サポートから提示されたのは「Apple Account」の作り直し
サポートの担当者は、Apple Accountが凍結された理由の説明を拒否した。そこで、アディソンさんはエスカレーションを要求した。
エスカレーションとは、ECR(Executive Customer Relations)に代わってもらうというもので、わかりやすく言えば「上司に代わってください」というやつだ。担当者が凍結の理由は説明できないと言っている以上、ラチが開かない。より高い意思決定ができる人に代わってもらうのは、ユーザーとして当然の権利だ。
しかし、担当者は「エスカレーションをしても別の結果が出ることはない」と拒否した。
そして、このApple Accountを諦め、新しいApple Accountを作成することをすすめてきた。しかし、それはiCloud上に保存されている写真や書類、そしてApplePayにチャージされている金銭を放棄することを意味する。さらに、アディソンさんはAppleのデベロッパ登録もしており、Apple Accountでほかの開発者とつながっている。Apple Accountを諦めるということは、それらもすべて失うということだ。Apple Accountが変わったことを連絡しようにも、「連絡先」アプリにアクセスできないのでどうしようもない。
幸いだったのが、アディソンさんは“普通の人”ではなかったということだ。30年近くAppleの標準開発言語であるObjective-CとSwiftを使ってさまざまな開発を行い、解説書も執筆している。開発界隈では有名な人だったのだ。そのこともあって、アディソンさんの顛末はSNS上で拡散され、ニュースメディアも取り上げることになった。
そうこうしている内、AppleのECRの担当者から連絡が入ったという。そして事態は好転。現在もApple Accountが復活したという報告はないが、良い方向に向かって話が進んでいるようだ。
Apple Accountが凍結した原因は? スクラッチシールを偽装する詐欺手口か
ところで、アディソンさんの身に何が起きたのだろうか。小売店でApple Gift Cardを購入し、そのコードを入力したら不正だと言われ、Apple Accountが凍結した。
実際に何が起きたかは、Appleの説明を待たなければならない。しかし、多くの人は次のような詐欺の手口を予想している。
Apple Gift Cardは、コンビニなどさまざまな小売店で販売されている。これを万引きしても使えないことは、よく知られているだろう。購入したあと、レジでアクティベーションしてもらわないと、そのギフトカードが有効にならないからだ。
だが今回の手口の場合、犯人はそれを承知で大量のApple Gift Cardを万引きしたと考えられている。万引きしたApple Gift Cardのスクラッチシールを剥がし、コードをメモ。そして上から偽のスクラッチシールを貼り直し、販売店の棚に戻すのだ。
その後、犯人はAppleの公式サイトでApple Gift Cardの残高照会を繰り返す。そうとは知らず、Apple Gift Cardを買い、レジでお金を払い、アクティベーションする人が現れるまで。
Apple Gift Cardのアクティベーションを待ち、かすめ取る
Appleのサイトでは、Apple Gift Cardがアクティベーションされる前だと「無効」、アクティベーションされると残高が表示される。犯人は、それが切り替わる瞬間をモニタリングしているわけだ。
小売店でApple Gift Cardが購入され、その購入者がコードを入力する前に、犯人はiPhoneやMac、アクセサリを購入。それを転売して現金化する。本来の購入者があとからコードを入れても、「使用済み」と表示されて有効にならないというわけだ。
問題は、Apple Gift Cardのコードを管理しているAppleの視点からは、犯人と本当の購入者の区別がつかないことだ。コードで管理する側の視点だと、アクティベート前のApple Gift Cardの残高紹介を何度も繰り返す時点で怪しい。また、アクティベートしたと思ったらすぐに登録し、現金化しやすい商品を購入するのも怪しい。さらに、使用済みのコードを入力して「登録できない!」と苦情を入れてくる。とにかく怪しい人に映るのだ。
当然だが、怪しいかどうかを人間が監視しているわけではなく、アルゴリズムによる自動判断になる。このアルゴリズムがApple Gift Cardの不正利用の可能性が非常に高いと判断し、保全のためにApple Accountを凍結する。サポート担当者がこの経緯を調べ、凍結解除するのは非常に面倒な手続きが必要になるはずだ。
では、個人でできる対策はないものだろうか。



