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アナログレコードの基礎知識●いちから知りたい!Macでレコード録音

著者: 中村朝美

アナログレコードの基礎知識●いちから知りたい!Macでレコード録音

アナログレコードの基礎知識

アナログレコードを触ったことがない方もいると思うので、まずは基礎から解説していきましょう。アナログレコードは文字どおりアナログ方式で音声を記録したメディアです。世界で初めて稼動した(再生可能な)レコードは、かのエジソンが1877年に発明した「フォノグラフ」というもので、直径8センチほどの蝋の円筒に針で音溝を記録するのでした。その基本原理は後のレコードと同じで、記録媒体に針を使って音の波形を溝として刻み、それをなぞって再生するという仕組みです。

その後、円盤式レコードの普及が進み、材質の変更やレコードプレーヤ自体の改良も相まって、音質が飛躍的に向上。1980年代にCDが台頭してくるまで、大衆の音楽メディアとして広く親しまれてきました。

アナログレコードのユニークなところは、純粋な空気の振動そのものが時間的な連続性を持って溝に刻まれているということです。カセットテープのように磁気だったり、CDのように光学的な変換がされていないため、ある意味で原音がそのまま収録されているといえます。

一方、デジタル方式では時間単位で区切って音を数値化しており、非連続な音として分解されます。もちろんCDならば1秒間に4万4100回という細かさで時間を区切れますが、それでもアナログの無段階と比べると越えられない壁があります。さらにCDでは、あらかじめ20Hz以下および20kHz以上の周波数をカットする必要があります。対して、アナログレコードは、可聴域外の音も収録されているといわれているのです(もっとも、後述するRIAAカーブによってかなり減衰しているという見方もあります)。

デジタルとアナログ

アナログは時間の経過で変化していく波形をそのまま記録していきます。アナログレコードでは音の波形が溝の深さ、カセットテープでは磁気の強弱に変換されます。一方、デジタル(PCM)では、音の波形を時間と音の強さの二次元データに変換します。CDでは、1秒間に4万4100回(44.1kHz)のサンプリングを行い、音の強さを6万5536段階(16ビット)に分解します。

レコードとプレーヤの進化

エジソンの蓄音機

記録メディアにすず蝋管を巻いたシリンダーを用い、ホーン部分に声を吹き込むと録音できました。録音と再生で同じ針を使うため、再生を繰り返すと音質がどんどん劣化してしまいます。

ディスク化された蓄音機

シリンダー方式は複製ができない欠点があり、プレス加工で簡単に量産できるディスク式に改良され、現在のレコードの形が出来上がりました。録音時間も飛躍的に延びることになります。

現代のレコードプレーヤ

再生も電気化されており、ターンテーブルも電気モータで駆動するように進化。逆にアンプなどがないと再生できず、録音機能はありません。近年のブームで新たに新開発された機種ではブルートゥース対応やハイレゾ録音機能といったデジタル技術も投入されています。

レコードから音が出るまで

アナログレコードは音をそのまま刻むと書きましたが、もう少し説明が必要です。たとえばスピーカで音楽を聴いていると、低音と高音ではエネルギーの違いが感じられると思います。低音はズンズンお腹に響きますが、高音は遠くまで飛ぶものの身体で振動を感じるほどではありませんよね。そのため、そのままの音の波を溝に刻んでしまうと、あまりに触れ幅の大きな溝になってしまうのです。低音ならば針が飛んでしまうかもしれないし、逆に高音は振幅が小さいため、ノイズに埋もれて再現性に難があります。そこで、溝の幅をある程度一定にするため、すべてのレコードはRIAA(Recording Industry Association of America、アメリカレコード協会)という規格の補正カーブにしたがって録音するのです。RIAAカーブは、高域で+20dB、低域で−20dBと大胆に補正を加えます。再生するときは、逆のカーブで補正することで、元のフラットな周波数特性に戻す仕組みです。このとき、高域を20dB下げることによってノイズリダクション効果もあります。こうしたRIAAカーブの補正を行うのが「フォノイコライザ」という装置です。レコードプレーヤまたはアンプに内蔵されていたり、好みに合わせて外付けしたりします。

また、レコードプレーヤの心臓部である「カートリッジ」(交換針を付ける部分)は振動を電気信号に変えるいわば発電機の一種で、マグネットが動くMM型(Moving Magnet)とコイルが動くMC型(Moving Coil)の2種類があります。一般的なカートリッジはMM型なので、十分なライン出力が得られます。しかし、MC型はコイルがとても小さいため、得られる電流はMM型の10分の1しかありません。そのためMC型カートリッジを使うときは「昇圧トランス」「ヘッドアンプ」が必要になります。これもフォノイコライザに内蔵されていたり、フォノ入力のあるアンプはモード切り替えで選択できます。

「RIAAカーブ」と呼ばれる、レコードで標準的な補正カーブです。20Hzと20kHzでそれぞれ20dBという大幅な補正を行っているので、レコードをそのまま再生すると低音がスカスカで高音がシャカシャカ、まるでヘッドフォンの音漏れのような音になります。

レコードの溝を500倍まで拡大した写真です。激しいひっかき傷のようですがこの溝が音の波形そのものを刻んだもので、これを針でなぞって音に戻します。