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【MacBookの知 Chapter 2】超明快!図解で紐解くMacBook進化の系譜(3)

著者: 氷川りそな

【MacBookの知 Chapter 2】超明快!図解で紐解くMacBook進化の系譜(3)

見えない部分にまで込められ続けた快適さへのこだわり

Innovation 4 内蔵ストレージ

本当の「快適さ」と「安心」を提供するためのただ1つの選択肢

ハードディスクはコンピュータの内蔵ストレージとして長年スタンダードな存在でしたが、今やその「弱点」がノートブックの泣きどころになっています。

その1つが「速度」です。ハードディスクの記憶容量は年々増え続けていますが、データをメモリやCPUに受け渡す転送速度は数年目立った向上がありません。結果、ハードディスクの速度がボトルネックになりマシン全体のパフォーマンスが伸び悩むという問題が起きています。

もう1つが「耐久性」です。ハードディスクは内部に「プラッタ」と呼ばれるレコードのような記録部分を持っており、ここに磁気ヘッドでデータを書き込みます。プラッタは外周部分が一番アクセス速度が速くなるため優先的に使われますが、そのぶん磨耗も早くなります。また、モータや軸といった可動部分の経年劣化も避けられません。「大容量・高速回転」を突き詰めていくと寿命が短くなるという問題を抱えているのです。

これらを解決するためにアップルが採用を始めたのがフラッシュストレージ(SSD)です。最大でハードディスクの10倍程度の転送速度を持つフラッシュストレージは、パフォーマンス面でのボトルネックを解消するのに十分な性能です。加えてハードディスクのような可動部分がないため劣化が遅いというメリットもあります。

「大切なデータを入れる場所だからこそ安心なものを」という視点で見れば、MacBookシリーズがフラッシュストレージを採用したのは自明ともいえます。

TOPICS

2008.01 MacBookエアで1.8インチSSDを採用

2010.10 MacBookエアの全モデルがフラッシュストレージに

2012.06 MacBookプロでもフラッシュストレージを採用

MacBookエアやMacBookプロ・レティナモデルでは当たり前になっているフラッシュストレージですが、初代MacBookエアでは上位モデルのみの搭載に限られ、しかも汎用型の1.8インチSSDを採用していました。

Innovation5 バッテリ

「モバイルの理想」を実現するために積み重ねられたテクノロジーの結晶

現在のMacBookエアなどは有に10時間を超える連続稼働時間を実現し、近年爆発的とも呼べる人気を誇っています。この長時間のバッテリライフを支える技術はどこにあるのでしょうか。

現行のMacBookエア13インチモデルには54Whのタイプが使われていますが、容量だけで見れば、実は初代モデルの1.5倍程度に過ぎません。にも関わらずこれほど長い駆動時間を実現できるようになったのは、光学式ドライブやハードディスクといった消費電力の大きなパーツの採用を止め、低電力のフラッシュストレージに絞り込んだこと、そして低電圧で動作するディスプレイやCPUを積極的に採用していることが挙げられるでしょう。

また、省電力技術はハードウェアだけではありません。Mac

Bookを動かすオペレーティングシステム「OS X」にはコンピュータへの命令系統をまとめて空き時間を作りCPUの使用率を減らす「タイマーコアレッシング」や、ウインドウの後ろに隠れているソフトの処理速度を下げる「App Nap」、表示されていないWEBページ上でのフラッシュプラグインを停止させる「サファリパワーセイバー」などソフトウェア技術による省エネルギーもふんだんに取り込まれています。

ハードウェアとソフトウェアの両面からムダを取り除き、高いエネルギー効率を実現する。これは一見当たり前のように思えるかもしれませんが、この両方を一社で作っているアップルだからこそ実現できるソリューションなのです。

TOPICS

2010.04 13インチMacBookプロが最大10時間駆動に(公称値)

2013.06 MacBookエアの公称値が12時間駆動に

2015.03 薄型のMacBookでも10時間の駆動を可能に

現行のMacBookエア13インチは12時間のバッテリ駆動、11インチでも9時間、MacBookも9時間に渡る長時間駆動が可能になっています。

Innovation 6 サイズ

使いやすさを損なうことなく軽快さへの最適解を追求

「より薄く、軽く」をノートブックに求めるのはモバイルユーザにとって当然で、軽くて薄いノートは他社からも販売されています。にも関わらずMacBookシリーズが高い人気を誇っているのは、MacBookが「(それ1台で完結できない)サブノートには真の需要はない」という哲学に基づいて設計されているからだといわれています。その視点で見てみると、サイズの小さい11インチのMacBookエアや新しいMacBookでも、キーボードやトラックパッドなど、操作の快適性に関わる部分はMacBookプロなどと同じサイズを維持していることがわかります。

では、MacBookはどうやってダウンサイジングしてきたのでしょうか。もっとも効果的だったものとしてはまず「ゼロスピンドル化」が挙げられます。2008年に発表されたMacBookエアは「これからは音楽や動画、ソフトといったすべてのコンテンツはインターネットで手に入る時代が来る」と早々に光学ドライブを撤廃。さらにその後、ハードディスクからフラッシュストレージへの移行も果たし、ボディの薄型化を進めてきました。

このほかにもディスプレイではバックライトをLEDへと切り替えたり、バッテリを自由な形状に変えられる「リチウムイオンポリマー」を採用するなど限りあるスペースをムダなく利用する工夫があります。こういった小さな積み重ねがMacBookを「妥協しないモバイルノート」にしている秘訣なのです。

TOPICS

2008.01 最厚部1.94cmのMacBookエアを発表

2012.06 光学式ドライブを排したMacBookプロを発表。

2015.03 最厚部1.31cmのMacBookを発表

驚愕の薄さと軽さは、パーツの1つ1つ、技術の1つ1つを極限までブラッシュアップすることで到達した結果です。この徹底ぶりこそ、MacBookシリーズが多くの人に支持される理由だといえます。