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性能の差はどこに現れる? 新MacBookエア購入の決め手①

性能の差はどこに現れる? 新MacBookエア購入の決め手①

Design

ノートは「超軽量化」の時代へ サイズは決め手にならず

カラーの選択肢が追加

新MacBookエアのデザインを一言で表すとすれば、それは「モダン化」だろう。技術革新がめまぐるしいIT業界において、8年間同じデザインのまま販売されてきたという実績は、その基礎設計の優秀さからくる枯れた(安定した)デザインだったのは間違いない。

一足先に筐体デザインを更新させたほかのモデルと比較すると、旧モデルのMacBookエアはディスプレイベゼルが幅広く、キーボードもシザー構造のため厚みもある。特に同じ13インチのMacBookプロと比較した場合、果たしてどちらが「エア」の名を冠するのに相応しいのかと思わざるを得ないサイズの逆転感が指摘され続けていた。しかし今回のアップデートで、この課題が払拭された。

加えて、MacBookエアのアイデンティティでもある「奥から手前にかけて緩やかにシャープになっていくボディ」という伝統的な意匠が継承されたことにより、13インチシリーズにおいて最軽量の座に返り咲いた。さらに従来はシルバーのみだったボディには、カラーバリエーションを提供。サイズ、重量、カラーの選択肢という弱点を克服したこの新モデルには、触れるたびに円熟味を増す計算され尽くしたデザインセンスを感じるだろう。

精悍さを増したデザイン

新世代のMacBook Airを印象付けるのは、より精悍さを増したデザインだ。ベゼル幅のほとんどないRetinaディスプレイや超薄型キーボードを採用したことで、従来と同じディスプレイサイズを維持しながら約13%のサイズダウンを実現。比較するとその差は歴然だ。

大幅なサイズダウン

新MacBook Airは、旧モデルと比較してディスプレイサイズは同じものの、ボディ全体では大幅なコンパクト化に成功している。

薄さやサイズはほぼ同じ「軽量主義」ならMacBookを

かつて「薄型」「軽量」という言葉は、MacBook Airの魅力を表現するために用いられてきた。ところが、絶え間ない技術革新の恩恵もあり、あらゆるノートブックでも薄型化・軽量化が進化の過程で取り入れられた。MacBook Proのようなハイエンド製品でも、このスタイルにすでに移行している。

事実、フットプリント(設置面積)はディスプレイのサイズギリギリまで切り詰められ、詰められる幅はほぼないといえる物理的な限界に近づきつつある。この結果、13インチモデルで比較した場合には、新MacBook AirとMacBook Proは完全に同じサイズとなり、その優劣をこの視点で決めることは難しくなった。また、これは厚みに関しても同様で、仕様上で横並びに比べてみれば差異を見出せるものの、実際の差は最大で3mmにも満たない。カバンの中に収納することを考えた場合にも、決め手となるほどの違いではないだろう。

一方で差が出てくるのは重量だろうか。MacBook Airは前述のとおりフラットなボディではなく、やや傾斜を帯びた構造のため、総容積が少なくなる。これが搭載バッテリ容量にも影響し、Touch Bar非搭載のMacBook Proに比べると8%ほど小さく、120gほど軽くなっている。とはいえ軽さを徹底して重視するのであれば、さらに400gほど軽いMacBookを検討するべきだろう。

MacBook Proと同じフットプリント

極限までフットプリントを切り詰め続けたAppleエンジニアリングチームの努力によって、新MacBook Airと13インチMacBook Proは同等のサイズになった。今後この視点で比較検討するのであれば、約13%コンパクトなMacBookがターゲットになってくるだろう。

新MacBook Air

MacBook Pro(Touch Bar非搭載)

MacBook

上記3モデルを数値で比較すると、その差の少なさに改めて驚かされる。厚みに注目すると新MacBook Airがもっとも最厚部が大きいように見えるが、実際に13インチMacBook Proと比べると、その差はわずかに0.7mm。もはや人の目で気になるレベルではないだろう。

2色の新カラー登場で自分好みのコーディネートが可能

MacBook Airが歩みを止めている間に変わったトレンドがあるとすれば、それは「色を選ぶ」ということだろう。かつては無垢なアルミニウムであるシルバーボディがそのまま「Appleのノート」というブランドを象徴してきたが、近年ではスペースグレイやゴールドといったバリエーションを提供している。

これはiPhoneやApple Watchなどと共通のカラーテーマになっており、ユーザが自分好みにコーディネートすることができるように配慮されたもの。これこそがこの8年間でデジタルデバイスがどれだけ多くの人たちに普及し、市民権を得たのかがはっきりとわかる「トレンドの流れ」だろう。

今回新MacBook AirにMacBookと同じ3色のカラーモデルが用意されたのも、「MacBook Airはより多くの人に使ってもらう“コンシューマモデル”である」というコンセプトを継続した存在であることを意識しているに違いない。

スペースグレイとゴールドの仕上げが追加

ゴールド、スペースグレイ、そしてシルバーの3色展開となった新MacBook Air。iPhoneやiPad、Apple Watchと同じカラーを選択できるとようになったのも、トータルでAppleデバイスをコーディネートしたいユーザにとっては朗報だ。

Apple ロゴマークも統一へ

カラバリの変更に合わせて、ディスプレイ背面のAppleロゴも、従来のバックライトが透過するホワイトタイプからほかのノート型Macと同じメタルのロゴに意匠が統一されている。

同梱物には変化なし

同梱物には変化がなく、本体以外に30W USB-C電源アダプタとUSB-C充電ケーブル(2m)のが付属する。

Display

「美しい」「見やすい」は当たり前

より厳しい水準でディスプレイを評価

ここがスタートライン

ほかのモデルにはあって、MacBookエアになかったもの。その筆頭に挙げられてきたのが、レティナディスプレイだ。「網膜」を意味するその名前は、ディスプレイ上の画素(ドット)が人間の目で識別できる限界を超えるほどの高精細な解像度を持つことから命名された。2012年にMacBookプロに、2015年にはMacBookにも採用され、この流れから考えれば次は…と期待されたが、まさかこのタイミングまで引っ張られるとは誰が予想しただろうか。

とはいえ、これには事情がある。レティナディスプレイは、従来のものに比べればコストも、電気消費量も遥かに高い。安易に採用してしまえば、低価格・長時間バッテリをウリにしていたMacBookエアが失うものはあまりにも大きかった。

だが、そういった課題をクリアした今となっては話は別。最新のディスプレイ世代に追いついたことで、画面はクリアに、そしてより広い視野角を手に入れた。つまりMacBookエアはほかのモデルと同じ舞台に立ち、その真価が評価されるときを迎えたのである。

ディスプレイサイズの差

旧モデルと同様の13インチディスプレイを搭載した新MacBook Air。しかしながら、先述のとおりベゼル部分が50%薄くなったことで、ディスプレイの隅々までコンテンツを表示させることができるようになった。その一方で、現行のMacBook Proに搭載されている色温度を自動で調整する「True Tone」テクノロジーやsRGBよりも広色域を表示できる「P3ディスプレイ」には非対応。また、輝度は300ニトとMacBookや旧MacBook Airと同様だが、Retinaディスプレイの恩恵により、より鮮やかに美しくコンテンツを表示できるようになった。

MacBookとのベゼル比較

新MacBook Airのディスプレイベゼルは、旧モデルよりも50%細くなっている。これはMacBookよりもさらに細く、これまで以上にコンテンツに集中できるように設計されている。

正面以外から見てもきれいなまま

Retinaディスプレイを採用するにあたって、従来の「TN」から「IPS」へと液晶の駆動方式が変わった新MacBook Air(写真右)。旧モデル(写真左)と比べると、より高解像度になっただけでなく、左右では約8度、上下では約18度もの視野角が広がり、どこから見てもほぼ色の変化が見られなくなるなど大きな進化を遂げている。

ディスプレイ性能を測る3つのチェックポイント

新MacBook Airに採用されたディスプレイは、どれくらいの性能を持つのだろうか。その基準を測るにはさまざまな指標が存在するが、より実用性の高いポイントで評価するべきなのは間違いないだろう。そこで、今回はもっとも日常の恩恵が多いであろう「文字の読みやすさ」、撮影した写真やビデオの「色再現性」、そして「パネルの明るさ」という3つの要素をピックアップした。

これらはもちろん優秀に越したことはないが、一方でコストに大きく反映する部分でもある。つまり、MacBookファミリーをこの視点で評価することは、モデルごとに意図されたユーザ層を理解するための有用なベンチマークになるということだ。

(1)文字の読みやすさ

新旧のMacBook Airと比較するとその差は一目瞭然だが、約1.8倍の解像度を持つクオリティは印刷物のそれに匹敵するクオリティだ。そのクリアな解像度は目への負担も低く、性能以上に恩恵がある。一方でRetinaディスプレイを持つMacBookファミリー同士では、この部分では顕著な差を感じることはなかった。

(2)色の再現性

iPhone XSやXRに搭載されている最新鋭のカメラは、優れた色階調と豊かな色域持っており、これをディスプレイで忠実に再現するには高性能なパネルが欠かせない。これを100%カバーするには、MacBook Proが必要になる。そのほかの3モデルでは、新MacBook Airが若干ではあるが性能が向上していることが確認できた。

(3)パネルの明るさ

明るさは常に最大にして使うわけではないが、HDR(ハイダイナミックレンジ)動画を視聴する際などは、このスペックが重要になってくる。これも現状ではMacBook Proの性能が際立つが、新MacBook AirもIPS液晶に切り替わったことによって、旧モデルからかなり印象が良くなっていることがわかる。

Input Devices

一番触れる部分だからこそ機能性と利便性を大幅にアップデート

後発だからこその利点

MacBookエアが掲げた「薄くて軽い」という理念は、いまやノートブック全体が目指すべきスタンダードとなった。技術の向上も、性能面だけでなく、これを実現することが目標となった。その結果、この10年間で驚くべき進化を遂げている。ここまでくると、サイズ面で制約となるのは、ディスプレイのように小さくすることができない要素のみ。残るは厚さだが、キーボードやトラックパッドには「押した」というメカニズムが動作するスペースが不可欠だ。

だが、こういった部分においても匙を投げないのがアップルの技術力だ。キーボードのメカニズムは高さを必要とする「シザー」構造から「バタフライ」へとシフトすることで問題を解決。トラックパッドにはタップティックエンジンを組み込み、疑似的なクリック感が得られるテクノロジーに置き換えられた。

このような最先端のハードウェアテクノロジーを惜しみなく投入できるのは、最新機種の利点の1つ。加えて先に導入されているMacBookなどから得られたノウハウやフィードバックを反映して改良されているのも注目すべきポイントだ。

入力デバイスの違い

生まれ変わったMacBook Airも、ついに最新世代のバタフライキーボードと感圧タッチトラックパッドに移行した。さらに、新MacBook Airにはキーボード最上段にTouch IDを搭載。一見同じように感じるこういった入力デバイス群も、その細部に注目するとエンジニアたちの絶え間ない努力と工夫の結晶が垣間見えてくる。

トラックパッドの大きさ

新MacBook Airのトラックパッドは、筐体サイズの小さいMacBookよりは大きくなっているが、MacBook Proよりも若干小さいレイアウトに改修されている。ユーザフィードバックを反映して調整したのかもしれないが、結果として内部に搭載するバッテリ容量を確保することにも貢献しているようだ。

キーボードの進化に見るアップデートされた打ち心地

最新のMacBookファミリーに採用されているバタフライ構造のメカニズムは、旧来のシザー構造に比べて、押下に必要な上下のスペースを少なくすることで筐体の薄型化に貢献している。また、キー全体を支えることでシザー構造よりも安定したタイピングを提供できるようになったり、より大きなキーキャップを採用することも可能になるなど、新たな魅力もいくつか創出した。

バタフライキーボードは2015年にリニューアルされた12インチMacBookに初めて搭載されたが、その衝撃的なディティールに大きな反響を呼んだ。一方で、その薄さゆえに強度や打ち心地といった部分に関してはさまざまな意見が飛び交っているのも事実だ。だが、Appleも決して手を緩めることなく堅実にアップデートを続けており、その裏側のテクノロジーは世代ごとに確実に違いを見せている。新MacBook Airでは、そのAppleの努力がはっきりと確認できる。

MacBook Air(2018)- バタフライ構造(第3.1世代)

キーそのものはMacBook Proと同一スペックだが、ボディにつけられたごくわずかな傾斜によって指にかかる負担が低減。同じバタフライでもはっきりとわかるほどタイピングが快適になっている。

MacBook Air(非Retina) – シザー構造

現在販売されているモデルとしては、唯一にして最後の旧世代キーボードを搭載。よく言えば伝統的で安心感のあるキータッチだが、バタフライタイプと比較すると押下時の不安定さに気づかされる。

MacBook(2017) – バタフライ構造(第2世代)

バタフライキーボードをもっとも早く採用したモデルとして、その実績は長い。現在採用されている世代は、以前に比べより「押した感じ」が強化され、薄型のキーであるという一部の不満を大きく払拭している。

MacBook Pro(2018) – バタフライ構造(第3世代)

その薄さゆえに求めらるメカニズムのさらなる耐久性と、キータイピング時の静音化という2つの課題を大きく改善したのがこのタイプ。同時にキーの押し心地もチューニングされ、向上が図られている。

指先がセキュリティのアドバンテージになる

新MacBook Airに搭載されたキーボードには、Touch Barを搭載していないモデルとしては初めて指紋認証センサである「Touch ID」が搭載された。これによって指先だけで画面ロックの解除やログイン中のパスワードの入力、さらにはApple Payなどを使ってオンライン決済も行うことができる。しかし、この機能の最大の利点は「情報を第三者に見られない」ことにある。

パスワードにせよカード情報にせよ、これらの情報がもっとも無防備になるのは入力中だ。ましてや外出先で入力することになれば、そのリスクはさらに高まるが、Touch IDはこれらを守る強力なツールになる。それだけにモバイル環境で使うというスタイルを重視するには、今後ますます欠かせない機能になってくだろう。

各種購入もTouch IDで

Touch IDを使うことで、Mac Apple StoreのソフトやiTunes Storeの楽曲購入もスムースに行える。

キーボード最上部の比較

MacBook Air(Retina)

MacBook Air(非Retina)

新MacBook Airでは、キーボード最上段の右端にTouch IDが搭載された。なお、このTouch IDは電源のオン/オフも兼ねている。

ロック解除も指一本

Touch IDは後述するT2チップが採用されたことでより高速に、正確に認証できるようになり、使い勝手も向上。情報入力の手間を減らしながらセキュリティも高めてくれる一挙両得なこの技術は、使い慣れるほど手放せなくなる。iOSデバイスを愛用するユーザであれば、この恩恵は想像に難くないはずだ。