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ハードウェアの構造、仕組みを知ろう!

第94回 フラッシュストレージ(1/2)

著者: 吉田雷

第94回 フラッシュストレージ(1/2)

高速&省電力は当たり前 デザインにも有利なSSD

ハードディスクドライブ(以下HDD)に代わりMacの内蔵ストレージのスタンダードとなったのが、「SSD(ソリッドステートドライブ)」です。HDDとはまったく異なる仕組みのストレージで、記録メディアにフラッシュメモリを使うことからアップルでは「フラッシュストレージ」と呼んでいます。本稿では一般的な呼称である「SSD」と表記します。

1つのSSDには複数のフラッシュメモリが搭載されています。半導体であるフラッシュメモリが使われるため、HDDのように動作時に回転させる必要がなく、衝撃や振動に強いのも特徴です。

データを保存する仕組みは違っても、接続するインターフェイスやファイルシステムの互換性も保たれています。

市販されているSSDは2.5インチのHDDと同じシルエットのものが多いのですが、Macに搭載されているSSDはHDDとはまったく異なる形状をしています。前述のとおり、回転体を持たないSSDはその形も大きさも自由にできるため、MacBookなどの薄型軽量デザインの実現に大きく貢献しているのです。

SSDの容量あたりの価格はHDDより高いものの、転送速度はHDDより高速です。また、駆動部品がないため発熱や故障の危険性も少ないというメリットがあります。その一方で、SSDにはデータが突然消失してしまうといったイメージもありますが、それが本当かどうかについても解説します。

【アップル知りたいキーワード 】

Macの「フラッシュメモリ」はどんなもの?

SSDに使われているフラッシュメモリは、MacのメインメモリであるRAMとは構造や使い道が異なります。「不揮発性メモリ」とも呼ばれ、データの保存に適したメモリです。

 

フラッシュメモリとメインメモリ

メモリといえば「メインメモリ」を思い出すかもしれませんが、メインメモリとフラッシュメモリはデータをメモリ(記憶)する機能は同じですが、いつまで記憶できるかに違いがあります。メインメモリに使われるRAM(揮発性メモリ)は高速な反面、電源を切るとデータは消去されます。フラッシュメモリ(不揮発性メモリ)は電源を切ってもデータは保持されます。SSDではこのフラッシュメモリを使ってシステムやデータを保存領域として利用しています。

 

MacBookのSSDはオンボード

MacBookのような薄型のモデルでは、基盤そのものに直接フラッシュメモリのチップが実装されています。小型軽量なフラッシュメモリは駆動部品を持たず省電力、発熱性も低いのでファンレスの構造も実現できます。iPhoneやiPadも同様にフラッシュメモリが搭載されています。

 

SSD以外の身近なフラッシュメモリ

フラッシュメモリはSSDだけでなく、幅広い製品に使われています。たとえばUSBメモリやSDカード、コンパクトフラッシュなどの記録メディアにもフラッシュメモリが採用されています。SSDはSSDコントローラと呼ばれる装置で制御しているため、単体のフラッシュメモリよりも高速なデータ通信が可能です。

【ハードウェア図鑑】SSDの構造とデータ読み書きの仕組み

Macに搭載される記憶装置の1つであるSSDは、どのようにして高速なデータ通信を実現しているのでしょうか。フラッシュメモリのデータ保存/削除の仕組みとともに解説します。

 

MacBookプロ・レティナディスプレイモデルのSSD

現在のMacBookシリーズに搭載されるSSDは箱型形状のHDDとは異なり、取り外し可能なブレード型のものと、基盤に直接接続されて交換不可能なタイプがあります(非レティナのMacBookプロはHDDと共通の形状です)。いずれのSSDも、複数のフラッシュメモリのチップを搭載し、1つのストレージとして使用します。例えば、MacBookプロ・レティナディスプレイモデルに搭載されている128GBのフラッシュメモリには、16GBのフラッシュメモリが8つ使われていて、SSDコントローラがそれらを制御しています。SSDにはデータを一時記録するキャッシュメモリとして、揮発性メモリであるRAMも搭載しています。

 

高速なデータ通信の仕組み

SSDはHDDからの置換えを前提に誕生したため、SATA(シリアルATA)などHDDと共通のインターフェイスを持っていましたが、MacBookプロなどではPCIエクスプレス(PCIe)でMac本体に接続しています。複数のフラッシュメモリはSSDコントローラに接続され、このコントローラが各フラッシュメモリに対して並列にアクセスするよう指示をし、高速なデータ通信を可能にします。また、フラッシュメモリの寿命を延ばしたり、より高速なデータ通信を実現するため、キャッシュメモリを搭載しています。

 

メモリにデータを書き込む仕組み

フラッシュメモリチップの内部には格子状にワード線、ビット線があり、線の交差する位置に「メモリセル」があります。セル内にはフローティングゲートと呼ばれる絶縁膜で囲まれた場所があり、ここに電子が入っている状態/いない状態とを変化させ、データを記録します。上から電圧を与えることで電子を閉じ込め、下から電圧を与えると消去されますが、絶縁膜によって電源を落としてもその状態が保持できるのです。これが「不揮発性メモリ」と呼ばれる理由です。絶縁膜は書き込みの繰り返しで劣化し、いずれ使用できなくなります。

【もっと教えて】

フラッシュメモリは東芝に在籍していた舛岡富士雄氏が発明したもので、「カメラのフラッシュのようにデータの消去を一括で広範囲に行えるメモリ」に由来しています。読み出し専用メモリ(ROM)を書き換え可能にした「EEPROM」の一種で、フラッシュROMとも呼ばれます。

【もっと教えて】

メモリセルの絶縁膜は書き込みを繰り返すことで劣化します。絶縁膜の寿命は、1セルあたり数万回といわれています。SSDコントローラは、1つのセルに書き込みが集中しないよう「ウェアレベリング」という技術を用いて分散し、全体のメモリセルを均等に使うようにしています。