スマートフォンで誰もが美しい写真を撮れるようにした「コンピューテーショナルフォトグラフィ」。
その権威である2人が自然でリアルな描写を追求する新たなカメラアプリを開発し、モバイル写真の再定義に挑む。
スマホは誰でも綺麗に撮れる。けれど“加工感”が不自然…
2010年代前半、スマートフォンのカメラ性能がコンパクトデジカメ並みと評されるようになり、一眼レフに近づくことへの期待も高まった。だがその後、スマートフォンのカメラはコンピュテーショナルフォトグラフィ(計算写真)に進み始めた。
この進化によって誰でも見映えのする写真を簡単に撮れるようになったが、一方でスマホ写真特有の「加工感」に不自然さを覚える声もあった。
カメラ本体の性能が向上しても「スマホっぽい」写真しか撮れないのはもったいないという声に応え、Adobeは新たなカメラアプリ「Project Indigo」を公開した。
開発を率いるのは、コンピュテーショナルフォトグラフィの草分けであるアドビフェローのマーク・ルヴォイ氏と、主席研究員のフロリアン・カインツ氏。
両氏は2010年代後半、Google在籍時代にコンピュテーショナル処理とAI・機械学習を組み合わせ、スマートフォン写真の楽しみ方そのものを一変させた。その二人が、再びモバイル写真の再定義に挑む。
スマホ写真にリアルさと深みを。“本物の光と影”を描き出すProject Indigoとは?
Project Indigoは、撮影時により多くのフレーム(画像)を取得し、これを合成することでノイズを減らす。そして、露出をより強くアンダーにする。
これにより、ハイライトの白飛びが少なく、シャドウ部のノイズが少ない写真を得られるわけだ。

また、従来のスマホ写真で問題とされてきた「HDRっぽい」不自然さに対し、Project Indigoは過度なローカルトーンマッピングを避けることで、写真の階調関係が歪むのを防ぐ。
さらに「マルチフレーム超解像」という拡大撮影機能を搭載。手の動きを利用して、わずかに異なる視点から複数枚を撮影、合成することで精細なディテールを記録する。

Project Indigoは、スマホ写真をただ“綺麗に撮る”から“自分の目で捉えた世界を写す”へと進化させる!
Project Indigoの機能の中で、特に写真家の注目を集めているのが、コンピュテーショナル処理を前提に設計されたマニュアル操作だ。フォーカス、ISO、露出などに加え、連写バーストのフレーム数も調整できる。
デジタル一眼など従来の本格カメラは、撮影時にはセンサの生データしか見られず、最終的な現像・編集結果は経験と勘に頼るしかない。しかし、Project Indigoは撮影時にリアルタイムでコンピュテーショナル処理を走らせることができる。
開発チームは将来的に、撮影時に最終的な仕上がりを確認できる「WYSIWYG(見たままが撮れる)」の実現を目指している。
Project Indigoはただきれいな写真を撮るためのカメラではない。撮影のプロセスを楽しみ、撮影者がイメージどおりに被写体を写しとるという、写真本来の魅力を追求することが可能だ。
まだ開発段階で荒削りな部分もあるが、その裏にはモバイル写真の未来を広げるポテンシャルが宿っている。
※この記事は『Mac Fan』2025年9月号に掲載されたものです。
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