日本で買うと最大2倍も高い?
ある日、iPhoneのストレージ容量が増やせるというライトニング接続のUSBメモリが欲しくなり、ネット通販で探してみることにした。見つけたのは、サンディスクの「iXpandフラッシュドライブ(以下、iXpand)」とレキサーの「ジャンプドライブC20i(以下、C20i)」という2製品。それぞれ容量のラインアップが異なり、C20iのほうがUSB3.0とスペック的に優れているという違いはあったが、どちらも信頼のあるグローバルブランドなので価格の検討を始めた。個人的にネットで周辺機器の買い物をする際には、ヨドバシ.comとアマゾン(Amazon.co.jp)で比較するようにしている。品揃えや配送日数、送料、ポイント還元の比率などを総合的に考えるとどちらも甲乙つけがたいからだ。
32GBのモデルをヨドバシで調べてみたところ、原稿執筆時点(6月16日)でC20iが5917円相当なのに対してiXpandが9792円相当で約1.65倍と思いのほか開きがあった。ところが、同じ組み合わせをアマゾンジャパンの税抜価格で比べるとどちらも6100円前後とほとんど開きがない。さらに、米アマゾンでの価格を見ると、1ドル=108円換算で4855円と5008円と大差は見られない。
ここでふと気になったのは、各サイトの絶対的な価格差ではなく国内外での価格比率の違いである。レキサー製品が114~133%程度の差なのに対して、サンディスク製品は166~196%、つまり日本では米国の最大約2倍の価格で販売されているという事実である。
製品ごとの内外価格差
米Amazon
ヨドバシ.com価格
ヨドバシ.comと米Amazonにおける実売価格を、消費税やポイントなど表示上の相違点を同条件に調整したうえで、その内外価格差を製品モデルごとに比較してみた(6月16日時点の価格)。
「適正価格」は何で決まるのか
この内外価格差の理由として考えられるのは、為替レートの問題である。半導体製品の多くは輸入品のため、たとえば米国のウォルマートで19ドル99セントというマジックプライスで発売された製品は、「1ドル=100円」という消費者感覚に合わせると1980円のような価格で販売されると思うだろう。しかし、現在のように1ドル=108円のレートであれば単純計算で2159円、しかし、昨年同時期のように120円レートなら2399円となり、円安に振れたときに急に値上げすることは難しいため実際の店頭では最初から2480円のようにバッファを置いた価格で販売される。売るほどに損をする「逆ザヤ」が発生しないようにするための措置としては理解できる話だ。
とはいえ、円高が進行している現状ではさすがに開きがありすぎるのでは?という素朴な疑問が浮かぶ。そこで、レキサーブランドを取り扱うマイクロン ジャパンの大木和彦氏に尋ねてみた。
「日本市場におけるメモリカードの“内外価格差”は極端で問題があると考えていました。ですので、レキサー製品は今年3月にXQDメモリカードの国内実売価格を半額近くまで下げました(具体的には、128GBモデルは5万円から2万5000円前後へ)」
この施策は国内のメモリカード市場に大きな波紋を呼んだ。通常は低価格戦略というと品質は二の次になることが多いが、同社は半導体の製造から販売までを一貫して手がけるメーカーで、スペックの高さや品質は世界トップレベルで映像や写真のプロユースでも定評がある。
利益率が高いはずのハイエンド製品において値下げを断行した理由について大木氏は、「ハイスペックモデルのメモリカードはすでに5割程度が個人輸入や並行輸入で購入されている」という現状を踏まえ、長く続いた円安が理由とはいえ日本国内で普通にメモリカードを購入できないという問題は解消すべきと考えたからだという。また、同社製品はグローバル対応のため海外で購入してもサポートを受けられるが、輸入の場合は偽物を購入してしまうリスクが避けられないからだ。
「この内外価格差を放置しては、ユーザにとってもメーカーや販売店にとってもメリットがありません。そこで、レキサー製品は世界中どこでもなるべく同じ価格で購入できる“グローバルブランド価格”を導入したのです。この施策は製品のモデルチェンジに合わせて段階的に進めていきますが、少なくともメモリカードを日本で買うと“高い”という不公平感は解消したいです」
市場のグローバル化が価格のグローバル化をもたらすという流れは、今後さらに進展していくだろう。内外価格差で苦々しい思いをすることなく、いつでもどこでも「適正価格」で購入できるというマイクロンのアグレッシブな取り組みは賞賛できるのではないだろうか。
マイクロン ジャパン株式会社 ディレクター ジャパンセールス・大木和彦氏。「メモリカードの平均購入容量は米国で32GBですが、日本では16GBと少なくなっています。こうした購買行動の違いも内外価格差が原因と分析しています」。
【News Eye】
ちなみにMacBookのエントリーモデルの価格は米国で1299ドル、日本では14万8800円。内外価格差は約105%と、以前のイメージとは異なりグローバルプライシングの考えにかなり近い価格設定となっている。