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Appleシリコンはモノリシッチダイからマルチダイへ。2026年は大きな転換期。2nm時代のWMCM採用は何を変えるのか?

著者: 今井隆

Appleシリコンはモノリシッチダイからマルチダイへ。2026年は大きな転換期。2nm時代のWMCM採用は何を変えるのか?

画像:Apple

カギとなるのは分割点の最適化、ダイ分割によるメリットとは

筆者がもしAppleシリコンがダイを2つに分割するとしたら、Intel風の表記で言うと「GPUを統合したCompute Tile」と「Platform Controler Tile」の2つだ。前者にはCPU、GPU、Neural Engineとファブリック、メモリコントローラが含まれる。

一方後者にはUSBやThunderbolt、PCIe、DSP、ISP、Network、Secure Enclove、Sensor HUBなどが含まれる。ただし、メモリコントローラのPHY(物理層)とカメラ周りの処理系(どちらもそこそこ広帯域だが場所を取る)をどちらに置くのが適切かは悩ましいところだ。

上はApple M1に統合された機能、下はApple A14 Bionicに統合された機能。いずれもシステム構成はほぼ共通しており、異なるのは主要機能の規模(スケール)だ。いずれの場合も、プロセッサユニット群とメモリシステムをプロセッサダイに、それ以外のインターフェイス群などをインターフェイスダイに分割するのが適切と推測される。
画像:Apple
上はApple M1に統合された機能、下はApple A14 Bionicに統合された機能。いずれもシステム構成はほぼ共通しており、異なるのは主要機能の規模(スケール)だ。どちらの場合も、プロセッサユニット群とメモリシステムをプロセッサダイに、それ以外のインターフェイス群などをインターフェイスダイに分割するのが適切と推測される。
画像上:Apple
画像下:Apple
Appleが2020年のM1リリース時に発表したUMA構造図。ここに記載されたCPU、GPU、Neural Engine、そしてFablicとCacheは同一ダイ(プロセッサダイ)に残す必要がある。これらのうちいずれかを分離すると、そこがボトルネックになることは想像に容易い。
クレジット:Apple
Appleが2020年のM1リリース時に発表したUMA構造図。ここに記載されたCPU、GPU、Neural Engine、そしてFablicとCacheは同一ダイ(プロセッサダイ)に残す必要がある。これらのうちいずれかを分離すると、そこがボトルネックになることは想像に容易い。
クレジット:Apple

シリコンをプロセッサ系とインターフェイス系に分離することで、前者をN2などの最先端プロセス、後者をN6などの成熟プロセスで製造することでダイコスト全体を削減し、パッケージの複雑さにともなうコストアップを相殺する。これによって最先端プロセスを用いるダイ面積を減らし、1枚のシリコンウエハーから採れるダイの数が増えて単価を下げることができる。

これを実際のAppleシリコンに当てはめて考えてみよう。iPhone 17シリーズに採用されているAppleシリコン、A19とA19 Proは実はダイが異なる(機能無効化による同一ダイの使い回しではない)。A19 ProはA19よりもGPUコアが1個多く、さらにCPUのLLC(Last Level Cache)容量が2倍ある。このためA19 ProのダイサイズはA19よりも約20%大きい。つまり、Appleは現時点においても、機能がほぼ同一ながら性能が異なる2種類のシリコンを作り分けているのだ。

ダイ分離によってプロセッサダイを2種類作り、インターフェイスダイは共用する。しかも最先端プロセスのプロセッサダイを今以上に小型化できるので、コストメリットが大きい。また、インタフェイスダイは複数世代のiPhoneで使い回せる可能性が高いのもメリットだ。さらに、機能が物理的に分離されるため、設計の難易度やデバックに要する時間も低減される。Appleにとっては、この点がもっともWMCMへの投資効果が高い可能性がある。

左が現在のAシリーズ、右がWMCMを採用した場合の構造図。iPhoneに採用されるAシリーズAppleシリコンでは、パッケージ全体の構造は同じながら、シリコンがプロセッサダイ(Processor Die)とインターフェースダイ(I/O Die)に分割され、両者間は高密度RDLで接続されるだろう。これによって最先端プロセスを使うプロセッサダイの面積を減らすことができる。
左が現在のAシリーズ、右がWMCMを採用した場合の構造図。iPhoneに採用されるAシリーズAppleシリコンでは、パッケージ全体の構造は同じながら、シリコンがプロセッサダイ(Processor Die)とインターフェースダイ(I/O Die)に分割され、両者間は高密度RDLで接続されるだろう。これによって最先端プロセスを使うプロセッサダイの面積を減らすことができる。

これはMacやiPadに搭載されるMシリーズも同様だ。大きくなり続けるダイサイズを分割することで、最先端プロセスを要求するプロセッサダイを縮小することでコストを低減し、歩留まりを向上させることができる。

左が現在のMシリーズ、右がWMCMを採用した場合の構造図。MシリーズもAシリーズと同様に、プロセッサダイとインターフェースダイに分割できる。そのメリットはダイサイズの大きいProやMaxではより顕著になる。ちなみにプロセッサダイとインターフェースダイのすき間は実際にはごく僅かだが、図ではわかりやすいように離している。
左が現在のMシリーズ、右がWMCMを採用した場合の構造図。MシリーズもAシリーズと同様に、プロセッサダイとインターフェイスダイに分割できる。そのメリットはダイサイズの大きいProやMaxではより顕著になる。ちなみにプロセッサダイとインターフェイスダイのすき間は実際にはごく僅かだが、図ではわかりやすいように離している。

さらに、インターフェイスダイは、MacBookシリーズのようなノート型と、Mac miniやMac Studioのようなデスクトップ型の2種類を作ることで、それぞれのMacが求める外部仕様に最適化しつつ、複数世代で使い回すことが可能になるのだ。

WMCMを使えばプロセッサダイとインターフェースダイの組み合わせによって、さまざまなチップバリエーションが実現できる。例えば、左から「MシリーズのプロセッサとiPhone用のI/Oを組み合わせたiPad専用チップ」「AシリーズのプロセッサとMacBook用のI/Oを組み合わせたエントリーMac向けのチップ」「M Proプロセッサとデスクトップ用I/Oを組み合わせた高性能チップ」、「M Maxプロセッサとデスクトップ用I/Oを2個を組み合わせた拡張性に優れたハイエンドチップ」といった具合だ。さらに従来には無かった組み合わせで新たなカテゴリーの製品を産み出すこともできる。
WMCMを使えばプロセッサダイとインターフェースダイの組み合わせによって、さまざまなチップバリエーションが実現できる。たとえば、左から「MシリーズのプロセッサとiPhone用のI/Oを組み合わせたiPad専用チップ」「AシリーズのプロセッサとMacBook用のI/Oを組み合わせたエントリーMac向けのチップ」「M Proプロセッサとデスクトップ用I/Oを組み合わせた高性能チップ」、「M Maxプロセッサとデスクトップ用I/Oを2個を組み合わせた拡張性に優れたハイエンドチップ」といった具合だ。さらに従来には無かった組み合わせで新たなカテゴリの製品を産み出すこともできる。

実は、Appleはすでに“WMCM的アプローチ”を試していた。最後にその伏線を振り返ってみたい。

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