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iPhoneとiPadがさらに使いやすくなる!

iOS 9.3●Apple春の新製品

iOS 9.3●Apple春の新製品

iOS 9.3はiPhone 4s以降、iPad 2以降、iPod touch(第5世代以降)に対応している(iOS 9が動作する端末であればアップデート可能)。日本国内でも3月22日より配信されており、「設定」アプリの[一般]-[ソフトウェアアップデート]から無料アップデートできる。

異例の大型アップデート

OSのバージョンアップには2つある。iOS 8やiOS 9のように製品の表記そのものが変わるものを「メジャーアップデート(もしくはアップグレード)」、9.2や9・2・1のようにドットで区切られたバージョン変更を「マイナーアップデート(もしくは単にアップデートとも)」と呼ぶ。

一般にメジャーアップデートは新機能の追加やシステムの大きな変化を伴い、年に1回程度の頻度で行われる。対して、マイナーアップデートは不具合の修正を中心に小さな機能を追加する程度だ。

アップルの場合、メジャーアップデートの機能紹介を、毎年6月に開催されるWWDC(世界開発者会議)でプレビューしてベータ版を配布したあと、9月頃に正式にリリース、その間にマイナーアップデートがこまめに配布されるのが通例となっている。

ところが、今回は様子が異なっている。今年の1月にアップルは突如「iOS 9.3 プレビュー」と題したサイトを公開し、新機能を紹介。これらはメジャーアップデートと呼ぶには数は多くないものの、教育向けプレビューやディスプレイの色温度調整など、システムに関わるアップデートも含まれている点ではマイナーアップデートよりも規模が大きい。さらに、WWDCが始まるまであと3カ月弱というタイミングもあり、あらゆる意味で前例のない今回のアップデートには注目するべき点が多い。

ここではiOS 9.3の新機能を実証し、実用的な部分でどのように変化したのかを解説していこう。

【Key Feature】「ナイトシフト」 モード

健康被害を低減する実用性が高い注目の新機能

我々の身の回りには数多くのデジタルデバイスが存在し、いつでもどこでも利用できるようになった。その反面、長時間利用することの弊害が出ていることも問題になっている。その中でも近年研究が進んでいるのが「ブルーライト」だ。白色を「真っ白」と感じるレベルに色温度調整されたディスプレイに多分に含まれるこのブルーライトは、昼間の光に近い性質を持つ。このため夜間にブルーライトを多く浴びると、24時間の体内時計のリズムに影響を与え眠れなくなるなど、弊害が出てくることがわかってきた。

これを軽減するために考えられたのが「ナイトシフト(Night Sift)」モードだ。タイマー式になっているこのモードをオンにすると、iOSデバイスの時計とジオロケーションから日の入りの時刻を推定し、指定された時間帯で暗い場所に行くと、ディスプレイの色温度が暖色系に調節される。こうすることで夜間ディスプレイを見ていても目に優しく、眠りの妨げにならないようになる。

OS Xと異なり、従来までは色温度を自分で調整することができなかったiOS。これを実現するためには別途アプリを使う必要があったが、今回のアップデートで晴れてOSの標準機能となり、より便利に我々が利用できるようになった意義は大きい。今回のアップデートの中でも「目玉機能」と呼んでも過言ではないだろう。

機能を有効するには「設定」アプリの[画面表示と明るさ]から[Night Shift]項目を選択して、時間指定をオンにする。

時間帯に関係なくナイトシフトを有効にするには、コントロールセンターからナイトシフトアイコンをタップしても翌日まで有効にすることができる。

【Key Feature】メモ

セキュリティ機能追加で安全性・使いやすさを徹底追及

iOSデバイス上で文章を作成する機能を持つアプリは、「エバーノート(Evernote)」や「ページズ(Pages)」などを筆頭に、豊富に存在する人気ジャンルの1つだ。しかし、その中でもっともよく使われているのは、標準で搭載されている「メモ」アプリだということをご存じだろうか。

シンプルさゆえに軽量で、気軽に使えることが大きな利点となっているメモは、そのニーズの高さを受けiOS 9で大きくアップデートされた。タイトルや見出し、リストといった「フォーマット」を適用したり、メモしたことを終わらせたかどうか確認する「チェックリスト」、他のアプリで作成したものをメモに入れておける「添付ファイル」、写真を貼り付けたりURLを入れるとメモの中で見ることができる「プレビュー」、指やアップルペンシルなどのスタイラスペンで自由に絵を描いてメモできる「スケッチ」など、その機能の多さは他のテキスト系有料アプリと同等かそれ以上の充実度となった。

大幅アップデートで圧倒的に便利になったメモだが、iOS 9.3ではさらに「ロック」機能に対応した。ロックが設定されたメモはあらかじめ設定したパスワードを入力するか、タッチIDで認証しない限り内容をチェックすることができないため、仕事とプライベート両方でメモを使いたい人などには有用だ。

また、並び順も今までは最終更新日順のみだったが、作成日やタイトル順などでも並び変えることが可能になるなど、ユーザリクエストを積極的に取り入れて今までにないスピードで進化を続けている。

解除に使うパスワードは全メモ共通だが、タッチIDを使ってロックを解除するように設定することも可能。

ロックされたメモは、タイトル以外の内容がプレビューできなくなる。メモを選択して[メモを表示]をタップすると、ロックが解除されてメモを見ることができる。

【Key Feature】ヘルスケア

「使いやすく」「連係しやすく」アップデートが

重ねられていく司令塔的存在

iOS 8から搭載されたフレームワーク「ヘルスキット(HealthKit)」は、近年急速に進化しつつある医療・フィットネス・健康といった分野でのデジタルデバイスやアプリの活用を、我々ユーザにとってより使いやすくしてくれるための仕組みだ。標準で搭載される「ヘルスケア」アプリは、対応したアプリのデータをダッシュボードでまとめて一覧表示ができるため非常に便利だ。また、複数の健康系アプリから取得したデータを医療分析に送って医師のアドバイスを受けることができるなど、データ交換のパイプライン的な役割を果たすため相乗効果が高いのも特徴だ。

さらに、iOS 9になってからは取得できるデータの種類(カテゴリ)が爆発的に増え、対応するアプリも日々多くなってきている。このためアップストア内で目当てのアプリを探すのも難しくなってきた。

今回のアップデートでは、カテゴリ表示の画面にスライダメニューが登場。そのカテゴリで利用できるアプリが紹介されるので、すぐにダウンロードして使える仕組みだ。また、アップルウォッチで測定されたムーブ、エクササイズ、スタンドの記録がチェックできる「アクティビティ」アプリも新たにヘルスケアでチェックができるようになっている。

アップルウォッチユーザにとってチェックが欠かせない「アクティビティ」が、ようやくヘルスケアに対応。ダッシュボードに表示できるようになっただけでなく、他のアプリにもデータ連携が可能になった。

ヘルスケアで取得したいデータのカテゴリを選ぶと、それを取得可能なアプリが候補として表示される。

【Key Feature】CarPlay

アップルミュージックとの連係を強化

愛車が「iOSデバイス」に変わる

2014年に発表された「カープレイ(Car Play)」は、車内に搭載されたテレマティクス(ディスプレイを持つ多目的ユニット)とiPhoneを接続し、安全かつ快適に利用できるようにするプラットフォームだ。

従来まではカーナビやA/Vシステム程度の実装しかなかったテレマティクスだが、カープレイに対応することでiOSの持つパワフルな機能をネイティブに活用して、マップと組み合わせてより精度の高いカーナビを使ったり、電話やメッセージを運転中でも手を離さずに利用したり、ミュージックの再生が可能になる。

そして今回のアップデートでは、サブスクリプション型音楽配信サービスであるアップルミュージックとの連係が強化された。「New」や「For You」といったエキスパートたちが厳選した曲たちが、ユーザの好みに合わせてインテリジェントに提供される、同サービス最大の特徴を利用することが可能になった。

対応アプリはポッドキャストやオーディオブックなどを中心に続々と増えており、使い込むたびに自分の車がまるで「iOSデバイス」のようになっていくのも特徴だ。

カープレイにネイティブ対応する車もすでに国内外あわせて100種以上が発表されており、選択肢は豊富だ。これらの車種ではiPhoneを接続すれば、タッチスクリーンでの操作はもちろん、ノブやダイヤル、ボタンといった従来まで使っていた画面操作、さらにハンドルの音声コントロールボタンを押し続けることで、Siriを使った音声コントロールも可能になる。

カープレイにネイティブで対応する車は国内外合わせて100種以上。詳細はアップルの公式WEBサイトで確認することができる(http://www.apple.com/jp/ios/carplay/available-models)。

iOS 9.3により、アップルミュージックとの連係が強化され、同サービスの最大の魅力である「New」や「For You」といった機能を利用できるようになったカープレイ。使い込むたびに自分の愛車がiOSデバイスのように感じられるだろう。

【Key Feature】3Dタッチ

「押し込む」ことで素早くアクセス3つの標準アプリが新たに対応

iPhone 6s/6sプラスに搭載された「3Dタッチ」は、画面をタッチした強さに応じて異なるアクションを返してくれる便利な機能だ。アイコンを強く押し込むことで表示されるクイックアクションは、よく使う機能へのショートカットの役割を果たしてくれる。iOS 9.3では、新たに「設定」「ヘルスケア」「コンパス」にクイックアクションが追加。また「アップストア」など従来から機能に対応するアプリも一部改良が加えられている。

アプリを開く、という手間が省けるだけでこんなに楽になるのかというほど使い勝手が気持ちいいクイックアクション。対応するアプリが増えるほど、その快適さが手放せなくなる。

【Key Feature】写真

新体験「ライブフォト」がさらに扱いやすく進化

iPhone 6sシリーズから加わった「ライブフォト(Live Photos)」は、シャッターを切る前後数秒も撮影し、ごく短い動画を楽しめる機能だ。しかし、人に送ったり写真として加工する際にはやや扱いづらい一面もあった。

そこで、新たに「写真」アプリの機能として「複製」が搭載。ライブフォトの場合は「静止画像として複製」というオプションが表示され、普通の写真として扱うことが可能だ。

「写真」アプリ内では画像を修正してもオリジナルファイルは保たれるが、他の画像加工アプリで使うために別途複製しておきたかったなどのニーズに応えられるようになった。

「共有」メニューに新しく加わった複製オプション。以前のままでもオリジナルデータは保存されていたため効率面ではこちらが有利だが、別の用途でそれぞれの写真を利用したい場合には新しいこの機能はありがたい。

【Key Feature】News

日本未提供ながら着実に進化を続けるニュースメディア

日本ではまだ提供開始されていないものの「情報ソースのアップルミュージック」とも呼ばれる、キュレーション型ニュースメディアリーダ「ニュース(News)」も着実に改良が続けられている。

iOS 9.3ではストーリーのキュレーションアルゴリズムが改善されたほか、デバイスを横にしても読める「ランドスケープ」モードにも対応。さらに記事の内容が「好き(Like)」か「嫌い(Dislike)」かをレーティングするためのスワイプジェスチャ、チャンネルのミュートやブロック機能など細かい点でもかなり多くの変更点が加えられている。徐々にサービスインされる地域が増えているアプリなだけに、日本でのローンチが待ち遠しいアプリだ。

日本では未対応ながら、キュレーション型メディアリーダーとして着実に進化を遂げる「ニュース」アプリ。日本でのローンチが待たれるところだ。

新しい「ニュース」アプリでは、アップルが集めた「News Top Stories」や「Editor's Picks」などが読めるようになった。

【Key Feature】iBooks

これまでよりも同期が捗る電子書籍リーダのトップアプリ

標準の電子書籍(eBook)リーダとして、文字の美しさと軽快さではトップクラスのアプリだが、クラウドを通じて同期できるのがiBooksストアで購入した書籍のみだったのが欠点だった。

iOS 9.3では「iCloud for iBooks」が登場。今までは対象外だったファイルもアイクラウドを通じて複数のデバイスで同期可能に。同期はデータだけでなく、開いていたページも記録されるためよりシームレスにデバイスを使い分けることができる。

iBooksを愛用するユーザには、待望の同期機能。データの同期はiOSだけでなくMacも対応するため、PDFベースでの書類チェックが今まで以上に効率的に利用できるようになる。

【Key Feature】WiーFiアシスト

もっと賢く利用するため使用したネットワーク通信量を表示

iOS 9.3は小さな部分でも多くの改善が見られるが、その中でも「Wi─Fiアシスト」の改善は気になるユーザも多いのではないだろうか。Wi-Fi電波が弱いときに、携帯電話のデータ通信に自動的に切り替えるこの機能は、確実にネットワークに接続し続けることができる反面、意図せずパケットデータ通信の利用枠を使用してしまう可能性もある。今回のアップデートで、Wi-Fiアシストが実際に使用した通信量が表示されるようになった。これによってより賢くWi-Fiアシストを利用できるようになるはずだ。

「Wi-Fiに接続されているはずなのに、パケット通信をしてしまう」という悲鳴が多かったWi-Fiアシスト。本来の設計意図を考えれば期待したとおりに動作はしているが、使用量が不透明だったことが問題だったといえる。