Mac業界の最新動向はもちろん、読者の皆様にいち早くお伝えしたい重要な情報、
日々の取材活動や編集作業を通して感じた雑感などを読みやすいスタイルで提供します。

Mac Fan メールマガジン

掲載日:

Mac版「inZOI」レビュー。超絶リアルなシミュレーションゲームは、Apple Ⅱ時代を懐かしむ“仙人”も楽しめる?

著者: 松山茂

Mac版「inZOI」レビュー。超絶リアルなシミュレーションゲームは、Apple Ⅱ時代を懐かしむ“仙人”も楽しめる?

画像●Steam

シミュレーションゲーム「inZOI」に、待望のMac版が登場した。その体験をレポートする。

※本レビューの執筆にあたり、Appleよりアプリの提供を受けています。

inZOIは、Apple Ⅱ時代の「Little Computer People」みたいなもの?

筆者は昔…というかMacが登場するより前のApple IIの時代に、「ZORK」や「Wizardry」、「ULTIMA」といったRPGから、「LODE RUNNER」や「CHOPLIFTER」などスクロール系のアクションゲームまでどハマりしていた。

しかし今や、ゲームとはすっかり疎遠に。たまに、息抜き程度にiPhoneで落ちモノ系を楽しむ程度で、プレステやNintendo Switchといった家庭用ゲーム機も持っていない。

そんな私に「Mac版がリリースされたばかりの、新作ゲームを試してみませんか?」とお声がかかった。聞くと「inZOI」というゲームだという。

inZOIは、App StoreやSteamで配信中。画像●Steam

調べたところ、自分の分身となる「Zoi」を操作するライフシミュレーションゲームらしい。自分で家を建てたり仕事したり、ほかのキャラクターとコミュニケーションしたり、とリアルな生活を堪能できるようだ。「シムシティの自宅版みたいな感じですかね。Apple II時代にあった『Little Computer People』の現代版ってとこでしょうか?」と返事をしたが、若い編集者にはピンと来なかったようだ。

そりゃそうだ。私ももうApple老人会のメンバーといって差し支えない年齢だ。いや、Apple仙人会と言ってもいいかもしれない。

さて、結論から言うとそんな筆者が「inZOI」にしっかりハマった。その経緯を語っていこう。




inZOIの世界で暮らすのは、プレイヤーの分身「Zoi」。カスタマイズ機能は超豊富

inZOIはApp Storeでも提供されているが、今回は案内を受けてSteamからダウンロードした。プレイする際も、Steamアプリを起動してから、ライブラリ内のinZOIを開く。

ゲームは、Island Getaway(邦題では「島に旅立つ」だそうだ)の紹介画面が表示されるところからスタート。すべて見終わると、inZOIのオープニング画面に切り替わった。ここでは「新しく始める」のほかに「建築モード」や「キャラクタースタジオ」などが選べるようだ。

inZOIのオープニング画面。始めてプレイする場合は[新しく始める]を選ぼう。オプションの設定やバグ報告なども、このオープニング画面から行える。

[新しく始める]を選択すると、人物をカスタマイズする画面が現れた。名前や年齢層、性別に加え、気質や希望する人生なんて選択項目もある。そのほか、顔や身体、衣装、アクセサリなど細かにカスタマイズ可能だ。

ここで悩んでも仕方ないので、プリセットから適当なものを選んで先に進める。次は家族作成だ。ここで家族も作成できるようだが、面倒なので自分一人だけで先に進めた。

まず、inZOIの世界で自分の分身となるZoiを作成。名前や年齢層、性別といった基本情報だけでなく、気質や希望する人生までも選択できる。この辺りのカスタマイズ、好きな人は時間を無限に溶かしてしまいそうだ。
顔に関してだけでも髪型や肌、顔の特徴、目、メイクアップなど細かなカスタマイズが可能。プリセットから選択もできる。
自分一人だけでなく、家族も一緒に作成できる。一人で始めるのもよし、家族全員でinZOIの世界をスタートするのもよしだ。

最新DLCの「リゾート地・チャハヤ」で生活をスタート! 海辺の自宅はローンで…とてもリアルだ

最後に都市を選択する。選択肢は、「ドウォン」と「ブリスベイ」、それに「チャハヤ」の3つ。最近リリースされたDLCの「Island Getaway」とは、「チャハヤ」のようだ。今回のレビューにあたりDLCの提供も受けているので、チャハヤにしてみよう。

それぞれの都市をクリックすると詳細が表示される。今回はDLCとして入手した「Island Getaway」の「チャハヤ」を選んでみた。

選択すると地図が表示され、引越し先の家を選べとの指示。できるだけ海岸に近い場所がよかったので、空いている家に決めた。いよいよinZOIでの生活がスタートだ。

地図上に点在する引越し可能な場所(住宅)を選ぶ。クリックすれば住宅の内容も表示される。自分が所有している財産より高価だが、ローンで購入できるようだ。




放置しておけば、Zoiは勝手に“生活”していく。だけど、収入はどうする気?

inZOI内の私(Zoi)は、家に入って早々、デスクに座ってパソコンを操作し始めた。とりあえず、画面に写っているステータスやメニューをクリックして、基本操作を確認していこう。

これがinZOIの基本となる画面。日時や天気、Zoiの状態を示すステータス、持ち物や財産の残高などが表示されている。

常時表示されるのは、好奇心や自分自身のステータス、持ち物など。なるほど、能動的な操作はあまり必要なく、放置しておけばinZOIの世界の中で勝手に生活していくらしい。

Zoiの移動や視点の変え方といった基本操作は、「サイキャットガイド(いわゆるヘルプ画面)」にまとめられている。韓国制作のゲームということもあり一部ハングル文字だったが、iPhoneの「翻訳」アプリを使って訳してことなきを得た。

時刻を見ると日曜の早朝。リゾート地の、しかも海辺の家に住んでいるのにパソコンを操作しまくっている。そんなところは似なくていいのに…。そういえば、家を選択するときに金額が表示されていたが、所持金はあるのだろうか?

画面を見ると、「M1000」と表示されている。単位はよくわからないが、これが今の全財産のようだ。リゾート地とはいえ、ここに暮らしていくのだから、今後もお金は継続的に必要になる。収入はどうするのだろう。

スマホアプリで職探し。私ことZoi、まさかの法律事務所の内定をゲット!

こうした疑問点は、ヘルプ画面に相当する「サイキャットガイド」に書かれているようだ。さっそく、お金を稼ぐさまざまな方法をチェックしてみる。

創作や中古品の販売、悪事を働くなんてのもあるが、まずは職業を持つ必要があるようだ。どの世界も同じ、「働かざるもの食うべからず」。さて、それではどのように職を探すのか…なんと、スマートフォンの求人アプリを使えとある。なるほど今風だ。

持ち物の一覧からスマートフォンを選択すると、iPhoneをMacにミラーリングしたときのように、スマホの画面が表示された。そこから「職業」アプリを開き、採用情報から探す。

持ち物の中からスマートフォンをクリックし、「職業」アプリで仕事を探す。[応募する]をクリックすれば即、採用されるようだ。

選択肢はたくさんあるが、思い切って法律事務所の求人に応募してみた。そしたら即、採用。書類提出も面接もなし。これも“今風”なのだろうか。まぁ、いい。とりあえず、これで仕事は見つかった。




さて、ご飯はどうしようか。冷蔵庫からメニューを選んでいただこう!

そういえば、もうお昼の12時を回っている。食事はどうするんだろうか? 放っておけば勝手に食べてくれるのだろうか? ここにきて、はじめて家の中を歩き回ってみたところ、別棟にキッチンスペースを発見。冷蔵庫を開けると、料理や手軽な食べ物を食べるというメニューが出てきた。

とりあえず食べてみよう。お、冷蔵庫から食事が盛られた皿を取り出し、テーブルで食べ始めた。食事が終わると、一目散にパソコンデスクへ。こいつ、どんだけパソコン好きなんだ!

冷蔵庫にはすぐに食べられる食事が用意してある。自分の冷蔵庫にある食事なのに、食べるときにはお金がかかるようだ。
食事を選ぶと、テーブルに移動して食べ始める。すぐに食器を洗うのは、丁寧な生活でいい。

古めかしいPCで、夜までデスクワークに集中。はやくMacに買い替えたいなあ…

パソコンをクリックすると、そのPCでできるリストが現れた。せっかく法律事務所に勤めるんだから、業務課題でもやっておこう。その後、夜になるまで業務課題を続けさせた。そして夕食を摂り、またパソコン作業。夜中になったが、まだパソコンをいじっている。

さすがにそろそろ寝たほうがいいだろう。だが、キャラクターをクリックしても睡眠を取らせるメニューが見当たらない。ふと気づいてベッドをクリックしたら、[寝る]というメニューがあった。ひとまず、1日お疲れ様でした。

パソコンをクリックして作業内容を選ぶ。それにしてもパソコンのビジュアルが古い。早く稼いで、Macに買い替えたいものだ。
ベッドをクリックし、[寝る]を選ぶと就寝する。ちゃんとパジャマに着替えるあたり、育ちは良さそうだ。




しっかり早起きしてパソコンの前へ。掃除や炊事もこなすと、家事レベルがアップ!

翌朝、7時過ぎに起床していた。パジャマから着替え、トイレを済ませ、手を洗ってパソコンの前に移動。真面目なやつだ。そのあと、気まぐれに掃除をさせたり、朝食を摂らせたりしてみたが、指示した動作を終えると、すぐパソコンの前に戻っていく。

あ、そういえば今日は月曜日だ。仕事場の法律事務所にはどう行けばいいのだろう? そもそも場所もわからない。いろいろステータスやメニューを探ったところ、スマートフォンのスケジュールに勤務時間が入っていた。

掃除をすれば「家事」のレベルがアップする。料理に関しても同じだ。一人暮らしだといろいろなことを自分でしなければならないが、すべてレベルアップにつながる。

なんと仕事は火曜日、水曜日、金曜日の週3日勤務らしい。あとは在宅ワークということなんだろうか。とりあえず、今日の出勤はないとわかって一安心だ。

スマートフォンの「スケジュール」アプリを開くと、勤務時間が書いてあった。午前9時から午後3時まで、おまけに週3日という羨ましい勤務体系だ。

夕方はプールでリラックス。明日に備えて早めに寝たら、時差ボケみたいな生活リズムに

読書したり、パソコンでの業務課題をこなしたり、合間に食事を取ったり。ゆったりと1日を過ごす。庭にプールがあるので、夕方、リラックスを兼ねて入ってみた。まったくうらやましい生活だ。

プールをクリックして「移動する」を選ぶと、プールに入ってくれた。ちゃんと水着にも着替えている。今のところ、プールでできるのは[息を止める練習]と[水で踊る]だけのようだ。

シャワーを浴びたら、ちょっと早いが寝てしまおう。なんせ明日は初出勤だ。遅刻は許されない。午後8時前に就寝。…と思ったら23時50分に起きてしまった。どういう睡眠サイクルなんだ。仕方ない。このままパソコンを業務課題をさせておこう。結局、Zoiは朝まで業務課題を続けることになった。

明日に備えて8時に寝たら、11時50分(23時50分)に起きてしまった。私と同じショートスリーパーなのか?

スーツに着替えてタクシー通勤。でも君、遅刻では?

さて、スケジュールによると勤務は9時から。だが8時半になってもパソコンを操作している。Tシャツに短パン姿じゃ流石にまずいだろう。一応スーツに着替えさせてみたが、9時になっても動き出す気配がない。

どうすればいいんだ!と焦っていたら、画面に勤務時間に関する通知が来た。すかさず[移動する]を選択。でもこれ、遅刻じゃないか…?

Zoiをクリックしてスーツに着替えさせたら、仕事に行くには派手な出立ちになってしまった。勤務時間になったら画面左下に通知が来たので、迷わず[移動する]をクリック。

すると、スイッチが入ったように家を出て歩いていく。まさか徒歩出勤⁉︎と思っていたら、タクシーを捕まえるようだ。タクシーの前でウロウロするZoi。すると「予定されたスケジュールをこなすため、タクシーで移動しました」とのダイアログが表示された。

どうやら、移動や仕事場での様子は見られないらしい。「外部で活動しています」と表示され、帰宅時間まで時間をスキップできるとアナウンスされた。う〜ん残念だが仕方ない。スキップすると、家に向かって歩いている画面に切り替わった。帰りも近くまでタクシーを使ったようだ。

どうやら着替える必要はなかったらしい。通りに出るときには、ビジネスマンらしいスーツに着替えていた。
仕事中の様子は残念ながら見られず。ここまでマイペースすぎるZoi。同僚とはうまくやれているだろうか。

遅刻のお咎めなしでホッと一安心。inZOIの世界は意外とおおらか?

家に着くなり、またパソコンの前に。普段着に着替えさせると、[やるべきこと]が表示された。法律事務所からの指示で、「鏡を見て代理人役を練習してみる」という内容だ。

家の中にある掛け鏡をクリックし、「鏡を見て代理人役を練習してみる」をチョイス。それ以外の「話す練習をする」なども試してみる。

帰宅したからといってのんびりはできない。職場からの指示に従い、壁掛け鏡を使って代理人役割の練習を行う。

それにしても、初日から遅刻はダメだろう。勤務時の様子は見られなかったが、上司に怒られたりしなかったのだろうか。勤務評価が気になったので、スマートフォンの「職業」を開いてみる。出勤日はちゃんとカウントされており、特に遅刻のカウントはなさそうだ。

そういえば、「サイキャットガイド」には無断欠勤が3日続くと解雇される恐れが、と書いてあった。多少の遅刻は気にしない、おおらかな職場なのだろうか。

現在の職位を見ると、「ジュニア弁護士(シニア弁護士?)」でゲージもポジティブな方向に伸びていた。

本人の主体性に任せたら、またも遅刻。これはイカン!と、つい親の気持ちに

彼の自主性は、いったいどこまであるのだろうか。食事やシャワーを済ませると、ソファでくつろぐZoi。しばらくするとパソコンの前に移動した。そこからぶっとおしで明け方4時まで仕事をしている。おいおい、徹夜するのか?と思っていたら、自らパジャマに着替えて寝始めた。うーむ、Zoiの行動がまったく読めない。

ところが7時、8時を過ぎても一向に起きる気配がない。もう9時だ。昨日、こちらから指示して寝させた時は3時半ほどで目を覚ましたのに…。思わずイライラしてしまう。

すると、また勤務時間を知らせる通知が来た。睡眠を中止して出勤させる。すると、普段着のまま家を飛び出し、タクシーを捕まえにいくではないか。この時点で、9時をだいぶ回っている。

放っておいたら明け方近くまで起きていて、おまけに9時になっても目を覚まさない。仕方ないので実行中の[寝る]を[×]して強制的に睡眠を中止させる。
慌てて飛び起き、普段着のまま家を飛び出たZoi。仕事はちゃんとできているのだろうか?

夕方、昨日と同じようにタクシーで帰ってきた。パラメータを見ると、出勤日はきちんと増えていて、評価もプラス方向に伸びている。こんな働き方でいいのだろうか。

起床時間と出勤時間のドタバタで、あっという間に2日目が終わってしまった。これではライフシミュレーションではなく、ダラダラ過ごす息子を叱る親のようだ。

…とかなんとかいいながら、このむず痒さを楽しんでいる自分に気づく。これはまさか、inZOIにハマってきている…? まあいい。とにかく翌朝、早く起こして余裕を持って出勤させなくては!

「Macでゲーム」の今後。Steamも含めて期待は大きい

まだまだinZOIは序盤だが、微妙にうまくいかない感じ、が妙にリアルだ。今もなお、筆者はZoiとの生活を続けている。

冒頭のメニューのように、日本語へのローカライズが完璧ではないところもあるが、日本語環境でのプレイに大きな問題はない。ちなみに今回、筆者は2022年発売のM2搭載MacBook Air(メモリ16GB)でプレイしている。システム要件的には最小クラスだが、プレイ時に不快感を覚えることはなくスムースに動作した。

これまでMacでゲーム、ひいてはSteamに注目することはなかった筆者だが、inZOIの体験で、そのポテンシャルを垣間見た。Apple Arcadeのタイトルは充実しているし、先日はAAAゲームの「サイバーパンク2077 アルティメット」がMac版をリリースした。Apple Ⅱ以来、ゲームにどハマりする未来が来るのが、楽しみなようで怖くもある。

おすすめの記事

著者プロフィール

松山茂

松山茂

東京の下町・谷中を拠点として日々カメラと猫を愛でながら暮らすフリーライター。MacやiPhone、iPadを初代モデルから使ってきたのが自慢。

この著者の記事一覧

×
×