デジタルイラストやマンガを描く際に欠かせないペンタブレット。製造メーカーは世界で数社という状況が続いていましたが、近年存在感を増しているのがフイオン(Huion)社です。同社の社長である張友信さんと日本国内での展開を支援しているエム・エス・シーの代表取締役社長 宗廣宗三さんに、ペンタブレットの現状と魅力についてお聞きしました。
撮影:黒田 彰
株式会社フイオン
社長
張友信さん(左)
株式会社エム・エス・シー
代表取締役社長
宗廣宗三さん(右)
2023年から本格的に日本市場に参入!
成功の鍵は品質の高さと価格競争力にあります!
高性能と使いやすさの両立
MF●フイオンの成り立ちについて教えていただけますか。
張●フイオンは台湾のUC-Logicと合併して2019年にできた会社で、主にペンタブレットの研究開発と製造販売を行っています。2023年に日本法人を設立し、昨年から本格的に日本市場に参入しました
MF●短期間で急速にシェアを伸ばしているのですね。
張●台湾での市場シェアは40%を占めるまでに成長しました。成功の鍵は品質の高さと価格競争力にありまして、同等のスペックを持つ競合製品と比較しても価格面で数割程度の優位性を持っています。これにより、プロフェッショナルユーザだけでなく趣味で絵を描くクリエイターやデザイン初心者にも手が届きやすい製品を幅広くご提供できています。
MF●主力製品は「液タブ」かと思いますが、中でも特に力を入れていらっしゃるモデルを教えてください。
張●今一番おすすめしたいのが、「キャンバスプロ19(Kamvas Pro 19)」です。業界初となる19インチ(対角18・4インチ)という、大きすぎず小さすぎない絶妙なサイズとなっています。デスクトップでの作業はもちろん、持ち運んでの利用など多様な作業環境に適しているのがポイントです。
品質とサポートでクリエイティブを支える
MF●Macへの対応状況はいかがでしょうか。
張●macOS 10・12以降に対応していて、ウィンドウズやアンドロイドなどもサポートしています。指先でのマルチタッチ操作は現状ウィンドウズのみの機能ですが、年内にMacにもアップデートで対応する予定です。
MF●発売後のユーザの反応はいかがでしたか。
張●オンラインでは今年1月から販売開始し、5月からは大手量販店での取り扱いも開始していて、売り上げも好調です。他社のペンタブレット製品をお使いのユーザも多いので、店頭のデモ機で実際に体験いただいたところ、操作感に差がないことや安心して乗り換えられるといった声をいただいています。
MF●国内販売に際して工夫されたこと、また苦労されたことはありますか。
張●それについては、(エム・エス・シーの)宗廣社長に多くの助言と支援をいただきました。
宗廣●日本市場での成功を目指すのであれば、独自の商習慣やパッケージデザイン、マニュアルの充実度など消費者心理などをよく理解し、時間をかける必要があることを張社長とも話し合いました。この取り組みが功を奏し、大手量販店からも好意的に受け止められ、発売から3カ月でペンタブレットの売上シェア10%を占める好発進となりました。
MF●日本市場でのニーズの特徴は何でしょうか。
張●品質の高さを求めるのはもちろんですが、アフターサービスやブランドとしての信頼度を重視する傾向があります。たとえば、ペンタブレット製品は自社工場で一貫した品質管理を行っていて、出荷時のハードウェアキャリブレーションの検品報告書が1台ごとに付属しています。また、修理対応の仕組みも整えていて、お急ぎの際には東京・秋葉原のサービスセンターへの持ち込みにも対応しています。
MF●今後の展望や目標についてはいかがですか。
張●市場シェアの獲得も重要ですが、日本においてはブランドの信頼度を確立したいと考えています。
宗廣●エム・エス・シーとしては、フイオンの優れた製品を広めていく立場として、引き続きサポートをしていきます。現在はデモ機を首都圏中心に置いていますが、今後は全国の各エリアごとにフイオン製品のラインアップを試せるように整備していきたいです。
いつでもどこでも創作できる!「Kamvas 13 + K20」の魅力
現在、27インチ、24インチ、22インチ、19インチ、16インチと複数のラインアップを揃えている液晶ペンタブレットのKamvasシリーズ。同シリーズでもっとも小型軽量でモバイル用途に適しているのが、13インチサイズの「Kamvas 13」と左手デバイスの「K20」がセットになったオールインワンモデルです。
3万6280円とリーズナブルながら、フルHD(1920×1080ピクセル)解像度のディスプレイを搭載し、モバイルに適した11.8mmの超薄型デザインと980gの軽さが大きな特徴。MacBookシリーズなどとUSB-Cケーブルで接続すれば、外出先でもすぐにクリエイティブワークを開始できる機動性の高さも魅力です。また、本体にはブラシサイズの変更やズームイン/アウト、手のひらツールとの切り替えなど、8つのプログラム可能なホットキーを搭載し、作業性にも優れています。
※この記事は『Mac Fan』2024年11月号に掲載されたものです。
著者プロフィール
栗原亮
1975年東京都日野市生まれ、日本大学大学院文学研究科修士課程修了(哲学)。 出版社勤務を経て、2002年よりフリーランスの編集者兼ライターとして活動を開始。 主にApple社のMac、iPhone、iPadに関する記事を各メディアで執筆。 本誌『Mac Fan』でも「MacBook裏メニュー」「Macの媚薬」などを連載中。