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TITLE 16 モアイと向き合う24時間

著者: 鈴木陵生

TITLE 16 モアイと向き合う24時間

僕は、いつも旅をしながらタイムラプス撮影をしている。タイムラプスとは、太陽や雲などの変化するものを時間をかけて撮影し、短時間の映像に仕上げる手法だ。旅先の絶景を、その場の空気とともに収めるには、最適な表現ではないかと思う。

太平洋の孤島イースター島でも、僕はこのタイムラプスを撮ろうと考えていた。海を背に立つモアイは、絶好の被写体に違いない。どうせなら、1日の自然の変化とともに撮ってやろうと僕は決めた。24時間モアイ前のタイムラプスだ。

モアイの眼前に三脚を据えて撮影開始。撮影中にカメラが少しでも動くと、映像がブレて残念なことになってしまうので、僕の仕事はひたすら三脚とカメラが動かないよう死守すること。集まる観光客からカメラを守り続けて数時間。日が沈み、あたりには誰もいなくなった。やけに人懐っこい犬がやって来て、よしよしと撫でながら、モアイを眺める。

空一面に星が広がり始めた頃、仮眠をとろうとうつらうつらしていると、僕は妙な気配で目が覚めた。暗闇の中、大きな足音が近づいてくる。その正体は馬だ。イースター島に馬が多いのは知っていたが、枕元にまでやって来るとは。急に隣で寝ていた犬が吠え始め、馬に向かって走り出した。その瞬間、見事三脚にタックルをしてくれた、犬。落ちたカメラは、あさっての方向を向いて、シャッターを切り続けていた。

鈴木陵生(Ryosei Suzuki)

映像作家。2011年より夫婦で世界一周を始める。旅の様子を発信する映像サイト「旅する鈴木」が、平成26年度文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に。2014年11月、DVD&Blu-ray「World TimeLapse」(KADOKAWA)をリリース。 【URL】http://ryoseisuzuki.com

【PS】

犬によって中断したタイムラプス撮影は、結局翌日まで続け、結果33時間もモアイの前に居座ることになりました。島にはいくつか海を背にしたモアイ像があり、背景が朝日だったり、夕日だったり、さまざまなシーンを撮影できます。