60%の企業で実施済み
アップル製品の管理において最高のソリューションである「キャスパースイート(Casper Suite)」の開発元であるJAMFソフトウェア(JAMF Software)社を知っているだろうか? 本誌でもMacの法人導入記事で何度か取り上げてきたが、そのJAMFソフトウェアが2016年4月に興味深い調査レポートを発表した。
「Employee Choice Programs」と題されたこの調査レポートは従業員の「選択プログラム」(仕事の現場で使うコンピュータやハードウェア、モバイルデバイスなどの選択肢を従業員に与えること)に関するもので、従業員がどのデバイスを選択するかを明らかにしている。調査は2016年2月に実施され、世界中の大規模/中規模/小規模組織の480人の役員や管理職、IT担当者からの回答に基づいている。
結論から述べると、この調査で明らかになったのは組織の規模に関わらず、今アップル製品がもっとも好まれていることである。ここではその詳細を紐解きながら、選択プログラムの在り方について考えてみたい。
まず、「選択プログラム」の実施率については、約60%の企業が導入しているという結果だった。日頃、国内の企業や教育機関へアップル製品の導入を提案している立場からすると、驚くほど高い数字である。業務で利用するIT機器は基本的にセキュリティやインフラ、コストの面を含め、会社で決められたものを利用しているところがほとんどで、従業員が好きなデバイスを選択できる企業は少数派であると思っていた。いずれ日本国内でもこのような潮流が浸透してくるのであろうが、海外と比べて日本のエンタープライズITが遅れをとっているという事実を突きつけられた結果だ。
Employee Choice Programs
【URL】https://www.jamfsoftware.com/resources/employee-choice-programs/
JAMFソフトウェアが公開した調査レポート「Employee Choice Programs」は誰でも閲覧が可能だ。日本語訳はキャスパースイートの販売とサポートを行っている株式会社Tooが提供している(http://www.too.com/go/caspersuite-mf)。なお、ここで紹介したグラフはすべて同調査レポートより抜粋している。
従業員に端末の選択肢を与えているか?
選択プログラムの実施率について、調査結果の61%が選択肢を与えている。100名以下の企業から1000名以上の企業まで、その組織の規模に関わらず、従業員が使いやすいと感じ、生産性が向上されるIT機器の使用環境が提供されている。
なぜMacが選ばれるのか?
業務に利用するコンピュータに関しては、「Macか、Winか?」という問いに対して4人中3人がMacを選択しており、アップルのエンタープライズ領域での存在感が大きくなっていることがわかる。従業員がMacを選択するのは、より簡単に利用でき、生産性を向上するために必要なソフトウェアが揃っていて、ハードウェアもソフトウェアもセキュアなプラットフォームであることが一番の理由に挙げられている。また、回答者の3割が選んだ「その他」の理由には、「信頼性」や「かっこ良さ」のようなブランドイメージも含まれていた。
次いでモバイルデバイスに関しては、プライベート利用と同様のユーザフレンドリーな体験を求めているという理由から、5人中4人がiOSデバイスを選んでおり、iPhoneやiPadを選択肢として提供しない企業があったら、それは「怠惰」と呼ばざるを得ないとまで調査レポートには書かれている。日本国内においてもiOSデバイスの導入状況は加速しており、エンタープライズに限らず、今までPCによるコンピューティングが届かなかった領域(たとえば農業や畜産業、漁業等)まで拡大し始めているのはさまざまな事例から理解いただける部分だろう。
さらに興味深いのは、18~54歳までの人々がMacを好み、55歳以上の人々はウィンドウズPCに安心感を感じているという結果である。一方、iOSデバイスはすべての年代から好まれている(直感的に操作できることが理由である)。
とある国内企業のIT担当者に聞くところによると、業務でウィンドウズPCを利用している30~40代の世代は業務の慣れの理由からウィンドウズPCからMacに変わることで仕事の効率が悪くなるというイメージを持ち、あまり積極的にアップル製品を選ばない傾向にあるという。その一方で、50歳以上の従業員はそうした理由に拘泥することなく業務を行え、新しいものに触れたい気持ちもあってか、Macを選ぶ傾向が強いそうだ。
この調査レポートを通じて感じさせられるのは、「(従業員に)選択肢を与えること」のメリットは非常に大きいということだ。望むものを与えられることで従業員は満足し、それが生産性の向上へとつながり、ひいてはよりクリエイティブな仕事というアウトプットを生む。これはIT機器に限った話ではないが、従業員が幸福であることが会社のゴールを達成することへの近道である。調査レポートでは、選択肢の与えられていない従業員の4人中3人が「組織は変化するIT文化に対応すべき」と考えており、「従業員が業務を進めるうえでもっとも手助けしてくれるデバイスを提供すべき」だと考えている、と述べている。
MacかWinか?
従業員の75%がMacを選択している。その理由は、簡単に使い始められること、欲しいソフトがあるから、よりセキュアであるから、である。JAMFソフトウェアが2015年に実施したアップルトレンド調査の結果とも一致している。
iOSは選ばれているか?
モバイルデバイスの選択、79%がiOSを選択するという圧倒的な結果である。Macが選ばれている理由とも重複するが、それ以上にエンタープライズ市場において、iOSが業務で利用される比重が高まっていると言えるだろう。
誰がMacを選んでいるか?
ジェネレーションギャップ、iOSはあらゆる世代に受け入れられているが、Macは20~30代半ばの人々に選ばれている。今後、仕事の現場にミレニアム世代が増えていうことで、ビジネスにおけるMacの利用されるシーンは増えていくはずだ。
5つの大事な確認事項
では、従業員に使用デバイスの選択肢を与える際に、経営者やIT管理者は何を留意しておけばいいのだろうか。調査レポートで示されているのは、次の5つである。?アプリの互換性、?選択可能デバイス、?ハードウェアコスト、?サポート/ユーザトレーニング、?セキュリティ標準である。
「アプリの互換性」は業務上、もっとも重要な部分である。メジャーなアプリは複数のプラットフォームで機能するものが多いが、日々の業務で利用するアプリやツールは生産性に大きく影響するため、選択可能デバイスで利用可能か、代替はあるのかを確認すべきだ。
「選択可能デバイス」の観点では管理プラットフォームの選択がキーとなる。現時点でMacとiOSのプラットフォームを管理するのであればキャスパースイートが一番のソリューションであり、ウィンドウズとアンドロイドに関しては、「SCCM(System Center Configuration Manager)」と「インチューン(InTune)」が最適な管理ツールとされている。管理ツール自体も、それぞれのプラットフォーム向けにセキュリティ設定やアプリ配信を行う必要性があり、OSのバージョンアップへの対応スピードも重要な検討項目となる。
「ハードウェアコスト」は、IBMのMac導入事例(Mac@IBM)が説明してくれている。Macの企業導入は初期コストの面では高額になるが、ウィンドウズPCと比較してもTCO(コンピュータシステムの導入、維持・管理などにかかる費用)を削減できることが1つの尺度となる。
「サポート/ユーザトレーニング」も重要だ。業務で利用するIT機器の使い方に対し、プラットフォームが異なることで習熟の時間が異なるという点については議論の余地はない。IT部門は、対応すると決めたプラットフォームをしっかりサポートできる体制を、管理ソリューションの販売店と連携して作っていく必要がある。また、デバイスを利用するユーザに対するサポートも同様である。
「セキュリティ標準」については、デバイスのセキュリティは最新バージョンのOSやアプリを搭載していることで実現されることを理解しておこう。ソフトウェアアップデートを確実に実行できる環境を用意することで、脆弱性から組織のデバイスやデータを守ることになり、コンプライアンス遵守を確保できる。
選べる幸せ
とかく国内では「選択プログラム」と聞くとスタートアップ企業やクリエイティブエージェンシーなどが採用する局所的な話に思えてくるが、業務用デバイスとしてウィンドウズPCに加えてMacを選択したことでヘルプデスク人員の大幅削減を実現したIBMの事例のように、一般企業においても従業員の生産性やコスト削減といった利益に直結する観点からMacの導入は実に現実的となっている。
また、Mac/ウィンドウズといった選択肢だけでなく、今後モバイルを中心とした働き方が主流になっていく中で、PCに固執しないスマートフォン/タブレットといったチョイスも従業員が自然に選べるような環境が望ましい。世界的に見れば、従業員に選択プログラムを提供することは企業にとって重要なトレンドになりつつあり、日本においても従業員がよりクリエイティブに仕事ができる環境の構築こそが、企業変革の観点からも求められているのだ。
従業員の幸福度を高める導入とは?
この5つの項目に限らず、従業員に業務で利用するIT機器の選択肢を与えることが、従業員の幸福度を高め、組織はその見返りに、より質と量の高い仕事が還元され、経営者やIT管理者は従業員から賞賛を浴びることができる。
【News Eye】
キャスパースイートは、アップル製品の導入、資産管理、セキュリティを遠隔、自動にて実現するMDM(モバイルデバイスマネージメント)だ。全世界ですでに500万台ものMac、iOSのデバイス運用管理を13年にわたって行った来た実績を持つ。
【News Eye】
キャスパースイートはアップルのOSバージョンアップに対し、ゼロデイ(即日)対応を続けている点が、アップルプラットフォームを利用する組織、IT管理者から高い評価を受け、キャスパースイートを継続的に利用するユーザを増やし続けている理由である。