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「読む」~『「やさしさ」という技術 賢い利己主義者になるための7講』書評

著者: 徳本昌大

「読む」~『「やさしさ」という技術 賢い利己主義者になるための7講』書評

第10回 充足した人生を送る成功者の共通点は「やさしさ」にある!

改めて問い直す「やさしさの価値」

世の中の暗い面にばかり目を向けていれば、現実を見る目が曇るのは無理はない。ストックホルムの地下鉄で人が殴られる事件が起きたら、誰でも心穏やかではいられない。だが、ラッシュアワーの大混雑のなかでも、大多数の乗客は協力して助け合うもので、乗客どうしがいきなり喧嘩を始めるという事態に「ならない」のもまたおどろくべきことではないだろうか?(ステファン・アインホルン)

私たちは毎日毎日、メディアから世の中の暗いニュースを大量に受け取っています。人の耳目をいかに集めるか、またそういった話題は何かを追求するのがメディアの役割ですから、どうしてもその内容は悲惨だったり、インパクトが強いものに偏りがちです。また一部には、視聴率や部数を気にするあまり、人の不幸を見せることが数字につながると考える人たちもいるのではなかろうかと思います。

暗く悲しいニュースは、社会の問題点をあぶり出すという意味で価値があるはずですし、そこから何がしかの教訓を得ることは重要です。しかし、そうしたニュースの暗い部分に呑み込まれてしまっては、世界をネガティブにしか捉えられなくなってしまうでしょう。

自分の周りには幸せになれる良い話もたくさんあるはずです。暗いニュースはさておいて、自分の足元から世の中のためになることを考えていきましょう。本来、人は他者にやさしくしたいと思って生きています。人は仲間との関係を良くしたいですし、困っている人を本来は助けたいのです。その「やさしさの価値」を問い直そう、というのが本書のコンセプトです。現実には、悪意ある行動はメディアのニュースほど多くありません。ニュースの印象から悲観的に世の中を見るのではなく、人に社会に、やさしくなることが正しいのだと本書から学べます。

人は昔から、集団の中で生きてきました。仲間との関係を良くすることで、幸せになってきたのです。あなたが仲間に良い行いをすればするほど、仲間もあなたに良い行いをしてくれるようになります。また、そうなったとき、その人たちはあなただけに良い行いをするのではありません。ほかの人に対しても、以前よりやさしく接するようになります。こうして良い行いは水面の輪のように広がっていくのです。

幸せの連鎖が、自分の周りに起こるとワクワクしてきますよね。まずは自分から行動を起こしてみましょう。「人にやさしく」、これに勝る格言はありません。

「やさしさ」という技術

賢い利己主義者になるための7講

ステファン・アインホルン著

飛鳥新社/1620円

2015年刊

徳本昌大

iPhoneやソーシャルメディアのビジネス活用を絶えず考える読書ブロガー。複数の広告会社勤務後、コミュニケーションコンサルタントとして独立。現在は、株式会社Ewil Japan、タキマテック株式会社、株式会社ビズライト・テクノロジーの取締役としても活動中。【URL】http://tokumoto.jp/