目次
- モンスターマシン・MacBook Proシリーズ。変容する価格戦略の背景
- M5 Pro/M5 Maxで刷新された、M5シリーズのコア設計思想
- M5 Max搭載MacBook Proをベンチ。驚異的なCPU、GPU、そしてローカルAI処理能力
- Studio Display XDRも同時にリリース。M5 Max搭載MacBook Proと相性最強?
- Thunderbolt 5対応ほかリッチな仕様。全Macユーザの“理想”と重なる外部ディスプレイ
- Studio Display XDRの活用要件。Macが搭載するチップに注意
- M5 Pro/M5 Max搭載MacBook Proが切り開く、MacBookシリーズの新たな地平
3月11日、AppleがM5 Pro/M5 Max搭載のMacBook Proを発売した。また同日、27インチの外付けディスプレイStudio Display、Studio Display XDRも発売されている。
本記事では、14インチのM5 Max搭載MacBook Pro、そしてStudio Display XDRの実機レビューをお届けしよう。パフォーマンスの真価を、多角的な視点から解き明かしたい。
モンスターマシン・MacBook Proシリーズ。変容する価格戦略の背景
筆者が試用したマシンは、14インチのM5 Max搭載MacBook Pro。GPUを標準の32コアから40コアへ強化し、メモリは128GB、ストレージは8TBへと増設されている。さらに、ディスプレイにはNano-Texture加工をカスタマイズ。オプションのほぼすべてを盛り込んだ仕様で、価格は111万8800円となる。
なお、オプションなしの標準構成モデルはM5 Pro搭載MacBook Proで36万9800円、M5 Max搭載MacBook Proで59万9800円だ。M4世代のモデルに比べると、M4 Pro→M5 Proで4万1000円、M4 Max→M5 Maxで7万1000円値上げされている。

特筆すべきは、Max/Proのチップを搭載するMacBook Proが、標準仕様のM5チップ搭載機の発表(2025年10月15日)から約5カ月遅れてリリースされたことだ。
2024年に発売されたM4の場合、M4シリーズを搭載するMacBook Proがすべて同時に出揃ったことを考えると、この「時間差」には深い意図が読み取れる。半導体部品の調達コストが高騰する中、先にM5搭載機で「価格据え置き」のイメージを定着させ、のちに続く上位モデルの値上げによる衝撃を緩和する狙いがあるのだろう。
ただ、2026年に入るとMacBook Proの標準構成が変更され、ストレージが512GBから1TBへと増量。また日本国内では、M5搭載MacBook Proも3万1000円の値上げが行われている。パソコン業界全体を取り巻く半導体事情の厳しさが、フラグシップモデルの価格設定にも影を落としている事実は無視できない。

M5 Pro/M5 Maxで刷新された、M5シリーズのコア設計思想
M5 MaxおよびM5 Proの真髄は、Mシリーズにおけるアーキテクチャの刷新にある。従来の「高性能コア+高効率コア」という2層構造から、M5シリーズは、3種類の異なる役割を持つコアで構成される体系に進化した。
M5:スーパーコア(従来の高性能コア)+高効率コア
M5 Pro/M5 Max:スーパーコア(従来の高性能コア)+新しい高性能コア
M5 Maxが搭載するCPUは合計18コア。それらはスーパーコアと新しい高性能コアで構成されている。
まず、6つの「スーパーコア」は従来の高性能コアに代わるもので、Appleが「世界最速のシングルスレッド性能」を謳う高い性能が特徴だ。もっとも負荷が高く、瞬発力を要する処理を担う。
そして12の「新しい高性能コア」。スーパーコアから派生した新設計のコアで、M5 Pro/M5 Maxが初採用となる。マルチスレッド性能を最大化するために最適化されており、プロフェッショナルが求める重いワークロードに対する高い処理性能を提供する。

M5 Max/M5 Proは、単にコア数を増やしただけではなく、従来の高効率コアの枠組みを超えてよりパフォーマンスと電力効率を兼ね備えるコアを12基並べることで、全体のスケーラビリティを確保した。
そして、2つのダイを1つのチップに接続するFusionアーキテクチャの採用により、M5 Proチップは前世代のM4 Proチップと比較してマルチスレッド性能が最大30%向上している。これほどの性能向上を実現しながら、高度な電力管理によって最大24時間という驚異的なバッテリ駆動時間を維持している点は、Appleシリコンの完成度の高さを物語っている。
M5 Max搭載MacBook Proをベンチ。驚異的なCPU、GPU、そしてローカルAI処理能力
M5 Max搭載MacBook Proのパフォーマンスを確認するため、「Geekbench 6」を用いたベンチマークテストを実施した。比較対象は、同日に発売された15インチのM5搭載MacBook Air。CPUとGPUがともに10コア、SSDは1TB、ユニファイドメモリは16GBという仕様だ。
CPU性能のベンチマーク
5回の計測平均をとった結果、M5 Max搭載MacBook Proのシングルコアスコアは3827前後となり、M5搭載MacBook Airの3910前後と拮抗した。しかし、マルチコアにおいては上位モデルの真価が発揮された。M5搭載MacBook Airの1万6470前後に対し、M5 Max搭載MacBook Proは2万8165前後。コア数の差がそのまま、約2倍のスコア差になって現れている。
GPU性能のベンチマーク
GPU性能についても5回の平均をとったところ、M5搭載MacBook Airの4万7566前後に対し、M5 Max搭載MacBook Proは14万7110前後。こちらはほぼ3倍の性能を記録した。
ローカルAIの処理能力
さらに注目すべきは、昨今のトレンドであるローカルAIの処理能力だ。Macに「Ollama」アプリをインストールして、Llama 3(80億パラメータ)を用いた回答生成速度を、やはり5回ずつ測って比較した。
その結果、M5搭載MacBook Airが約25トークン/秒であったのに対し、M5 Max搭載MacBook Proは約101トークン/秒という、4倍近い速度を叩き出した。プロンプト解析時の速度も、M5搭載MacBook Airの約7132トークン/秒に対して、M5 Max搭載MacBook Proは約1万4041トークン/秒と圧倒している。
メモリ帯域幅が600GB/s以上に達し、最大128GBのユニファイドメモリをサポートするM5 Maxは、大規模な言語モデル(LLM)をローカルで動かすユーザにとって、現在もっとも有力で、なおかつ快適な体験が得られる選択肢のひとつと言えるだろう。Thunderbolt 5による広帯域の外部接続対応も含め、ハードウェアとしての懐は極めて深いマシンだ。


Studio Display XDRも同時にリリース。M5 Max搭載MacBook Proと相性最強?
続いて、M5 Max/M5 Pro搭載のMacBook Proと同日に発売された外部ディスプレイの使用感もレポートしていこう。今回筆者は、新発売の2モデルの内、初採用となる27インチ5K Retina XDRディスプレイ搭載モデル「Studio Display XDR」を試用した。
価格は54万9800円をスタートラインとし、標準ガラスのほか、光の反射を抑えるNano-textureガラスのオプションも用意されている。筆者が試した機材はNano-textureガラス仕様で、傾きと高さを調整できるチルトスタンド付きのモデルだ。
Studio Display XDRの最大の特徴は、Appleの一部デバイスとの組み合わせにより、120Hzのリフレッシュレート(画面の高速書き換え)に対応した点だ。ディスプレイ側のリフレッシュレートを接続した機器のGPUが出力するフレームレートに合わせて動的に変化させる「アダプティブシンク」により、たとえば動画コンテンツや密度の高いグラフィックスを多用するゲームにおいて、極めて滑らかな映像表示を実現する。

Thunderbolt 5対応ほかリッチな仕様。全Macユーザの“理想”と重なる外部ディスプレイ
また、Thunderbolt 5接続をサポートしたことで、プロのワークフローにおける周辺機器の接続環境がよりシンプルに整理される点も見逃せない。12MPセンターフレームカメラ、スタジオグレードの集音ができるビームフォーミングマイク、そして空間オーディオ対応のリッチなスピーカ(オーディオ)システムといった、上位モデルにふさわしい機能も備える。
HDRコンテンツの表示はとても自然で発色が良く、コントラストの再現力にも富んでいる。やはりAppleによるStudio Displayの画質の安定感は抜群だ。もし、筆者のふところにいま自由に使える資金が潤沢にあれば、外出時にはM5 Max搭載MacBook Proで仕事をこなし、自宅オフィスのリファレンスディスプレイとしてStudio Display XDRを構え、仕事やエンターテインメント視聴に使い倒したい。
なお、Studio Display XDRと組み合わせるプロダクトの互換性には注意が必要だ。Studio Display XDRは、Appleシリコンを搭載したMacおよびiPadシリーズと幅広く接続可能だが、120Hzというハイフレームレート表示がフルに稼働する組み合わせが限られている。

Studio Display XDRの活用要件。Macが搭載するチップに注意
Studio Display XDRの性能をフルに引き出すには、M4 Pro/M4 Max以降、あるいは今回のM5シリーズといった比較的新しいAppleシリコンを搭載したモデルに、macOS Tahoe 26.3.1以降を導入した環境が必要だ。M1からM3までの各チップを搭載するMacでも接続自体はでき、主要な機能も動作するが、リフレッシュレートは最大60Hzに制限される。
iPadシリーズにおいても同様の制約がある。こちらはシンプルに、Studio Display XDRが120Hzでの表示に対応するのはM5搭載のiPad Proのみ。ほかのM4搭載モデルや旧世代のiPad Pro、iPad Airなどはすべて60Hzでの対応となる。

M5 Pro/M5 Max搭載MacBook Proが切り開く、MacBookシリーズの新たな地平
M5搭載MacBook Airの性能が、かつてのプロ向けマシンの領域に迫りつつある。しかし、それでもなおMacBook Proというフラグシップが必要な理由は明白だ。
プロフェッショナルが対峙するタスクは日々複雑化し、ワークロードは重さを増し続けている。それに応えるために、AppleはMacBook Proシリーズのベースラインスペックを引き上げ、さらに多彩なオプションを用意した。Proが新たな道を拓き、そこで培われたテクノロジーを下のモデルへとつないでいくというAppleの製品サイクルは、最新モデルのM5 Pro/M5 Max搭載MacBook Proにおいても健在だ。
今回筆者が試したM5 Max搭載MacBook Proは、価格的にも簡単には手が出せない最上級に近い仕様のモデルだった。しかし、MacBookシリーズの中でもっとも安定感の高いProシリーズが、多くのプロフェッショナルが求める快適なユーザ体験を届けてくれることは間違いないだろう。


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著者プロフィール
山本敦
オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。ITからオーディオ・ビジュアルまでスマート・エレクトロニクスの領域を多方面に幅広くカバーする。最先端の機器やサービスには自ら体当たりしながら触れて、魅力をわかりやすく伝えることがモットー。特にポータブルオーディオ製品には毎年300を超える新製品を試している。英語・仏語を活かし、海外のイベントにも年間多数取材。IT関連の商品企画・開発者へのインタビューもこなす。








