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Macは何歳まで使えるのか。アクセシビリティ機能を駆使すれば、Macライフに終わりはこない?

著者: 牧野武文

Macは何歳まで使えるのか。アクセシビリティ機能を駆使すれば、Macライフに終わりはこない?

アクセシビリティ機能を活用すれば、Macは年齢を問わず快適に使い続けられるのか。

Macが誕生してからもうすぐ40年。筆者を含め、長年Macを使ってきた読者の方々もすっかり中年になっていることだろう。

せっかく高精細のRetinaディスプレイを使っているのに、老眼が始まって、文字サイズを大きくしているという人も多いのではないか。

はたして、Macは何歳まで使い続けることができるのだろうか。Mac使いに定年はあるのだろうか。これが今回の疑問だ。

※この記事は『Mac Fan 2021年5月号』に掲載されたものです。

「アクセシビリティ」は、高齢Macユーザの強い味方

初代Macintoshが誕生したのは1984年。当時30歳だった人は、現在67歳になっている計算だ。80歳を超えるMacユーザだって、きっといらっしゃるだろう。

Macと同時に生まれた人ですら、現在37歳。すっかり中高年で、あと何年かで老眼が始まり、耳も老人性難聴になって高音が聞き取りにくくなる。それでもMacを使ううえでは大きな問題にならない。

「システム環境設定」に[アクセシビリティ]という強い味方があるからだ。

なお、アクセシビリティは「障がい者向けのサポート機能」と説明されることがあるが、これは正確ではない。現在では、健常者と障がい者を分けて考えることをしなくなっている。単に、個性や機能が連続して分布しているというイメージだ。そのため、アクセシビリティ機能をまとめたAppleのWebサイトにも、「障がい者」という言葉は使われておらず、「あなたにあった使い方ができる」と説明されている。

アクセシビリティの中で便利と感じる機能を使うことで、誰もがMacを快適に使えるように設計されているのだ。

文字サイズを大きくして視認性を上げる。ただ、共有する書類の場合は要注意

目が悪くなってしまったら、PagesやSafariの本文フォントを大きくするだろう。一般的な雑誌などで、標準の本文フォントサイズは9ポイント相当だといわれる。ただし、現在では紙媒体を読む人の年齢層が上がっているため、10,5ポイントなどの大きめのフォントを採用している雑誌も増えてきた。

MacのRetihnaディスプレイは、もはや印刷物と変わらない精細さなので、Macでも9、10、11程度のフォントを使うのが一般的だと思われる。もちろん、それが小さく感じるのであれば、12、13を使ってもかまわない。

ただしPagesの場合、それ以上の大きさのフォントはあまり使わないほうがいい。というのも、Pagesで作成した書類は人に渡すことがあるからだ。フォントサイズも維持されるため、あまりに大きな文字に相手がびっくりしてしまうことがある。フォントサイズは、Microsoft Word「やPDFに書き出しても維持される。

このような事態を避けるため、本文サイズは13ポイントぐらいまでにとどめ、書類全体を拡大してしまおう。こうすると、自分は大きな文字で書類を作ることができ、相手は普通の本文サイズで見られるようになる。

Pages、Numbers、Keynoteには書類全体を拡大・縮小表示させる機能がある。文字サイズだけを大きくするよりは、書類全体を拡大すると、他人に渡したときも自然な文字サイズの書類となる。

Safariの「リーダー」機能は便利。アクセシビリティでディスプレイ設定を変更するのもおすすめだ

また、Safariでぜひ使っていただきたいのが「リーダー」機能だ。文字サイズが調整できるうえ、モノトーンの画面となり、余計な広告などの要素が排除される。じっくりと内容を読みたいときに便利な機能だ。リーダーは、iPhoneやiPadのSafariにも搭載されているので、活用していただきたい。

Safariでぜひ活用してほしいのが「リーダー」機能だ。広告などを取り去って、文字だけを表示してくれる。iPhone、iPadのSafariにも同じ機能があり、特にiPhoneで長文を読みたいときには格段に読みやすくなる。

「システム環境設定」の[ディスプレイ]で解像度を変更することでも文字を拡大できるが、これは画面全体の解像度を下げた拡大表示になるので、作業スペースは狭くなる。

それよりは、[アクセシビリティ]の[ディスプレイ]で、[視差効果を減らす][コントラストを上げる][透明度を下げる]などをオンにしておくことをおすすめする。また、メニューバーのサイズも[大]を選ぶことができる。

アクセシビリティの[ディスプレイ]では、メニューバーのサイズを大きくすることもできる。上が初期設定で、下が[大]。大きく変わるわけではないが、若干見やすくなる。なお、写真は同じサイズで撮影してある。

また、フォルダも表示オプションで、ファイル名のテキストサイズやアイコンのサイズを変えることが可能だ。

拡大鏡として使える「ズーム機能」も強力。ショートカットで呼び出せるアクセシビリティ

文字をある程度の大きさにすれば、読むことはできても、文字の細かい部分を確認できないことがある。たとえば濁点と半濁点の区別がつかないなどだ。

特に乱視が進んでいると、目をしかめるように力を入れて画面を見ることになる。これが目を著しく疲労させる。

そういう方に使っていただきたいのが「ズーム機能」だ。ズーム機能にチェックを入れておくと、[command]+[option]+[8]キーのショートカットで、オン/オフができる。マウスポインタを動かせば拡大箇所を移動させることができ、細かい部分が確認できる。文字だけでなく、グラフィック系の細かい作業をするときにも便利だ。

[command]+[option]+[8]キーで起動する「拡大鏡」。ズームの方法として[ピクチャ・イン・ピクチャ]を選択していれば、枠が現れ、内容が拡大表示される。拡大鏡のサイズや拡大率なども設定可能だ。

[アクセシビリティ]の[ズーム機能]の[詳細]で、拡大鏡のサイズや拡大率なども細かく設定できるようになっている。

「ズーム」の一歩進んだテクニック。マウスを“見失いがち”な人が使いたい機能も

また、ズーム機能の[ポイントしたテキストの拡大を有効にする]オプションも役に立つ。これは[コマンド]キーなどの3回連打で起動できるテキスト拡大ツールで、カーソルがある位置のテキストを拡大してくれる。

[command]キーなどを3回連打で起動するズーム機能のテキスト拡大。カーソルがある場所のテキストが拡大表示される。コントラストが高く、大きな文字で表示される。

ズーム機能と違って、テキストの段落全体を拡大表示することが可能だ。特にWebサイトなどでは、デザインの関係から薄い文字色で小さい文字を使っていることがある。キャプションや注意書きなどといった小さな文字を確認するのに役に立つ。

また、マウスポインタの図形は、大画面や高解像度のディスプレイなどを利用していると、見失ってしまうことがしばしばある。

このようなときは、多くの人がポインタを振って見つけようとするが、この振ったときに、瞬間的にポインタを拡大してくれる機能もある。[アクセシビリティ]の[ディスプレイ]の中にある[マウスポインタをシェイクして見つける]をオンにしよう。

目が疲れたら「読み上げコンテンツ」を使おう。誤字脱字のチェックにも有効だ

目が疲れて困るという人は、「読み上げコンテンツ」を活用するのがおすすめだ。[アクセシビリティ]からこれをオンにしておくと、選択したテキストを合成音声で読み上げてくれる。

合成音声はイントネーションがまだまだ自然とは言えないが、万が一書いた内容に誤字脱字があった場合、明らかにおかしな読み上げ方になるので、校正をするときには意外と便利。

ブログやメールを書き終えたあと、目が疲れていたら、読み上げさせて校正をしたり、長いブログ記事をラジオ感覚で聞くことができる。

また、音声入力も現在では認識精度が著しく上がっている。長文の入力は、喉が疲れてしまうが、iMessageでの短文のやりとりであれば、音声入力は意外に楽だ。

アクセシビリティは“実験場”? Macは、誰もが自分に合わせてカスタムできるユニバーサルさを備えている

これだけではなく、アクセシビリティは“未来のMacの実験場”のようになっている。たとえば[ポインタコントロール]のヘッドポインタだ。Facetimeカメラを使って顔を認識し、顔を上下左右に向けると、その方向にポインタが動く。

本来は手に障がいがあって、細かい操作がしづらい人向けに開発された機能だと思われるが、実際に使ってみると、非常に未来的に感じる。

繰り返しになるが、アクセシビリティは「障がい者のための機能」ではない。誰もが、その人の特性や能力に合わせて、Macを使いやすくカスタマイズするためのユニバーサルな機能だ。

コンピュータはもともと視力、聴力、腕の運動機能にまったく問題がない人を前提に設計されてきた。しかし、現実にはそのような能力にまったく問題がないという人は少数派だ。

眼鏡で視力を補う人も多いし、中年になれば、いつも身体のどこかが調子が悪いものだ。そういう個人の特性を埋めてくれるのがアクセシビリティだ。つまり、Macは工夫次第で何歳になっても使うことができる。

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著者プロフィール

牧野武文

牧野武文

フリーライター/ITジャーナリスト。ITビジネスやテクノロジーについて、消費者や生活者の視点からやさしく解説することに定評がある。IT関連書を中心に「玩具」「ゲーム」「文学」など、さまざまなジャンルの書籍を幅広く執筆。

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