

【URL】http://www.adobe.com/jp/

西山正一 Nishiyama Shoichi

2001年にアドビ システムズに入社。WEB製作アプリやDTPアプリの製品担当を経て、現在はCreative Cloudのエンタープライズマーケティング部門を統括。新しいガジェット類にはすぐに飛びつくタイプ。食いしん坊でお酒呑み。

「一見さんでも常連さん扱いしてくれる素晴らしき世界」

ラグビーのW杯で日本が大金星をあげ、五郎丸選手のポーズが大流行して「ルーティン」という言葉が広く認知されたのが2015年。僕も仕事を始める前のルーティンがありまして、出勤前に職場のビルにあるスターバックスで必ずアイスコーヒーのヴェンティ(特大)サイズを注文するんです。

5年以上同じ店でほぼ毎朝同じものを注文するので、当然ながらお店の人に覚えられます。注文の列に並んでいるとカウンターの奥から店員さんがアイスコーヒーのカップを振って合図してくれたり、店員さんによっては注文前にもう用意してくれたりします。いまや数名の店員さんとはフェイスブックでお友だちになっていますが、このルーティンを始めた頃にはきっと「ヴェンティさん」などのあだ名が付いていたに違いありません。

ちなみに、出張で東海道新幹線を利用するときには何も言わずとも代理店が富士山側のE席を確保してくれます。自宅近くのパブに立ち寄れば何も言わずにギネスとハギス(スコットランドの郷土料理)が出てきますし、馴染みの寿司屋へ行くと穴子の白焼きが出てきます。お店が僕の行動パターンを覚えてくれて、僕が喜ぶようにサービスをしてくれているわけです。

リアルな世界ではこのルーティンによる「常連さん」になるにはある程度時間とお金が結構かかるわけですが、デジタルの世界ではだいぶ勝手が変わってきます。

たとえば、Google。検索エンジン便利ですよね。Googleで「名刺の作り方」と検索すると一番上に表示されるのは名刺の作り方に関する情報ではなく「フルカラーでの名刺の印刷が100枚で980円ですよ」という広告でした。「名刺を自分で作るのであれば、それを印刷するんですよね? であれば、ぜひ我が社でどうぞ」と先回りしてくれているわけです。

また、Googleはとても便利なサービスを無償で提供していますよね。僕はGoogle ChromeというWEBブラウザを愛用しているのですが、Googleアカウントでログインした状態でChromeを利用すると、さまざまな便利機能が利用できるようになります。よく訪問するWEBサイトを記憶し、それぞれのサイトのユーザ名とパスワードも記憶してくれます。さらに便利なことに、どんなパソコンでもスマートフォンでもタブレットでも、Googleアカウントでログインすればまったく同じ情報を引き継いでくれます。こんな便利な機能を無料で利用できるのはなぜなのでしょう?

ご存知の方も多いとは思いますが、Googleは彼らが提供するさまざまなサービスを通じて、ユーザの性別や年齢や興味関心の対象をかなりの精度で把握しています。Googleアカウントでログインした状態でGoogleのページへ行き、[アカウント]→[個人情報とプライバシー]→[広告設定を管理]を開いてみましょう。それがGoogleから見た「あなた」なのです。

これを「気持ちが悪い」と感じる方は、情報を利用させないように設定できます。でも僕はこんな便利なサービスをフル活用しないともったいない!と感じるわけです。このデジタルの力を、お客としてもビジネスの道具としてもフル活用しましょう!という観点でしばらくお話を続けたいと思いますので、よろしくお願いします。