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目から鱗が落ちた「MacPaint」。画像生成AI並みのインパクトを感じた画期的ペイントツール

著者: 大谷和利

目から鱗が落ちた「MacPaint」。画像生成AI並みのインパクトを感じた画期的ペイントツール

40年前の革新。ペイントツール「MacPaint」

新たに始まった本記事「Mac Appビギンズ」では、これまでのMacの名機を扱ってきた「Macintoshビギンズ」の続編的に、過去のMac用アプリの中から傑作と思えるものや、強く印象に残っているものを取り上げて紹介していく。

その最初の1本は、やはりこれなしにはMacのアプリは語れない、ペイントツール「MacPaint」を選んだ。今では自分も含めて、画像生成AIがプロンプトから作り出すイメージに驚かされるが、1984年にデビューした初代MacintoshにバンドルされていたMacPaintは、当時を振り返ると、それと同じほどのインパクトがあったといえる。

それまでのGUIベースではないパーソナルコンピュータで絵を描くには、キーボードのカーソルキーを使って画面内の十字カーソルを動かしながら、点を打ったり線を引いたりする必要があり、筆者も自分用あるいは雑誌の記事のために、そういうツールをプログラミングしていた。しかし、実際にMacPaintを見て操作したとき、少なくとも個人的には、ツールを自作するより優れたツールを使って何かを作る時代が来たことを知ったのである。




Appleの今に続く「原型を作る」精神

今ではごく当たり前のことだが、MacPaintでは、ツールパレットから鉛筆や消しゴムのアイコンを選ぶと、ポインタもその形になって絵を描けるだけでなく、はじめからマウスとポインタの動きの一体感も驚異的だった。

一方で、初代Macの画面はモノクロ9インチで512×348ピクセルの解像度しかなく、その程度のビットマップイメージでも当時は容量の大きなデータだったため、MacPaintはマルチウィンドウではなく、固定された枠内に描画することで消費するRAMを抑えていた。ところが、その枠内でハンドアイコンを使ってイメージを動かすと、隠れていた白紙部分が表示され、実際にはA4サイズまでの絵を仕上げることができた。とはいえ、そのたびに、わずか400KBのフロッピーディスクとの間で、仮保存や読み込みが発生したため、見える範囲内で作業するほうがストレスはなかった。

マルチフォントや塗りつぶしパターンの編集、「ファットビット」と呼ばれる拡大描画、自由曲線で領域を囲ってコピーや移動などができる「ラッソ」など、少ないメモリの中で最大限の機能性を盛り込んでいたことには、改めて驚かされる。Appleの「原型を作る」精神は、まさにこのときすでに発揮されていたのだ。

ちなみに、ブラウザ上でエミュレートして再現できるMacPaintシミュレータがあるので、ぜひ触って当時の環境に思いを馳せていただきたい。

※この記事は『Mac Fan』2024年7月号に掲載されたものです。

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著者プロフィール

大谷和利

大谷和利

1958年東京都生まれ。テクノロジーライター、私設アップル・エバンジェリスト、神保町AssistOn(www.assiston.co.jp)取締役。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツへのインタビューを含むコンピュータ専門誌への執筆をはじめ、企業のデザイン部門の取材、製品企画のコンサルティングを行っている。

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