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数千の市販薬の中から「自分に合った薬」を選べる新Webサービス

著者: 朽木誠一郎

数千の市販薬の中から「自分に合った薬」を選べる新Webサービス

コロナ禍で薬の重要性は再認識されたが、実際に薬局やドラッグストアで薬を選ぶのは今もかなりややこしい。そんな生活者の困りごとを解消するサービスが誕生した。Webブラウザ上で選択を繰り返すことで、薬を絞り込めるのだ。便利なだけではなく、近年のセルフメディケーションや、ネット通販解禁の時流に乗った、注目のサービスだ。

「薬」はややこしい

この数年はかつてないほど「薬」が注目された。新型コロナウイルスへの対症療法として解熱鎮痛剤の需要が高騰。いざというときのためにと、品薄になった薬をドラッグストアで探し回ったという人もいるだろう。

しかし、薬はややこしい。そもそも医療機関で処方される医療用医薬品(処方薬)と、ドラッグストアで購入できる一般用医薬品(市販薬)の区別がついていない人も多いのではないか。

たとえば、コロナ禍で解熱鎮痛剤として話題になったカロナールは処方薬だが、その有効成分であるアセトアミノフェンが含まれている市販薬も多数ある。解熱鎮痛剤の成分としては、ほかにイブプロフェンやアスピリン、ロキソプロフェンなどが挙げられ、これらを単独で、あるいは複数使用して、「バファリン」や「セデス」「イブ」「ロキソニン」などのシリーズが製造・販売されているのだ。

また同じ「バファリン」シリーズでも、アセトアミノフェンのみのもの(小児用バファリンCⅡ)、イブプロフェンを加えたもの(バファリンプレミアム)、アスピリン主体のもの(バファリンA)があり、イブプロフェンやアスピリンにはそれぞれの副作用や禁忌(使ってはいけない人の条件)がある。あらためて整理しても、なんとややこしいことか。

不便なところには新しいサービスが生まれる。先述のようなことをいちいち考えずとも済むサービスが、このほど誕生した。それがウィルベース株式会社が開発・提供する生活者向け市販薬選定支援サービス「キュアベル(CureBell)」だ。どのようなシステムなのか、同社代表の田中裕樹氏に話を聞いた。

2016年12月設立のウィルベース株式会社。小売業・ヘルスケア関連企業のマーケティング・販促活動の支援、コンサルティングを行う。ヘルスケア商品選定支援ツール「Dカウンセラーneo」「CureBell」、販促DX支援システム「RetailForce」の開発・提供も手がける。[URL]https://www.willba se.co.jp

ウィルベース株式会社代表取締役社長・田中裕樹氏。

選択するだけで簡単絞り込み

ウィルベースによれば、市販薬は約1万2000品目あるという。ドラッグストアの店頭から、自分の症状や体質に合ったものを選び、逆に、合わないものを避けるのが難しいことは、この数字からも窺える。

ならばこそ店頭には薬剤師や登録販売者という専門資格を持った人たちがいて、私たちをサポートしてくれるわけだが、人材もまた有限。時に直面するのが、こうした人たちが不在にしており、「どれを買ったらいいかわからない」という状況だ。「相談したいときほどスタッフさんが見つからない」という経験は、一度や二度ではないだろう。

キュアベルが活躍するのは、まさにそんなシーンだ。キュアベルは市販薬のうち、利用頻度の高い数千から、薬の効能やユーザのこれまでの病気の既往をもとに、簡単かつ正確に「自分に合った市販薬」の検索ができる。また、「妊娠・授乳中でも服用できる」や「小児用」、「既往により服用できる薬が限られる場合」などの条件でもおすすめしてもらえるという。

具体的な使い方はこうだ。Webアプリであるキュアベルにアクセスし[お薬の種類で検索]ボタンを選択する。ほかにも[体の部位で検索][漢方薬を検索][商品名で検索]などが可能だ。

たとえば、かぜのような症状がある場合、薬の種類を選ぶボタンから[かぜ薬]を選択。すると、かぜの症状を選ぶチェックボックスが出現するので、[頭痛][鼻水][発熱]といったボタンを選んでから、「探す」ボタンをクリックしよう。

すると、画面に妊娠や小児、既往などの[検索除外条件]が出現するため、該当するものがあれば選択する。ここでは「こだわり条件」(眠くなる成分が入っていないなど)で絞り込みもできる。

こうして表示された薬の候補について、効能や特徴、価格などを比較し、興味がある薬の画像をクリックすると、服用方法や、さらなる詳細と、禁忌など注意事項が記載された添付文書を確認して、最終的に選ぶべき薬が残る、というわけだ。

時流を捉えたサービス

もともと、ウィルベースは薬局、ドラッグストアなどに対して、接客対応と市販薬選定をサポートするシステム「Dカウンセラーneo」を提供していた。薬がややこしいのはプロでも同じ。それをテクノロジーによりサポートしていたのだ。

このDカウンセラーneoは、同社によれば、薬局・ドラッグストア1000店以上、1000名以上の薬剤師や登録販売者等に利用されているという。キュアベルはそれを生活者用にアレンジしたものだ。長年、小売業のコンサルティングなどに従事してきた田中氏は、BtoCの事業を展開した経緯を、こう説明する。

「モノの売り方、買い方は、この10年、またコロナ禍を経て大きく変わりました。しかし、市販薬の売り方、買い方はほとんど変わっていません。かぜ薬だけでも市場には600種類があり、売るほうも買うほうも苦労しているのが実情。これを解消したいと考えたんです」

追い風は強い。もともと不必要とみられる医療機関の受診による医療資源の圧迫や医療費の増大が問題になっている日本。軽い体の不調には市販薬を利用して手当すること(セルフメディケーション)が世界的な潮流だが、近年は国の方針として、特定の市販薬購入分の医療費が控除されるなどの後押しがある。

たとえば、もともと健康な人がかぜを引いた場合、重症にならない限りは本来、病院を受診する必要はない。それどころか、近場の薬局やドラッグストアで市販薬を購入すれば、ある意味では「安い」「早い」回復ができる。

また、近年は医薬品のネット販売も解禁され、アマゾンの参入も話題になった。一方、相談する相手がいないネット販売ではなおのこと「どれを買ったらいいかわからない」となりがちだ。こうしたシーンにもキュアベルが活躍する、と田中氏は指摘する。

小売業のコンサルの経験があったからこそ、生活者と現場の担当者のリアルなニーズを汲んだサービス。BtoCであるがゆえにマネタイズの課題はあるが、それはどんなサービスでも同じなのは、2023年現在のツイッター(Twitter)が示しているとおりである。今後、社会のインフラになり得るか、期待を込めて注視していきたい。

薬局、ドラッグストアなどに対して、接客対応と市販薬の選定に用いる「Dカウンセラーneo」。症状や既往、嗜好に合った市販薬等の短時間での選定を支援する。 [URL]https://www.willbase.co.jp/service/dcounselor.html

2023年3月にリリースされた「CurBell」。生活者に向けて、市販薬の選定を支援するWebアプリ。ユーザは効能のほか、既往歴などで簡単かつ正確に検索が可能。効能や価格などで複数商品を簡単に比較できる。 [URL]https://curebell.jp

薬を適正に選ぶためのデータを、専門家とともに整備。薬の基本情報はもちろん、併用してはいけない薬の情報や、服用してはいけない人の情報も記載されている。こうした情報は専門家のレビューを受けて掲載されているもの。

効能や特徴で絞り込むと、おすすめの薬の候補が表示される。「効果・効能」「用法・用量」の項目から詳細を確認できるほか、実際に購入する際には添付文書の確認が必要。選定には今の売れ筋なども加味され、薬がレコメンドされる。

「CureBell」のココがすごい!

□数千の市販薬から「自分に合った薬」を簡単に絞り込んで選べる

□薬局・ドラッグストア1000店以上に導入されているシステムをベースに開発

□近年のセルフメディケーションやネット販売解禁の時流に乗った