業務用パソコンにMacを選べるようにすると、実際にどれほどの利益が生まれるのでしょうか。「Macは高い」「管理が難しい」といった印象から、導入をためらう企業は少なくありません。しかし、第三者調査機関による実証データを見れば、その評価は変わるかもしれません。
本記事では、Forrester Consulting社による調査結果で発表された、「従業員選択制でMacを導入した場合に得られる高い投資対効果」について紹介します。
業務用パソコンにMacを導入。価格、管理のコストが高い? 先入観を覆す実証データも
企業のIT投資は、「いかにコストを抑えるか」という視点で語られがちです。しかし、いま本当に問われているのは「生産性」や「人材価値」をどこまで高められるか。その選択肢の1つとして、業務用パソコンの“従業員選択制(Employee Choice)”を採用し、従業員にMacを選べる環境を提供する企業が日本国内でも増えています。
Macは高価、管理が大変、業務に不向き。そんな先入観とは裏腹に、実際の導入企業からは、業務効率の向上やサポートコストの削減をはじめとする、さまざまな効果が報告されています。
その中でも、特に参考になるのが、第三者調査機関であるForrester Consulting社がAppleの依頼により実施したTotal Economic Impact(TEI)調査(2024年4月)です。本調査の結果は、レポート「ビジネス向けApple MacのTotal Economic Impact」として公開されており、日本語でも閲覧できます。

ForresterによるTEI調査の概要。業務用パソコンにMacを求める声は増加傾向
このレポートは、Mac導入の意思決定に関わった9社11名の意思決定者に加え、ハードウェア担当の意思決定者242名、Mac利用経験を持つエンドユーザ53名へのインタビュー調査をもとにまとめられています。経営判断から運用、現場利用まで、複数の立場からの意見を収集している点が特徴です。
インタビュー参加者によると、Mac導入以前は、非効率なデバイスの初期設定やセットアップ、最適とは言えないセキュリティ体制、ユーザ体験の悪さといった課題に直面していました。また、Macを業務に利用する従業員は少数にとどまっていたものの、利用を希望する声は年々増加していたという背景もあります。
「業務用パソコンはWindows PCが標準で、Macはデザイナーや開発者など一部の職種に限られる」。こういった状況は日本でも一般的です。また、現在も同様の運用を続ける企業は少なくありません。しかし、iPhoneやiPadの普及を受けてMacの人気は年々高まっています。それゆえ、学生時代や前職でMacに触れる機会が生まれ、「Macのほうが業務効率が高いから使いたい」と希望する従業員が徐々に増えている点は共通しています。
こうした状況を受け、業務用パソコンの従業員選択制を採用したところ、インタビュー参加者の企業では相当数の従業員がMacを選択したと言います。その結果、企業全体のセキュリティ水準やITチームの業務効率が向上。同時に、Macに切り替えた従業員は、パフォーマンスの向上やバッテリ持続時間の改善、信頼性の向上といった恩恵を享受したと報告されています。

Macを導入したことによる「総経済効果(TEI)」は? TEIの定義とモデル組織の条件
このような回答をもとに、Forrester Consulting社は、特定のモデル組織にMacを導入した場合、どれほどの総経済効果(TEI:Total Economic Impact)が得られるのかを試算しています。
ここで言うTEIとは、Forrester Consulting社が提唱する評価手法で、企業が特定の製品やサービスを道入した際の定量的・定性的な効果を総合的に評価するためのフレームワークです。具体的には、導入によって得られる利益(生産性向上、運用コスト削減、リスク低減など)と導入・運用にかかるコストを比較し、投資対効果(ROI)を明らかにしています。
その試算にあたっては一定の条件を想定したモデル組織が設定されており、主な前提条件は以下のとおりです。
モデル組織の前提条件
・北米に拠点を構え、数十億ドル規模のコンシューマ事業を展開するグローバル企業。
・従業員数5万人、オフィス勤務。
・大半の従業員にはWindows PCが支給されていた。
・役割や業務内容に応じて一部の従業員はMacの使用が許されていた。
・Appleデバイスの専門知識を有する専属スタッフはいない。
・多くの従業員がiOSデバイスも業務で使用している。
このモデル企業では4年間の耐用年数が経過したタイミングでデバイス更新を実施。役割や職務に応じて求められる性能要件の範囲で、MacやWindows PCなど複数の選択肢から選べるようにしました。
その結果、導入初年度は対象従業員1万2500人のうち30%(3750台)。2年目は35%(4375台)。3年目以降は40%(5000台)がMacを選択。最初の3年間で導入されたデバイスの合計は、Macが1万3125台、Windows PCが2万4375台となります。
「総経済効果」の試算結果。70億円分の生産性向上などの経済的メリットあり
こうした前提のもとで算出された、5年間の定量的な利益は以下のとおりです。

①業務用パソコンのサポート・管理コストが約3分の1に削減(約11億円)
Macは他社製デバイスよりも効率的に初期設定やセットアップ、更新を行えるうえ、保守・管理コストが低く、セキュリティインシデントの発生件数も少ない。 そのためデバイス1台当たりの年間サポートチケット数が60%減少し、解決までのコストも低下。
さらに、ITスタッフの管理時間が減るため、 1人あたりが管理できるデバイスの数は2倍となり、累積1万3125台のMacを導入した結果、 5年間で700万ドル(約11億円)削減効果が見込まれる。
②ハードウェア、ソフトウェア、エネルギーのコストが削減(約32億円)
Macを導入することで、Windows PCならば従業員に支給したであろうコストを回避。たとえば、MacはOSの追加ライセンス購入が不要で、高いセキュリティレベルを確保するためのセキュリティ関連のアプリケーションも最小限で済む。また、 消費電力はWindows PCよりも56%少なく、これらを合算すると5年間で約2100万ドル(約32億円)のコスト低減につながる。
③データ侵害リスクが最大90%低減(約8000万円)
Appleはデバイスの設計段階からセキュリティを重視しており、 Macには強力なセキュリティ機能が組み込まれている。その結果、外部・内部要因による情報漏洩リスクは15%、 盗難・紛失による情報漏洩のリスクは90%低下。金額換算で約53万ドル(約8000万円)の効果がある。
④従業員の生産性が3.5%向上(約70億円)
Macを選択した従業員は、起動や更新の待ち時間を月45分削減し、問題発生時の調査・解決待ち時間も55分短縮された。処理速度やアプリケーションの信頼性、直感的な操作性、バッテリ持続時間の長さが、エンゲージメントと生産性の向上につながり、約4600万ドル(約70億円)の価値を生む。
⑤デバイスの残存価値が3倍に(約7500万円)
4年後の残存価値は、Windows PCが平均10%であるのに対し、MacBook Airは30%を維持。5年目に3750台のMacを廃止した場合、残存価額は約49.8万ドル(約7500万円)に達する。
投資対効果は186%。Mac1台が、5年で547ドルもの総所有コストを削減する可能性
TEIの試算結果から見えてくるのは、Mac導入の効果が単なる「端末の置き換え」にとどまらず、企業全体のコスト構造や生産性、セキュリティ体制にまで及んでいる点です。特に注目すべきなのは、端末価格だけを見ると高価に思われがちなMacが、運用・管理コストやサポート負荷の低減、セキュリティリスクの抑制といった側面で、大きな経済的メリットを生んでいることです。
また、生産性向上による効果が金額換算でもっとも大きいことから、業務用パソコンの選択が従業員の働き方に直結しているとわかります。さらに、従業員が使いやすいと感じる業務用パソコンを選べる環境は、業務効率の改善にとどまりません。満足度や定着率の向上にも寄与し、人材獲得の面でも大きな効果を発揮する可能性があります。
こうした観点から見ると、「Macは高い」「管理が難しい」といった従来のイメージだけで導入を躊躇するのではなく、導入後の運用や中長期的な効果まで含めた総合的な評価が重要と言えるでしょう。レポートでは、これらを総合した結果として、5年間に配備されるMac1台あたりで期待可能なTCO(総所有コスト)の削減額は547ドル(約8万2000円)。ROIは186%と結論付けています。
ROIは業種や投資規模、また何を効果・費用と定義するかによって大きく変動します。そのため一概には言えませんが、186%という数値は、投じたコストに対して約2倍近い価値を生み出したことを意味し、企業のIT投資として見ても極めて高水準です。業務用パソコンの選択肢にMacを加えることが、コストではなく「利益を生む投資」であることを示す、強いエビデンスだと言えるでしょう。Macの企業導入や従業員選択制に関心のある方は、ぜひ本調査レポートを一読してみてください。

Macの導入効果を最大化するための「基礎知識」を1冊に
記事内で紹介した「高いセキュリティ」や「管理コストの削減」、そして「生産性向上」といったメリットを享受するためには、単に端末を購入するだけでなく、Appleが提供する法人・文教向けプログラムを正しく理解し、活用することが不可欠です。
Apple Business Manager(ABM)やApple School Manager(ASM)、管理対象Apple Account…。これらがなぜ必要なのか、どう連携させるべきなのか、正しく把握できていますでしょうか?
ダイワボウ情報システムが提供する資料「Apple法人・文教プログラム活用の手引き」では、Apple製品を組織導入するうえで必須となるこれら各種プログラムの概要から、登録・活用方法までを初心者の方にもわかりやすく解説しています。
「Mac導入の基本をしっかり押さえておきたい」というご担当者様は、ぜひダウンロードしてご活用ください。

おすすめの記事
著者プロフィール
水川歩
1977年生まれ。編集者として勤め上げ、2021年からフリーランスに。"IT"をメインに活動しているが、プライベートはテクノロジーから離れ、釣りやキャンプ、登山など、自然に浸るアウトドアライフを送る。







