次の時代の新しいSIMのカタチ
Apple SIMが見据える未来
2015年の11月より国内でも販売が開始された「アップルSIM」は、アップル純正のデータ通信専用SIMカードです。648円という低価格ですが、アップルが通信回線を提供しているわけではなく、利用には現在地で利用できるキャリアからモバイルデータ通信プランを選択するというユニークな仕組みを持っています。
2016年4月現在、日本国内でアップルSIMに対応したキャリアはauのプリペイドプラン(1GBで1500円)とギグスカイ(現在はドコモ系の3G回線を利用)のみで、一般的なデータ専用格安SIMを考えると通信速度や価格の面で大きなメリットがあるわけではありません。
国内では現状魅力的とは言えないアップルSIMですが、海外に持っていった場合は状況が一変します。通常、海外渡航時には契約したキャリアの国際ローミングサービスを利用するか、現地のプリペイドSIMカードを購入して契約する必要がありますが、事前にアップルSIMを購入して装着しておけば、到着してすぐに現地のキャリアで安価なデータ通信プランを選択できます。カバー国は90カ国にものぼり、海外ではSIMフリー版ではないドコモやソフトバンク版iPadでもアップルSIMが使えるのが利点です。
さらに、一部のセルラー版9.7インチiPadプロではアップルSIMを内蔵することにより、画面上だけで設定を切り替えられるというスマートな仕組みになっています。
このアップルSIMが登場した理由はさまざま考えられますが、基本的には「キャリアに縛られずに、いつでもどこでもiPadでデータ通信できる」環境を実現するためのものです。さらにアップルが研究中のバーチャルSIMが実現してiPhoneへの展開が進んだとしたら、現在のキャリア主導のモバイル世界の版図は大きく塗り替わることになります。
アップルSIMは、MVNOによる格安SIMの「その先」の時代を見据えたプロダクトといえるでしょう。
アップルSIMはアップルストアで648円で購入できます。国内で利用できるauのプランは「LTEデータプリペイド」のみで、1500円で1GB、チャージから31日間利用できます。また、自動リチャージにも対応しています。
Apple SIM利用の流れ
対応するiPadにアップルSIMを挿入したら「設定」アプリの[モバイルデータ通信]→[モバイルデータ通信を設定]をタップすると、キャリアを選択できます。
日本国内では2016年4月現在、auとギグスカイのキャリアが選択できます(AlwaysOnlineは国内契約不可)。海外では現地のキャリアが表示されますので、キャリアを選んだのちにプランをタップして購入手続きを行います。
一部のセルラー版9.7インチのiPadプロ(モデル名:A1674)では本体内にアップルSIMを内蔵し、従来のナノSIMトレイも用意されるデュアルSIM仕様となっています(A1675は内蔵していません)。これにより、通常の4G LTEとの併用が可能です。