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Vision Pro向け「メタリカ」の没入型コンサート映像がスゴすぎる! 革新的イマーシブコンテンツに「ライブ体験」の未来が見えた

著者: 大谷和利

Vision Pro向け「メタリカ」の没入型コンサート映像がスゴすぎる! 革新的イマーシブコンテンツに「ライブ体験」の未来が見えた

Photo●Apple

Appleは、Apple Vision Pro(以下、AVP)のエンターテイメントユースのためのApple Immersive Video(180度イマーシブコンテンツ)の充実に力を入れている。

その1つ目の柱が「Adventure and Wild Life」と呼ばれるドキュメンタリー、2つ目が短編映画、そして3つ目がミュージックビデオやコンサートなどからなる音楽系コンテンツだ。

先日、その3つ目の柱に、強力なライブ収録映像が加わった。

世界的ヘヴィーメタルバンド「Metallica(メタリカ)」のメキシコシティでのフィナーレ公演の模様を25分に凝縮した、「Metallica Immersive Experience」だ。

コアなファンならば、このためにAVPを購入するのではないか。そう思わせるほど革新的な、この最新コンテンツを紹介しよう。

ファンでなくても絶賛する「ライブ体験」

Metallica Immersive Experienceは、その名のとおりコンサートを観るのではなく体験することを目的に作られている。そして、それは掛け値なしに体験そのものだった。

ほかのAVPのコンテンツと同様に、その完全な体験はAVPを通してしか得られないことが歯痒いが、予告編の映像から切り出したイメージを使いながら、その概要を伝えたいと思う。

モノクロームのイマーシブ体験は楽屋裏でメンバーが気合を入れるところから始まり、カメラはボーカル&リズムギター担当のジェイムズ・ヘットフィールドの背中をアリーナの中まで追いかけていく。

すると、花道の両側のファンが歓声を上げながら手を伸ばしてくる。

このあたりの映像をAVPで見ていると、まるで自分がMetallicaのメンバーとなり、ステージに上がろうとしているかのような錯覚を覚える。

ボーカル&リズムギター担当のジェイムズ・ヘットフィールドの後を追いかけるカメラ。
Photo●Apple
その直後に彼はアリーナに出て通路脇のファンに囲まれ、会場が熱気に包まれる興奮をAVPユーザも我が事のように体験する。 Photo●Apple
スネークピットと呼ばれる内側のスペースまでファンが入り込めるドーナツ状のステージは、Metallicaとの一体感を最大限に高める仕掛けだ。 Photo●Apple

このイメージでは見えていないが、ステージ上の要所と空中のケーブル、そして機動性のある撮影スタッフの手持ち機材として、Blackmagic Designの180度VRカメラ「URSA Cine Immersive」が複数台配置されている

メンバーがステージに上がって所定の位置につくと、ドラマーのラーズ・ウルリッヒが刻むタイトなリズムとともに会場の興奮はいやがうえにも高まっていく。

ドラムセットの横には、ラーズのスティック捌きと表情を余すところなく捉えるために、URSA Cine Immersiveが定点カメラとして設置されている。

1981年にジェイムズ・ヘットフィールドとともにMetallicaを結成し、ドラムスと曲作りを担当するラーズ・ウルリッヒ。
Photo●Apple

ギターを抱えたジェイムズ・ヘットフィールドは、聴衆を挑発するように「生きてるか?」と叫び、Metallicaのデビューシングル曲でもあった「Whiplash」を演奏し始める。

映像は、空中ケーブルに吊り下げられたURSA Cine Immersiveからのドローンショットのような会場俯瞰や、手持ちによるノリノリのファンのアップなど、多様な視点を駆使してコンサートの全貌を映し出していく。

ラーズ・ウルリッヒに誘われたMetallicaの創立メンバーの1人で、ボーカルとリズムギター、メインのソングライティングを担当するジェイムズ・ヘットフィールドが聴衆を挑発し、会場もそれに応えて熱気のるつぼと化していく。 Photo●Apple

その間にも、リードギターのカーク・ハメットとベースのロバート・トゥルヒーヨは、ステージ上を移動しながら演奏して回り、ファンサービスを欠かさない。

そして、演奏は映画「ジョニーは戦場に行った」にインスパイアされて作られたグラミー賞受賞曲の「One」、ヨーロッパの民間伝承の睡魔、サンドマンが登場するファンタジックな曲で、カーク・ハメットが書いたイントロのリフがMetallicaのトレードマークとまで評される「Enter Sandman」へと続いていった。

1983年に加入し、リードギターを担当するカーク・ハメットは、元Exodusのギタリスト。 Photo●Apple
2003年に加入し、ベースを担当するロバート・トゥルヒーヨは、元オジー・オズボーンのベーシスト。
Photo●Apple

別次元のイマーシブ体験が味わえる

このMetallica Immersive Experienceへの評価として面白いのは、FacebookのAVPグループなどで「Metallicaやへヴィーメタルのファンではないが、このイマーシブ体験はすごい」というコメントが目立ったことだ。

かくいう筆者も、Metallicaやへヴィーメタルのファンではなく、これまでもAVP向けのイマーシブコンテンツはほとんど体験しているのだが、これは別格の出来だった。

これからは、Metallica Immersive Experienceを基準としてイマーシブコンテンツが語られる時代になっていくと実感した。

ちなみに、Metallicaのコンサートチケットは、この映像が収録されたメキシコシティでの「M72 World Tour」の場合、もっとも安い東スタンドが日本円で約1万8490円(ただし、2公演分でワンセット。以下同じ)、フロアになると立ち見席でも約4万440円。

S席に相当すると思われる北・南スタンドのグリーンゾーンと呼ばれるエリアでは約6万3765円。そして、もっともメンバーに近づける、かぶりつきのスネークピットは約12万9600円にまで跳ね上がる。

しかし、それで打ち止めではなく、メンバーと対面できたりするVIPパッケージ的なものも用意されていて、専用観覧席+飲食+限定イス・グッズ付きの最上位パッケージは、何とAVPが2台買えてしまう約126万円もするのである。

もちろん生粋のMetallicaファンならば、何が何でも本物のライブのほうが良いというかもしれない。

しかし、AVPのImmersive Experienceは、現実にその場には居ないというだけで、臨場感やメンバーとの近さ、視点の多様さにおいてスネークピット以上の体験をもたらす。

その意味では、このためにAVPを購入しても十分に元が取れると考えるファンが現れても不思議ではない。

今後、このレベルの大物アーティストのライブコンテンツが増えていけば、確実にAVPのキラーコンテンツの1つになるだろう。

著者プロフィール

大谷和利

大谷和利

1958年東京都生まれ。テクノロジーライター、私設アップル・エバンジェリスト、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)取締役。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツへのインタビューを含むコンピュータ専門誌への執筆をはじめ、企業のデザイン部門の取材、製品企画のコンサルティングを行っている。

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