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最大なんと2.4倍!さらに高速になった“美しいモンスター

最大なんと2.4倍!さらに高速になった“美しいモンスター

新モデルのポイント

●プロセッサが最新世代へと刷新

●グラフィックスもアップデート

●それ以外は主に2017年モデルを踏襲

●パフォーマンスの向上が大きな変更点

●Apple T2チップは非搭載

●価格は従来のまま据え置き

プロセッサの刷新

新しいiPadミニとiPadエアが発表された翌日、もうひとつのビックサプライズとして登場したのが、新しいiMacシリーズだ。思い起こせば、前モデルが発表されたのは2017年6月のこと。実に1年9カ月ぶりの新モデルの登場となる。

iMacはMacの代名詞ともいえるオールインワン型のデスクトップマシンで、はじめての1台からプロフェッショナル用途の1台まで、ユーザのあらゆるニーズをカバーするマシンだ。2017年12月から発売されている上位のiMacプロがワークステーションクラスのパフォーマンスを求める“限られたプロ”向けの最高峰デスクトップであるのに対し、iMacはいつの時代でも“すべての人”向けのマシンといえる。

2017年モデルからiMacの主力は、レティナ(Retina)ディスプレイを搭載した21・5インチの「iMacレティナ4K」と27インチの「iMacレティナ5K」になっている。21・5インチの“レティナではない”iMacも引き続きラインアップされているが、このモデルは今では数世代古い第7世代のインテルプロセッサを搭載しており、その12万800円という価格からも、性能や機能にはこだわらないがとにかく安価なデスクトップMacが欲しい人向けのエントリーマシンとなっている。もちろん、最新のmacOSモハベ(Mojave)が動き、今のMacがオファーする体験を問題なく味わえるが、今後数年以上使うことを想定するならば予算の許す限り、“レティナ”が選びどころだろう。今回のアップデートも、iMacレティナ4Kとレティナ5Kの刷新だ。

何が変わったの?

さて、新しいiMacでは何が変わったのか? 詳しくは次のページのスペック表を見ていただければ思うが、中でももっとも大きなチェンジは、プロセッサの刷新だ。

iMacレティナ5Kでは、第9世代/第8世代のインテルプロセッサを搭載し、iMacシリーズとしては初となる6コアが標準構成、最大8コアの搭載が可能となっている。プロセッサ速度が3.0GHz、3.1GHz、3.7GHzの3モデルが標準でラインアップされており、価格は19万8800円、22万800円、25万3800円(すべて税別)だ。

また、iMacレティナ4Kでは、第8世代のインテルプロセッサを搭載し、4コア(3.6GHz)または6コア(3.0GHz)が選べるようになっている。前者が14万2800円、後者が16万4800円(ともに税別)と、価格は前モデル据え置きのままだ。iMacレティナ5Kでは従来比最大2.4倍、iMacレティナ4Kでは最大60パーセントも高速な性能を発揮するとアップルは発表しており、写真編集や負荷の高いゲーム、音楽制作、さらには長編映画の制作まで、iMacで行う日常的な幅広い計算タスクで劇的なパフォーマンスの向上を実感できるだろう。

パフォーマンスの面では、グラフィックス(GPU)が底上げされ、描画性能が向上していることも大きなポイントだ。特にビデオ編集やゲームのデザインといったグラフィックスを多用する作業人にとって「ラデオン・プロ・ベガ(Radeon Pro Vega)グラフィックス」が、それぞれの上位モデルのCTOオプションとして用意されている点は朗報だろう。27インチiMacの描画性能は最大50パーセントまで向上するとアップルは発表している。

なお、プロセッサの変更に合わせる形でメインメモリは両モデルで、2666MHzのDDR4へと進化を遂げている(容量は変わらず8GBで、レティナ4Kは最大32GB、レティナ5Kは最大64GBまで拡張可能)。

新しくなったプロセッサ

Retina 5Kでは、第9世代のインテルプロセッサ(Coffee Lake Refresh-S)を、Retina 4Kでは第8世代の(Coffee Lake-S)を搭載している。

Radeon Pro Vega搭載可能

iMac Proにも搭載されているAMD社最新の「Vega」アーキテクチャを採用した「Radeon Pro Vega」シリーズをCTOで選択可能に。3Dコンテンツの開発、複雑なエフェクトを駆使したビデオ編集、高解像度ゲームのデザインといった作業に最適だ。photo?iFixit

よいところはそのまま

ここまでが、新しいiMacシリーズの主な刷新の内容で、プロセッサとグラフィックス以外の部分に関しては、前モデルを踏襲している。MacをMacたらしめる特徴の1つである美しいディスプレイは、最大1470万ピクセル、10億色、500ニトの輝度、広色域(P3)、非常に広い視野角を特徴とするレティナディスプレイ。ストレージは、レティナ4Kでは1TBのハードディスクドライブかフージョンドライブ(Fusion Drive)、レティナ5Kでは1TBか2TBのフージョンドライブを選択可能。デスクトップマシンとしての高い拡張性に関しては、4つのUSB3.0ポート、2つのサンダーボルト3(USB│C)ポート、SDXCカードスロット、ギガビットイーサネットポートなどが健在だ。ワイヤレス、オーディオ周りも従来同様で、これらの先進的な機能が、アルミニウムとガラスで作られたボディのエッジ部分がわずか5ミリの薄さの筐体に収められている。

新しいiMacは、プロセッサとグラフィックスがメインの変更に留まり、大規模なアップデートとは決していえないものの、そのベースは“すべてが新しくなった”ことで大きな刷新を遂げた2017年モデルである。2017年モデルからの買い換えには迷う人も多いだろうが、それ以前のモデルであるならば計り知れないほど進化を実感できるだろう。

なお、現行の多くのモデルで採用され、新iMacでも搭載が濃厚と観られていたシステムオンチップ「アップル T2セキュリティ」チップは搭載されていない。その理由については、T2がハードディスクドライブをサポートしていないからでは? とも推測されているが、アップルは現時点では詳細を発表していない。比較検討記事を含めて、4月27日発売の6月号ではiMacシリーズの詳報をお届けしたい。

27インチと21.5インチの2モデル

27インチ

21.5インチ

今回のアップデートは内部パフォーマンスの刷新がメインということもあり、27インチ/21.5インチともにハードウェアデザインに変更はなし。

インターフェイス

背面に、各種インターフェイスが搭載されているのは従来どおり。Thuderbolt 3はThunderbolt(最大40Gb/s)、USB3.1 Gen.2(最大10Gb/s)、DisplayPortに対応しており、別途Apple純正のアダプタを使うことでThunderbolt 2、HDMI、DVI、VGAに変換可能。

最新の体験を最新のマシンで

SPEC

用語解説

CTO

Configure To Orderの略。購入者からオーダーを受けて生産する、いわゆる「カスタムモデル」のこと。BTOとも呼ばれる。

GPU

Graphics Processing Unitの略。画像処理装置のことで、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)と比べて単純な計算を並列的に処理できるのが特徴だ。

Apple T2

Apple が開発した第 2 世代の Mac 用カスタムシリコン(SOC)。システム管理コントローラ、画像信号プロセッサ、オーディオコントローラ、SSD コントローラが統合されたチップで、これらのコントロールを司るだけでなく、Secure Enclave コプロセッサが組み込まれているので、セキュリティが一段と強化される。