Macを動かす高性能な計算機
すべてのソフトウェアは、要素を極限まで分解すると足し算レベルの単純な命令の組み合わせです。Macはその与えられた命令を猛烈なスピードで計算して結果を返すという作業を繰り返しています。
この計算を行うのが「CPU(Central Processing Unit=中央演算処理装置)」です。CPUの計算速度は「クロック周波数」で示され、現在では一概にクロック周波数が高ければ高速とはいえません。かつてMacはCPUが1つしか搭載されていなかったため、クロック周波数が性能を知る手がかりになっていたのですが、現在では1つのCPU内に複数のコアを搭載するマルチコアCPUが主流となったため、CPUのモデルの違いも理解しなければスペックの高低を判断できないのです。
「GPU(Graphic Processing Unit)」は、CPUから送られてくる計算結果をディスプレイに表示する機能を担っています。現在のMacのGPUはCPUに内蔵するのが主流です。なお、上位モデルでは独立したGPUが基板に搭載されています。
「メモリ(RAM)」はメインメモリなどとも呼ばれ、計算に使う情報を一時的に蓄えるためのパーツです。高速なアクセスが可能で、容量が大きいほど余裕を持ってCPUが作業できます。現在のMacでは基板に固定されることが多く、ユーザが交換・増設できる機種は限られています。
これらのMacのパーツが動く仕組みやスペックの意味を知ることで、愛着が湧いたり新たに購入する際に役立ちます。
【アップル知りたいキーワード】
Macに搭載された各パーツの概要をとりあえず知りたい!
Macのモデルやグレードによって、搭載されるCPUやGPU、メモリの種類や構成が異なります。まずは各パーツがどのMacに採用されているかを大まかに確認します。
Macに搭載されているCPU
Macプロ以外のMacではCPUにインテル コアiシリーズが採用され、MacBookではコアM、それ以外のMacではコアi5かコアi7が搭載されています。これらは複数個のCPUを1つのCPUに束ねた構造で、i5/i7にはデュアルコア(2コア)、クアッドコア(4コア)があり、コアMは2コアとなっています。Macプロにはインテルジーオン(Xeon)E5が搭載され、クアッドコア2基で8コア、6コアを2基で12コアといった構成も購入時に選択可能です。
独立したGPUは上位モデルに採用
ほとんどのMacのCPUにはGPUが内蔵されていて、MacBookプロ・レティナディスプレイモデル(以下MBPR)15インチモデルとiMacレティナ5Kディスプレイ(以下iMac 5K)では、高性能な独立GPUを購入時に選択できます。またMacプロには独立したAMD製GPUをデュアル(2基)搭載しています。
メモリの交換・増設は一部のモデルのみ対応
多くのMacはメモリが基板上に固定され外せません。メモリ交換・増設が可能なモデルはiMac5KとMacプロのみなので、それ以外のMacでメモリ増設を視野に入れている場合は、購入時にメモリ容量の大きいモデルを選択しましょう。
【ハードウェア図鑑】CPU、GPU、メモリの基本的な仕組み
CPUやGPU、メモリといった内部パーツは専門的な言葉が多く、難解なものと敬遠されがちです。しかし、それぞれのパーツの役割と基本的な構造さえ押さえておけば決して難しくはありません。
CPUの仕組み
CPUの中身を詳しく見ると、計算そのものを行う論理回路「コア」が複数並んでいます。計算結果は円環状に接続されたL3(3次)キャッシュを介してほかのコアと共有し、複数の処理を並列に実行しています。また、計算中のデータを一時保管するキャッシュ、GPUやシステムエージェントなども1つのCPUチップにまとめられ、従来は別に用意されていたメモリコントローラやPCIエクスプレスコントローラ、ディスプレイコントローラなどもシステムエージェントに内包されます。MacのCPUは計算だけでなく、ハードウェア全般の制御も行っているのです。
CPU内蔵GPUと独立GPUの関係
CPUに内蔵されたGPUと独立したGPUで処理している内容に大きな違いはありません。違いとなるのは、一度に処理できる情報量や処理速度です。CPU内蔵GPUでは計算用のコアが数個ですが、独立GPUでは数百~数千以上も搭載されることがあります。また、独立GPUではグラフィック専用に高速なメモリを搭載するなど、高い計算能力を持ちます。なお、CPUと独立GPUはPCIエクスプレスで接続され、2つのGPUを負荷の高さに応じてOS Xが自動で切り替わります。
メインメモリの仕組み
メインメモリは起動したプログラムに必要な領域を確保し、CPUで計算された結果を保存しています。メインメモリはデータの読み書き速度が高速な半面、電源が断たれるとメモリ上のデータが消えてしまうという性質があります。このため、処理の済んだデータを順にHDDやSSDなどのストレージに移動してデータを保持しています。メインメモリのような計算用記憶装置を1次記憶装置と呼び、データ保管用のストレージを2次記憶装置と呼びます。OS Xではメインメモリ上で頻繁に使われていないデータを圧縮するなどの工夫を自動で行い、処理効率を高めています。
【もっと教えて】
Macの基本性能は高く、WEBやメールなどのライトユースであればエントリーモデルでも十分なスペックです。動画編集などを行う場合には、高性能なCPUやGPUはもちろん、メモリやストレージ容量も重要になってきますので、よく確認しましょう。
【もっと教えて】
CPUはモデルやスペックによって構造が変わります。ここで紹介した図は、CPUの仕組みを理解するための模式図で実際の配置とは若干異なっています。CPUには複数のコアやハードウェア制御パーツが内包されていることなどに注目してください。