マルチフォントの表現力
今までの記事では、ペイントツール「MacPaint」とドローツール「MacDraw」をそれぞれ取り上げた。すると、当然の流れとして、今回はワードプロセッサ「MacWrite」の出番である。この3本の純正アプリは、まだサードパーティ製のソフトウェア資産が1本もなかった初代Macintoshを買ってもらうための消費者に対する説得材料であり、GUIベースのアプリケーションの姿を示すための開発者に対する“手本”でもあった。
ワードプロセッサは書かれた内容が重要で、シンプルなテキスト表示と編集、保存ができれば良いと思われていた時代に、MacWriteは文書としての表現力を重視していた。そして、ごく当たり前のようにマルチフォントをマルチサイズで使うことができた。そのため、チラシや雑誌のページのように、タイトルや見出し、重要な箇所などを強調したり印象づけられるようになり、MacPaintやMacDrawと同じく、画面で見たままをプリントできる「WYSIWYG」の仕様によって、編集結果をそのまま印刷物にすることが可能となった。
そのレイアウト機能はごくベーシックなものに過ぎなかったが、それでも開発者たちを大いに刺激し、後の「Micorosoft Word」やDTPソフトの誕生につながったことは間違いない。
魔法のような編集機能
マルチフォントの表現力と並んで、ユーザを驚かせたのは、マウスで範囲指定して行うコピー(あるいはカット)&ペーストによる編集機能だ。
従来のキャラクターベースのシステムでは、まず範囲指定モードに切り替え、キーボードでカーソルを動かして始点と終点の文字を決め、コピーやカット処理を行ったうえで、再びカーソルを動かして位置を決め、ペーストするといった煩雑な作業が必要だった。
しかしMacWriteでは、当時から特定のモードに入ることなく、マウスボタンを押しながらテキストをなぞるだけで範囲指定ができ、コピーまたはカットコマンドを選んで他の場所をクリックしてペーストコマンドを選択するだけで済んだ。
しかも、MacPaintやMacDrawのような別のアプリでコピーされたグラフィックスであってもテキストと同様にペーストでき、さらにサイズや縦横比を変えられることは、初めて体験するユーザには魔法のように思えた。
実は、スティーブ・ジョブズとMacの開発チームがMacWrite(とMacPaint)をはじめて公開デモンストレーションしたときの貴重な映像(A https://youtu.be/mqQJ-VnJ2uc)がYouTube上に残っている。このときの会場の反応を見れば、これらのアプリがいかに画期的だったかがわかるはずだ。
※この記事は『Mac Fan』2024年11月号に掲載されたものです。
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著者プロフィール
大谷和利
1958年東京都生まれ。テクノロジーライター、私設アップル・エバンジェリスト、神保町AssistOn(www.assiston.co.jp)取締役。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツへのインタビューを含むコンピュータ専門誌への執筆をはじめ、企業のデザイン部門の取材、製品企画のコンサルティングを行っている。









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