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藤原鉄頭の明日のためのアプリ

第21回 煮て焼いて砕いて混ぜて楽しむ 爆発上等の黒い実験室

著者: 藤原鉄頭

第21回 煮て焼いて砕いて混ぜて楽しむ 爆発上等の黒い実験室

役に立つもの立たないもの

小中高で教わることで、その後、役に立つのは何だろう? まずこうして字や文章を書いたり読んだりすることを学ぶ「国語」ははずせない。計算や論理的思考が身につく「数学」も必要だ。それからナンダカンダいっても「英語」でしょ。ネット時代になって英文を読む機会は増える一方だし。「社会」も大人の付き合いを始めると歴史とか政治・経済をまったく語れないようじゃバカにされる。

一方、あまり役に立ってなさそうに思えるのが理科系だ。もちろん現代社会のあらゆる局面で理科系の知識が重要な役割を果たしているのはわかっていますよ。ただ、あくまでも個人の生活レベルの実感として、「化学」や「物理」で教わったことが役立ったことがあるかと聞かれれば、残念ながら「記憶にございません」と答えるしかない(学生時代それらが落第点スレスレの超苦手科目で、ワタクシがろくすっぽ授業を聞いてなかったせいかもしれませんが…)。

悪の化学

ところがそんなワタクシに、おやっ化学って面白いじゃんと思わせてくれたものがある。それは海外ドラマ「ブレイキング・バッド」だ。肺がんで余命2年を宣告された高校教師が、妊娠中の妻と脳性麻痺の長男にまとまった金を残そうと、覚せい剤の密造を始めるという犯罪モノ。平凡な化学教師だった主人公が、次第に悪に染まり、壊れていく姿を描いた、とにかく面白い作品なのだが、この主人公が悪の世界で生き抜くためにさまざまな知恵と工夫を働かす。それが化学なのだ。たとえば…。

まず覚せい剤の密造が化学そのもの。主人公はそれまで培ってきた知識を活かして、これまでにない高純度の覚せい剤を造り出す。その覚せい剤を製造するRV車の中で2人組に襲われたときには、フライパンで熱した湯の中に「赤リン」をぶち込み、致死性の高い神経ガスの「リン化水素」を発生させて2人を倒す。

そしてその遺体の処理に使ったのが「フッ化水素酸」だ。ところが出来の悪い相棒が2階の浴室で処理を行ったために、プラスティックは溶かさないが、岩、セラミック、ガラスは溶かす「フッ化水素酸」によって床が抜け、溶け残った遺体が落下する。それから売人の元締めの事務所に乗り込んだ主人公が大爆発をひき起こしたのが、投げつけるだけで爆発する結晶「雷酸水銀」等々。

ちなみにこの「ブレイキング・バッド」で描かれている化学知識は、わざと微妙に違えているらしく、そっくりそのまま真似ても、高純度の覚せい剤も殺人神経ガスも作れないそうだが、化学って知っていれば結構役に立つんだな(悪事ばっかりだけど)と、思わず感心、興味を抱いたってわけである。

アプリの効用

そこで今度はアプリで化学にアプローチした。iPhoneをビーカーに見立て、そこに素材を加えて、煮たり、焼いたり、混ぜてみる。その化学反応を楽しむ実験アプリだ。

しかし化学反応を楽しむといっても、悲しいかなこちらには素養がない(落第点スレスレですから)。最初は手探りでテキトーな実験を行うが、たいして面白いことも起きず、めげそうになった。しかし運良く派手な燃焼に出会い、その面白さにちょっとハマった。今はもっと派手な発光や爆発が見たくていろいろ試してみたり、ネットで調べたりしている。ところでこれが何かの役に立つかと聞かれれば、うーん、化学に対する関心度は以前よりずっと高くなったけど、具体的には…、ストレス解消ぐらいかな。だって爆発ってやっぱスカッとしますから。

BEAKER by THIX

【作者】THIX

【価格】360円

【カテゴリ】App Store>教育

iPhoneやiPadをビーカーとして、化学実験を楽しむアプリ。化学なんて大嫌いだという人でも、モノが燃えたり爆発したりする化学反応を見るのはそれなりに楽しいハズ。このアプリではそんな実験がし放題だ。また現実の実験では事故が起きたり、汚れたりする可能性もあるが、アプリなら安全かつクリーン。安心です。

好奇心も大爆発!?「化学実験アプリ」にチャレンジ

黒い実験室へようこそ

真っ黒な画面の右上に、小さな白い円があるだけという大胆なトップ画面にまず驚かされる。この白い円をタップすると、実験で扱う素材(液体、固体、気体)のメニュー画面が表示される。

とりあえずいろんなものを燃やしてみた

ナトリウム

せっかくなので違う色で燃えるものを探したらナトリウムの黄色を発見。簡単に火がつき、よく燃える。ときどき飛びはねる。ちなみにナトリウムは水でも燃焼するって知ってました?

炭素

炭素といえば木炭がイメージされるように、実験でもまとめてバーナーで熱したところ、炭火を彷彿させる明るい赤熱状態になった。また長い時間燃焼が続くのも特徴だ。

アルミニウム

化学実験の定番「テルミット反応」で知られる(といっても化学オンチにはさっぱりだが)、アルミニウムの燃焼。白い大きな光を放って激しく燃えるのが特徴で、見応えあり。

混ぜたら危険そうなものをあえてやってみた

(1)たっぷりめの「水」に、色づけの「青」を少々。それからビーカーに蓋をして…。

(2)名前がもう危険を感じさせる(実態は知らないが)「セシウム」を複数個投下。「セシウム」は水面に触れるや爆発音とともに飛びはね、再び落下して爆発。これを繰り返す。まるで中華圏で旧正月を祝う爆竹騒ぎのような状態が続き…。

(3)落ち着いたところで、マッチを擦ったら再び爆発。それにしてもiPhoneが壊れるんじゃないかと心配になるぐらい迫力ある連続爆発だった。化学はエキサイティングだ。

【担当者後記】

超文系の担当編集も、高校時代化学の授業を諦めたクチ。そこで扱う分子とか原子とかって、目に見えないからイマイチ想像力がわかないんですよね。でも今思うとそれって結構ロマンチックかも。昨年末に理研のメンバーが新元素を発見したりと、にわかに化学ブーム到来か!?

【担当者後記】

今回鉄頭先生が取り上げた「BEAKER」は、アップルが選ぶiPhoneアプリの「BEST OF 2015」にも選ばれた超秀逸アプリ。2台のiPhoneを使ってお互いの物質を混ぜる、なんてこともできちゃうらしいですよ。