新しい「名物アカウント」の誕生
3月3日、ツイッター上で興味深いアカウントが活動を開始した。「Welcome to…」というツイート文を第一声にスタートしたのは、「@AppleSupport」 という名のユーザで、名前の横には本人確認済みのバッジが表示されている。正真正銘の「アップル公式」アカウントだ。情報はネットをあっという間に駆け巡り、開設から10日足らずでフォロワー数20万人を超えるという注目のアカウントとなった。
この人気はどこから来るのだろう。SNSなどで開設される企業の「公式アカウント」といえば、広報やパブリックな情報発信的な役割を担うことが多く、ユーザとの交流は一方通行になるのが一般的な傾向だ。実際にこの公式アカウントも、2回目のツイートで「Tips and tutorials from the same Apple Advisors you know and trust – now available on Twitter. #AppleSupport(皆さんおなじみの実績あるアップル・アドバイザーたちが、ツイッター上でもヒントや使い方をご紹介します)」と説明しているとおり、基本的には情報発信を行うためのアカウントのように見えた。
しかし、実際にはユーザがこのアカウントに向かってメンション(発言に@とアカウント名をつけるツイート)をすることでトラブル相談にも乗ってくれるという、実質的な「オンラインサポート」として機能している。
これまでのツイートを分析してみると、1日あたり1000件前後あるツイートのうち1件だけがアカウントからのテクニックの紹介で、残りはすべてメンションされた相談への返信という盛況ぶりだ。
突如活動を開始したアップル公式のサポートアカウント。一般的な企業の公式アカウントのように一方通行な情報発信の場のように思われたが、実際はユーザのメンションに答えるという実質的なオンラインサポートとしての役割を果たしている。フォロワー数はすでに20万を超えており、日本語への対応が期待される。
万全なサポート体制
このアカウントは、アメリカ東海岸の時間で朝8時(日本時間夜9時)から夜11時(同正午)頃まで対応している模様で、このことから早い時間帯はニューヨークなどの東海岸かイギリスから、最後の時間帯はサンフランシスコなどの西海岸かオーストラリアといった複数の拠点に分散されていることが推測される。また、1分以内に複数のツイートがされていることから、複数のアドバイザーが同時アクセスしているのは間違いないだろう。このことからもアップルのサポート部門が本格的に人的リソースを割いて投資していることが読み取れる。
アップルは古くからオンラインサポートに力を入れている企業だ。サポートページに用意されている技術文書はエンジニア自らがドキュメントを作成して公開するため、詳細な情報が得られる。また、初心者向けのユーザガイドやビデオコンテンツ、さらにはチャットなどを使ったマンツーマンによる遠隔サポート、ユーザ同士でも相談ができる「ディスカッションボード」や100以上ある開発者向けメーリングリストなど、そのバラエティは幅広い。
そんな中で常にユーザが使いやすいサポートを心掛けるアップルが、ソーシャルメディアにサポート領域を広げたのは実に興味深い。その中でも情報発信と個別のユーザ間でのコミュニケーションが容易なプラットフォームであるツイッターを選んだのは、単なるユーザ母数の多さだけでなく、機能面でも利点があるからだ。実際に日本でも企業アカウントがユーザとの交流を広める場としてツイッターを選び、成功しているケースも多いこともこれを裏づける大きな説得材料になるだろう。
現時点でツイッター上でのサポートプログラムは英語圏のみとなっているが、利用ユーザ数では世界で2番目に多く、トラフィックでは世界最大といわれるほど日本語によるツイッターの利用率は高い。これは140文字という制約の中で他の言語よりも多くの情報を書けるから、といわれている。だとすれば、このサポートアカウントが何かしらの形で日本語に対応する可能性もあり、今後もこの活動に期待したい。
【NewsEye】
何の前触れもなく始まったアップル公式サポートアカウントだが、アカウント情報から作成日を取得してみると「2015年の6月6日」になっている。このことからアップルのサポートチームは半年以上前から入念にこのプロジェクトを準備し、スタッフトレーニングなどを経てスタートしていたと思われる。