機を見て起業した印刷の専門家
「Aldus PageMaker」は、1985年にアメリカのAldus社(後にAdobeが買収)からリリースされ、商業的に成功した世界初のデスクトップパブリッシング(DTP)アプリだった。
Aldusの名は、15世紀のイタリア ルネサンス期の印刷業者兼出版人で、イタリック体やポケットサイズの書籍を考案したといわれるアルドゥス・マヌティウスに由来している。
自社にその名をつけた創立者のポール・ブレイナードは、元々、新聞社向けの編集システムや印刷ソフトウェアを開発していた会社の社員であり、AppleがMacintoshとレーザプリンタの「LaserWriter」、そして、Adobeがページ記述言語のPostScriptをリリースしたことで、一般ユーザでも出版物を作れる環境が整ったと考え、Aldus社を起業したのである。
PageMakerの最大の特徴は、GUI(グラフィカルユーザインターフェイス)と見たままが印刷される「WYSIWYG(What You See Is What You Get)」のメリットを最大限に活かして、商業印刷並みのページレイアウトを直感的に行えるという点にあった。
Apple純正のワープロソフトである「MacWrite」でも、ある程度は文章と図版のレイアウトをWYSIWYG環境でできたが、商業印刷で求められる段組や、雑誌・チラシに見られる複雑なページ構成には対応していなかった。
ブレイナードは、自身の専門知識をPageMakerに注ぎ込み、印刷物を内製すれば、外注費を減らして機密も守れると企業に売り込んだのだった。
高度なレイアウトとプロ仕様の印刷
PageMakerでは、テキストや画像を独立したフレームとして扱い、それらを自由な位置に配置できるようにすることで、MacWriteのようなワープロでは対応できない高度なレイアウトを可能としていた。そのため、単に文章の中に図があるのではなく、チラシやカタログのようにデザインを優先したページを作ることができたのである。
また、AdobeのPostScriptをサポートしたことで、プロレベルの高精度な出力が可能となり、Macが「クリエイティブなプロ向けのツール」としての地位を確立するうえでも大きな役割を果たした。
こうして、PageMakerは企業だけでなく、教育機関や小規模な出版事業者にも広まり、DTPという新たな市場を生み出していった。
冒頭のとおり、Aldusは後にAdobeに吸収され、PageMakerも「Adobe InDesign」に取って代わられたものの、“DTPのパイオニア”としてのPageMakerの意義は、決して失われるものではないのである。
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著者プロフィール
大谷和利
1958年東京都生まれ。テクノロジーライター、私設アップル・エバンジェリスト、神保町AssistOn(www.assiston.co.jp)取締役。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツへのインタビューを含むコンピュータ専門誌への執筆をはじめ、企業のデザイン部門の取材、製品企画のコンサルティングを行っている。









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