複数のメンバーでファイル共有
昔の話をすると年寄り扱いされるかもしれませんが、かつて仲間内や仕事先とのファイルのやりとりは、光学式ディスクやフラッシュメモリに書き込んで物理的に渡したりしたものでした。それがインターネットの普及によって、メールの添付ファイルとして簡単に送れるようになったのだから、便利になったものです。
しかし、それにも制約があって、現在でも数GBといった巨大なファイルは送れませんし、複数人で1つの書類を作るコラボレーションワークでは、バージョンの断片化が起きてファイル管理が煩雑になります。更新するたびに新しいファイルを送り合うと、収拾がつかなくなるからです。
そこで役に立つのが、クラウドストレージです。これは簡単にいうと、インターネット上のサーバにデータを保存し、それに接続したコンピュータやスマートフォンなどでアクセスしたりダウンロードして利用できるというファイル共有(同期)サービスです。代表的なものには、「ドロップボックス(Dropbox)」、アップルが提供する「アイクラウド・ドライブ(iCloud Drive)」、マイクロソフトが提供する「ワンドライブ(OneDrive)」などがありますが、この中で筆者がもっとも活用しているのはドロップボックスです。
なぜドロップボックスなのか?
もちろん、本誌の読者ならクラウドストレージといえば、真っ先に思い浮かぶのはアイクラウド・ドライブでしょう。実際、この連載でもアイクラウドは必須サービスなのですが、ストレージとして使うには、不便なところもあります。もともとアイクラウドの拡張型という感じなので、Macで処理したファイルの保存やバックアップ、自分のMacとiPhoneのデータ同期や連係機能に重きをおいており、アップルデバイスに囲まれたユーザが個人で使うなら、さすが純正だけにとても重宝します。実際、筆者もiWorkの各ソフト/アプリのファイルを保存するのはアイクラウド・ドライブにしています。
しかし、使っているOSやデバイスが混在する仲間とファイルを共有するには、やや使いにくいわけです。その点、ドロップボックスはインストールも簡単ですし、自分のデバイスだけでなく、ウィンドウズやアンドロイドも含めた非アップルデバイスを使ったメンバーとのやりとりも簡単です。
筆者の場合、具体的には自分用のファイル保存のほか、オーディオ業界の仲間と組んでいるバンドのメンバー間における練習用音源や譜面のやりとりにも使っています。メンバーにはウィンドウズユーザも多いので、ドロップボックスを使うことで問題なくやりとりできています。
また、アイクラウド・ドライブは、ファイル単位ではアップロードして保存できますが、フォルダごとの一括アップロードはできません。ドロップボックスなら、フォルダごとのアップロードもダウンロードできる点も魅力です。
ちなみに、筆者はワンドライブも使っていますが、ウィンドウズユーザの使用率が高いので、主に彼らがアップロードした音源、楽譜、写真、動画ファイルをダウンロードするために使っています。こうしたサービスは、なかなか自分だけの努力で1本かできないのが辛いところですね。
クラウドストレージ比較
アイクラウド・ドライブ、ドロップボックス、ワンドライブの容量と料金、対応するプラットフォームを表にしました。ドロップボックスは無料の容量が初期設定では少ないですが、友達招待などで実質16GBまで増やせます。より大容量が欲しいユーザには、プロなども用意されています。
【STEP 1】ドロップボックスで自分のデバイス間で同期
(1)ドロップボックスをインストールしたら、ファインダのメニューバーからプルダウンメニューを開き、右下にある設定メニューから[基本設定]を選びます。たとえばMacとiPhoneで写真や動画を読み込むようにできます。
(2)メニューバーのドロップボックスアイコンの左上にあるリンクボタンをクリックすると、Macとの同期がスタートし、WEBブラウザが起動してドロップボックスに保存されたファイルとフォルダがリストアップされます。
(3)iPhoneでドロップボックスアプリを起動すると、Macのドロップボックスに保存されたファイルとフォルダがリストアップされます。画面下のファイル、写真のアイコンをタップすれば、Mac同様に表示されます。
【STEP 2】ドロップボックスで仲間とファイルをやりとり
(1)WEBブラウザ上では、共有メンバーからアクセス権を許可されると、アクセス中のメンバーが表示されます。メンバーがファイルを更新すると、自動的にメンバー全員が最新ファイルを読み込めるようになります。
(2)MacのファインダやiPhoneでファイルを選ぶと、共有フォルダ内の音声ファイルを再生したり、写真を表示したりできます(図はiPhoneで音声ファイルを再生している様子)。
(3)アップロードするには、[Dropbox]フォルダの共有フォルダに直接ファイルやフォルダをドラッグ&ドロップするだけです。相手が非アップルデバイスでも、大丈夫。たとえファイルを削除されても、共有メンバーであれば復元できます。
【STEP 3】アイクラウド・ドライブでiWorkを共有
(1)iWorkのファイルは、アイクラウド・ドライブを利用するほうがよいでしょう。自分のiOSデバイスに引き継いだり、その逆も可能だからです。たとえばiOSデバイスのページスで作成したドキュメントは、共有アイコンをタップしてリンクを共有します。
(2)共有したいドキュメントをタップして選択すると、準備画面が表示されます。共有先で編集できるようにするか、閲覧のみにするかアクセス権を選んでチェックしておきます。必要ならパスワードを設定することもできます。
(3)iPhone画面右上にある[リンクを共有]をタップすると、エアドロップの画面がポップアップします。共有するためのリンクをメッセージやメール、エアドロップで共有相手に送信することで、そのiWrokファイルを共有できるようになります。
SoundCloudで音楽を共有
自分で演奏した曲や作曲した音源は、サウンドクラウド(SoundCloud)にアップロードすることもあります。ネット上で公開して、広く世の中の人に聴いてもらうため、または音源サンプルとしてバンド仲間やクライアントに提供するためです。さらに、音楽だけではなく、たとえばインタビューの録音音声をアップロードしてメディアへ送る場合もあります。もちろん、フェイスブックなどのSNSで、音楽ファイルを公開する際にも重宝しています。
サウンドクラウドは、ドイツの音声ファイル共有サービスで、プロの音楽家も含め約40万人の登録ユーザ、約2億人の利用者がいます。容量や数の制限はなく、トータルで2時間まで投稿できます。【URL】https://soundcloud.com/
【連係知識】
ドロップボックスのアカウントは、メールアドレスだけで無料で作成できます。ドロップボックスのクライアントは、OS X版とウィンドウズ版のソフトは公式WEBサイト、iOSアプリはもちろんアップストアから各デバイスにインストールしておきましょう。
【連係知識】
iOS 9またはエルキャピタンをインストールしたデバイスなら、アイクラウド・ドライブは自動的に有効になります。iOS 8およびヨセミテであれば、[設定]でアイクラウド・ドライブにアップグレードする必要があります。