「研究」とは、物事を深く調べ、考え抜き、真理を追究すること(広辞苑より)。
最先端の研究は、私たちの日常や社会にどのような影響をもたらすのでしょうか。
俳優・中尾明慶さんが読者を代表して、さまざまな研究現場を訪ね、その「可能性」と「魅力」を探ります。

中尾明慶
1988年6月30日生まれ、東京都出身。代表作に「3年B組金八先生」や「ROOKIES」、「監察医 朝顔」シリーズ、「PICU 小児集中治療室」などに出演。また、趣味を活かしたYouTubeチャンネルは登録者数84万人を超える。

仲木竜
株式会社Rhelixa(レリクサ)代表取締役CEO/CTO。東京大学先端科学技術研究センター ゲノムサイエンス分野 油谷研究室にて学位(工学博士)を取得。次世代シーケンサーより得られる全ゲノム・エピゲノムデータを解析するための計算アルゴリズムの開発・応用を専門とする。
今回の研究対象:エピクロック

老化予防と若返りを目的とした生物学的年齢検査サービス。遺伝子のはたらきを制御する「DNAスイッチ」とも呼ばれるDNAメチル化情報に基づいて生物学的年齢を検査する。世界で初めて日本人の遺伝的背景に最適化された独自の評価アルゴリズムを実現。老化を遅らせ、若返るための最適なアクションプランについても提案してくれる。全国の医療機関で実施可能。
【URL】https://epiclock.jp/
世界でも定評のある若さを評価する指標
中尾:今回エピクロックを体験させていただきました。それによると、僕の体は35.3歳で、実年齢よりもマイナス1.3歳らしいです。
仲木:マイナスですか! さすがですね。各項目も軒並み「正常」や「良好」ですばらしいです。
中尾:でも、正直もう少し若い結果が出るかもと思っていました(笑)。どちらかといえば若く見られることが多いので。
仲木:いえいえ、十分すごい結果です。というのも、実年齢よりも若く結果が出ることって多くないんですよ。僕自身はプラスですし、うちの社員の多くもプラスです。

中尾:そうなんですね! このエピクロックって、そもそもどんなサービスなんですか?
仲木:簡単にいうと世界でもっとも定評のある「若さを評価するサービス」です。人間の若さって、これまでは年齢で語られてきたんですね。でも、同じ年齢でも見た目の年齢が大きく異なることってありますよね。芸能界なんてまさにそうだと思います。
中尾:たしかに芸能界は若々しい人も多いですね。
仲木:逆に、世の中には実年齢よりかなり上に見える人もいます。年齢と老化の関係は個人差が非常に大きいんです。そのため、生まれてからの経過時間だけで若さを評価するのは不十分ではないかという話は昔から言われていました。
中尾:でも、年齢以外の指標なんてあるんですか?
仲木:細胞に含まれる遺伝子です。中尾さんも今回の検査にあたって、病院で採血していただいたと思いますが、その血液が当社に送られてきて分析にかけられます。そこから遺伝子データをチェックするんです。
中尾:遺伝子を見ていたんですね!
仲木:私たちの体は約37兆個の細胞で構成されていて、それぞれ違う機能を持っています。目の細胞は目を構成しているし、肌の細胞は肌を構成しているわけです。この細胞の“設計図”は親から受け継いだものなんです。
中尾:だから、子どもは親に似るんですよね。
仲木:この遺伝子にはオンオフスイッチのようなものが搭載されています。細胞の機能は、このスイッチがオンになっているかオフになっているかで決まるんです。
中尾:たとえば僕は肌が弱くて、湿疹が出がちです。それは、肌の湿疹の細胞がオンになっているということですか?
仲木:簡単にいうとそうですね。「炎症のなりやすさ」のスイッチがオンになっているのかもしれません。
中尾:スイッチのオン/オフはどうやってわかるんですか?
仲木:よく、DNAのゲノムは二重らせん構造になっていると言いますよね。この二重らせんの分子に「メチル化」が付加されていれば「オン」、付加されていなければ「オフ」となります。人の身体にはこのDNAスイッチが約3000万カ所もあります。エピクロックでは、このオンオフを検査で読み取って、老化のレベルを測定しているんです。
中尾:へー! じゃあ“このスイッチがオンになっているということは老化が進んでいるな”みたいな?
仲木:そういうことになりますね。



「老化には抗えない」はいまや過去の話に
中尾:エピクロックはいつから提供されているんですか?
仲木:サービスを開始したのは2023年の10月ですが、研究自体は2017年ごろからずっと行ってきました。ただ、世界に目を向ければ技術そのものは2013年ごろから存在します。
中尾:世界のほうが先行しているってことですか?
仲木:そうです。私たちがこのタイミングで研究やサービスの提供を始めたのには、世界の潮流が大きく影響しています。老化って抗えないもので、仕方ないものだと皆さん思っていますよね。でも、それはもう世界の標準的な考え方とは違ってきているんですよ。
中尾:えっ、老化に抗えるんですか?
仲木:そうなんです。最新の考え方では、老化は病気の一種だと考えられています。病気なら治せるはず。つまり「体の年齢は巻き戻せる」という考え方が世界では一般的になってきているんです。
中尾:それって若返りってことですよね。にわかには信じがたいですが。でもたしかにボクシングのメイウェザーなんかめちゃくちゃ若々しいですもんね。実年齢と身体年齢が合っていない好例かも。
仲木:おっしゃるとおりです。ただ、日本ではまだそうした考え方が浸透していません。それは、これまで老化を防ぐソリューションがなかったからです。
中尾:たしかに思いつかないです。
仲木:それが、ようやく最近になって、日本でも若返りのソリューションが登場し始めています。たとえば“痩せる”と言われているサプリメントを飲むと、若返る可能性もあるということがわかってきたんです。
中尾:痩せるだけじゃなく、若返りまでできるんですか!
仲木:そうなると、次に課題となったのが「若返ったかどうかを、どう測定するのか」です。若返りに効果があったとしても、きちんと測定しないと「なんとなく、そんな感じがする」で終わってしまいます。
中尾:そうか、そこで登場したのがエピクロックなんですね。
仲木:若さを評価する方法はいろいろ研究されていますが、その中で一番いいのがエピクロックのようにDNAスイッチのオンオフで判断することだと認められ始めています。
中尾:僕は“若さ”って健康のことだと思っていました。それこそ“臓器が若い”ってことなのかなと。
仲木:それも大事な要因だと思います。糖尿病のような慢性疾患を持っている人は、体の年齢が実年齢よりも高くなります。その結果、見た目も老けて見えることが多いですね。
中尾:体の年齢と見た目は関係しているんですね。見た目が若い人は体も若いというのは、感覚的にも納得できます。
仲木:世界ではすでに、各臓器ごとに若さを測定できるサービスも登場してきているんですよ。
中尾:肌は何歳で、脳は何歳で、みたいに出ると、改善点がわかりやすいですよね。サプリの話もありましたが、若さってどうすれば改善できるんですか?
仲木:一般的な話で言うと、早寝早起きや、腹八分目の食事、適度な運動などが重要です。さらに運動で言えば、有酸素運動に加えて、負荷の高い運動と休憩を繰り返すヒートトレーニングなども効果的でしょう。
中尾:僕もジムに通っているんですが、やはり運動は大事なんですね。
仲木:もちろん程度の問題はありますよ。なんでもやりすぎはよくありません。あとは体の老廃物を出していくことも大切です。たとえばサウナとか、ファスティングとか。
中尾:ファスティングは一度挑戦したことあるんですよね。でも終わった途端にハンバーガーが無性に食べたくなって(笑)。これ逆効果じゃない?と思ってやらなくなりました。
仲木:お気持ちわかります(笑)。ともあれ食事は重要です。特に塩分や糖分を控えめにするのがおすすめです。というのも先ほど痩せ薬が若返りに効果的とお話しましたが、そういった薬って糖尿病の治療に用いられることが多いんです。
中尾:つまり、糖分のとりすぎは老化につながるってことですね。お聞きしていると、僕はけっこう理想の生活ができているのかも。運動もしっかりやっているし、睡眠も早寝早起きを心がけて時間もたっぷりとっています。食事も好き嫌いなく、暴飲暴食もしません。
仲木:だから、きっと体年齢が若く出たんでしょうね。
中尾:せっかくなので、若返りに効果的な食べ物があるなら知りたいです!
仲木:タンパク質やビタミンDが多く含まれる食品、たとえば豆や魚などがおすすめです。

目指すのは年齢で区切られない世界
中尾:仲木さんはエピクロックをとおして最終的に何を目指しているんですか?
一番は、年齢で区切る世界を変えたいということです。たとえば仕事の定年にしたって年齢で区切りますよね。でも全然元気で、もっと働きたい人もいるはずです。「◯歳になったんだから、こうでないといけない」という思い込みを覆したいんです。
中尾:たしかにそうですよね。何歳からだって挑戦していいし、やりたいことをやっていいと思います。人生経験を積んだ50歳の新入社員なんて、とても素敵だと思いますし。
実際、世界はその方向に進んでいます。また、遺伝子検査と同じく、今のところはまだエピクロックを健康診断の代わりには使えません。ですが、最終的にはそこまで持っていきたいと思っています。
中尾:すごい! それはいつ頃、実現するんでしょうか。
現在のエピクロックはトータルでの体年齢を測定できる段階ですが、まずは5年以内に臓器など体の各項目の評価までしっかり出せるようにしたいと思っています。
中尾:早くそんな世界が実現するといいですね! じゃあ僕はその間に体を整えて、マイナス6歳を目指します!

Photo●黒田彰
企画協力●SHIBAURA B.CLINIC(芝浦ビークリニック)
【URL】https://e-onetower.jp/about/

企画・コーディネート
佐藤 詳悟
吉本興業株式会社にてナインティナイン、ロンドンブーツ1号2号などのマネジメントを歴任後、ロバート秋山の「クリエイターズファイル」COWCOWの「あたりまえ体操」等、新規事業プロデュースを行いヒットコンテンツを生み出す。2016年にFIREBUGを創業。
著者プロフィール
山田井ユウキ
2001年より「マルコ」名義で趣味のテキストサイトを運営しているうちに、いつのまにか書くことが仕事になっていた“テキサイライター”。好きなものはワインとカメラとBL。




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