エルキャピタンで大刷新
「ディスクユーティリティ」はOS Xの最初期から存在するソフトで、内蔵ディスクや外付けのハードディスク、SSD、USBメモリといったストレージデバイスの管理に加え、ディスクイメージファイルの作成や管理、CDやDVDの書き込みまでをもサポートした、ディスクに関する「何でも屋」です。そんなディスクユーティリティに、OS Xエルキャピタンより、大幅な刷新が行われました。
最大の変更点は、なんといっても見た目が大幅に変わったこと。ひと目見るだけで、まったく違うのがわかるはずです。2001年リリースのOS X10・0から続いてきたUIが変わったのですから、大事件といえるでしょう。
一方、機能数を見てみると、実際のところ、細かく減っています。たとえば、ディスクのアクセス権の検証や修正といった機能はなくなりました。これは、エルキャピタンに組み込まれた「System Integrity Protection(SIP、直訳=システム統合防御)」により、そもそもシステムを書き換えることが不可能になったので、アクセス権が勝手に書き換えられて不都合を起こすことがあり得なくなったためです。
そのほか、GUIDパーティションテーブルでない場合はパーティションの変更が表示されなくなり、初期化が必須となったことなどが主な変更点です。
ヨセミテまでのディスクユーティリティ
多機能で便利な一方、マスター・ブート・レコードでも一見パーティションが操作できるように見えます。これを編集し、[適用]すると中のファイルはすべて消えてしまいます。注意書きもありますし、パーティションが何かわかる人には自明のことなのですが、フールプルーフとは言い難かったです。
エルキャピタンのディスクユーティリティ
UIも使用できる機能も非常にシンプルになりました。GPT以外は、必ず[消去]を押してクリアしてからでないとパーティションの分割などの操作はできません。基本、上部のメニュータブ「パーティション」はグレーになっており、選択できないようになっています。
なんで必要なの?
わずか1MB程度しか容量のなかったフロッピーディスクの時代は、ディスクに直接ファイルシステムを構成して、ファイルを書き込んでいました。1つのディスクが1つの大きなまとまりで、そこにファイルがすべて入っていたのです。
その数十倍から数百倍、千倍以上も容量の差があるハードディスクが普及してくると、さまざまな理由から、領域を分割して使う必要性が出てきました。たとえば、2つのOSを入れて切り替えて使うためだったり、システムとデータ領域を分けて、一方が溢れても、もう一方に影響が及ばないようにするためなどです。
このように、大容量のディスクをいくつかの論理ボリュームに分割したものを「パーティション」といいます。ディスクの先頭には、どこからどこまでがどのパーティションかを記録する「パーティションテーブル」というものが用意されています。このパーティションテーブルの作り方の種類は、古くからウィンドウズPCで使われている「マスター・ブート・レコード(MBR)」、PowerPCの古いMacで使われていた「アップルパーティションマップ」、そして現在ウィンドウズの主流になりつつあり、MacではインテルCPUへの移行時から使われている「GUIDパーティションテーブル(GPT)」があります。MBRはコンピュータはもとより、デジカメなどの電子機器の記録メディアでも使われている業界標準ですが、一方で拡張性に乏しいという問題があります。GPTは、より柔軟で拡張性が高いのですが、Macと最近のウィンドウズ(ビスタ以降)でないと使えないのが難しいところです。
市販のUSBメモリや外付けストレージはほとんどの場合、MBRで1パーティションで構成されています。ここで、パーティションを分けたい、Macで使うからGPTにしたい、というときにはディスクユーティリティの出番になります。
パーティションテーブルの仕組み
ディスクの先頭ないし先頭に近いところに配置され、ディスク上のどこからどこまでを1つの領域(パーティション)として扱うか、を記載したものが「パーティションテーブル」です。パーティションをいくつまで扱えるか、1つのパーティションのサイズ、そのパーティションの用途の格納方法などでさまざまなパーティションテーブルが存在しましたが、現在では、MBRかGPTのほぼ2択となっています。
ファイル管理の仕組み
しかし、パーティションを分けただけでは、ディスクに大きい空き領域があるだけです。どの空き領域にファイルを書いて、どういった属性をサポートして、ファイルが大きくなったらどうするかなど、空き領域をうまく使う仕組みが必要になります。ファイルをうまく管理するための仕組み、それが「ファイルシステム」です。
OS Xでは、「HFS+」というファイルシステムが使われていることは、以前この連載でも触れたかと思います。ウィンドウズでは「NTFS」というシステムが使われており、ほかに、古いウィンドウズで使われていた「FAT」というシステムもあり、これはデジカメなどの電子機器ではまだ現役です。
パーティションで、どのファイルシステムを使うか、そのための準備(フォーマット)をするのも、ディスクユーティリティの仕事です。特にFATは大容量ディスクでは非常に効率が悪く、使えないムダな領域が生じやすいので、Macでしか使わないのなら「HFS+」にフォーマットし直すべきであり、このときにディスクユーティリティが活躍します。
わかりやすくするための刷新
現実的に考えると、今となってはパーティションを分割して使用することはまれです。FATはともかく、NTFSもHFS+も、大容量のディスクにうまく合わせることができ、ディスクのムダが出ないようになっています。そもそもの容量が大きいので、溢れたときのためにパーティションを分割する、ということも少なくなっています。
これまでのディスクユーティリティは、操作がわかっている人には非常に便利なツールでしたが、そもそもそれだけの操作をするか?というと、実際にはほとんどしなくなっています。USBフラッシュメモリなどを購入したときのまま、MBRとFATで使い続けるか、よりMac向けにGPTとHFS+にするか、ぐらいでしょう。
【 マスター・ブート・レコード 】
業界標準となるパーティションテーブルの方式で、1983年のIBMのPC-DOS2.0にて登場し、現在まで使われています。ディスクの最初のセクタ(512バイトごとのブロック)に書き込まれ、4つのパーティションとブートローダという446バイトの起動用のプログラムが収まるようになっていました。しかし、4つではさすがに足りなかったので、うち1つを使って別のセクタに拡張パーティションという名で追加テーブルを用意し、こちらを指し示すことでより多くパーティションを使えるようにしたのです。この、最初の4つ(3つ)のパーティションを「基本パーティション」、拡張パーティションテーブルに記載されたパーティションを「論理パーティション」と呼んでいます。ウィンドウズは原則、基本パーティションにしかインストールされません。
【 GUIDパーティションテーブル 】
インテルがEFIというPC起動時のファームウェアの新しい方式を提案した際に、併せて提案されたパーティションテーブルの方式です。MBRと共存ができるよう最初のセクタを使用せず、「2番目から使用する」、「最大128パーティションまでをサポートする」、「16バイトの『GUID』と呼ばれる値を使って、パーティションがどういったファイルシステムや用途で使われてるかを識別する」といった特徴があります。
【Winの場合】
ウィンドウズの場合は、「ディスクアドミニストレータ」という機能がディスクユーティリティに相当します。ウィンドウズビスタ以降は、かなり柔軟なパーティション管理が可能です。
【復旧】
ディスクユーティリティは、OSのインストールメディアやリカバリパーティションにも格納されています。万が一ブートしなくなったときの復旧などにも使用されます。