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第5話悪いルーティーンを打破するiOS

著者: 福田弘徳

第5話悪いルーティーンを打破するiOS

©David Gilder

先日いただいた、あるクライアントからの相談内容。「iPadが活用できていない。オフィス文書やPDF、インターネットの閲覧端末としてしか利用できておらず、今後さらに活用していくために、営業支援ツールで何かいいものはないか?」といった内容だ。失敗したiPad導入の典型的な例である。

モバイルとクラウドが普及し、いつでもどこでも情報にアクセスできるようになった反面、目的を持ったiOS導入ができないと、いつまでも目の前のタスクに手をつけず先送りにしてしまい、逆に生産性を下げることになってしまう。営業活動の中で課題となっていること、業務上負荷になっていることなどが明確でなければ、iOSを導入してもシステムに縛られた営業活動しかできず、本来の目的である営業活動の生産性向上、業務の効率化の実現はできない。

たとえば、営業担当者のルーティーンの1つに「日報」がある。朝から夕方まで営業先を回り、夕方に帰社しても顧客対応に追われ、夜になってようやく日報作成の作業を行う、といったケースがよくある。1日中歩き回った営業担当者が、夜に会社でヘトヘトになりながら日報を作成するのは作業効率が悪く、管理する側にとっても必要な情報を取得するのに時間がかかり過ぎてしまう。営業活動に役立てるための日報が、残業を生み出しているとなっては本末転倒である。

本来、営業における日報の目的は、自己管理や自分自身の振り返り、過去の経緯の蓄積、引き継ぎのためだ。その反面、管理する側が活用しきれず、せっかく時間をかけて作成した日報を無駄にしてしまっていることも多い。営業日報のようなきわめて重要な情報は、単なる義務で終わらせてはならない。営業活動の成果を大きく左右するようなところまで高めないとダメである。

ルーティーンとは慣習である。日常規則的に繰り返されるもので、一定の手順で行われる仕事を意味する。無意識的にスムースに行われるため惰性に流れてしまい、改善・発展の契機に乏しくなる。だから単なるルーティーンではなく、いかにクリエイティブ・ルーティーンにするかが大事である。クリエイティブになるためには、基本が徹底されなければならない。クリエイティブ・ルーティーンとは、イチロー選手や五郎丸歩選手が行っているような理想的なパフォーマンスを引き出すための独自の「型」である。

この悪いルーティーンとなっていた日報作成業務の解決策となるのがiOSだ。本当に日報作成にフォーカスしなければならない情報を絞り込むことで、入力すべき情報を厳選することができる。たとえば、商談の受注報告もお客様からの注文書を写真で撮影して、上司に送信して報告完了、という流れで業務上のタスクを簡単に達成することができる。

また、訪問先の顧客に関するちょっとした報告も「メッセージ」を使うことで、移動中に即時に報告ができ、相手の既読状況もわかり、効率的である。顧客やパートナーとの待ち合わせの際は、位置情報を送信することも可能なので、わざわざ地図情報を事前にプリントアウトして持ち歩くようなことも必要ない。また、グループウェアなどと連携すれば、日報の作成がそのまま案件リストになったり、スケジュールに反映することも可能になる。本来の日報作成に必要な情報を絞り込むことが肝要である。

iOS導入のポイントは、業務上の負荷になっていること、現場の課題をどのように解決できるかである。日常的に行われているルーティーンを見直し、なんとなく続けている業務や習慣化された行動に対し、iOSは新たなルーティーンを生み出すことを可能にする。iOSはビジネスパーソンにとって、最高のクリエイティブ・ルーティーンのツールなのだ。

Hironori Fukuda

企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。

【URL】www.too.com/apple