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Beatsの最新Bluetoothスピーカ「Pill」レビュー。内部構造の刷新とデザインの磨き上げにより、“生の音”がダイレクトに響く!

著者: 山本敦

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Beatsの最新Bluetoothスピーカ「Pill」レビュー。内部構造の刷新とデザインの磨き上げにより、“生の音”がダイレクトに響く!

BeatsのBluetoothスピーカ「Beats Pill」が、約9年ぶりに一新された。進化したサウンドと機能のファーストインプレッションを報告する。

ブランドの歴史に名を刻む名作スピーカ「Beats Pill」

Beats Pillが2012年にデビューした当時、バッテリを内蔵するポータブルワイヤレススピーカ市場にはさまざまな製品があふれていた。そんな中、カプセル薬のデザインからインスピレーションを得たというユニークなデザインのBeats Pillは、発売直後から若い音楽ファンを中心に支持を集めた。

当時、ヘッドフォン市場で存在感を示していたBeatsに、さらなる勢いをもたらしたブランドの歴史に名を刻む重要なプロダクトだ。

BeatsがApple傘下のブランドになってから、2015年には進化した「Beats Pill+」が生まれている。初代モデルのユニークなデザインを継承しつつ、Appleのフィロソフィが注入されたことにより、すべての音楽ファンが使いやすいBeatsの定番ワイヤレススピーカとして安定の人気を勝ち取った。

10年以上の歴史を持つBeats Pill。新モデルは、シャンパンゴールド、ステートメントレッド、マットブラックのラインアップで登場している。写真●Beats

音質向上にこだわった新Beats Pillの内部構造

約9年ぶりに刷新されたBeats Pillは、「サウンドクオリティの進化」にとことんこだわった。すべてのユーザが音質向上を実感できるよう、Beatsのエンジニアは新たな音響的アプローチからすべてのコンポーネントを再設計している。

本体の中には、独自の楕円形デザインのウーファユニットを1基搭載。カーレースのサーキットのような形状であることから、“レーストラッカ”と名づけられている。Pill+のウーファより口径を大きくしたことで、動かせる空気の容量が90%増し、よりパワフルな重低音を再現した。

楕円形のレーストラッカ・ウーファを搭載(写真右側)。ユニットの口径サイズを大きくしたことで、切れ味鋭くパワフルな低音さ異性を実現した。写真●Beats

また、ユニット周囲のフレーム周囲に放射状のリブを設けた。頑強なユニットに強力なネオジウムマグネットを組み合わせ、強い駆動力を引き出す。そのパワーはPill+と比べて約28%向上。ユニットの駆動が安定することから、「強い」だけでなく、「切れ味鋭く明瞭」な低音が鳴らせるスピーカだ。

サイズや価格帯においてBeats Pillと競合する他社ワイヤレススピーカの中には、重低音再生を強化するために、パッシブラジエータという電磁気回路を持たないユニットを載せた製品もある。パッシブラジエータは70Hz前後の低音域まで鳴らせるものの、それよりも低い音域に力強さを生むことが難しい。ゆえに、Beatsのエンジニアは独自ウーファユニットを強化する方向でこだわりを貫いた。

中高音域をまかなうツイータユニットも1基載せている。筐体のフレームに強固に取り付け、さらに限られた筐体サイズの限界までユニット背面の音響空間を広く持たせた。この機構によりツイータが受け持てる音域が広がり、低音域とのつながりがスムーズになる。まるで目の前でアーティストが演奏しているような、自然なサウンドに触れられるところが新しいBeats Pillの最大の魅力だと筆者は感じる。

再設計されたドーム型ツイータが伸びやかな中高音域を再生する。写真●Beats

“生まれたての音”をユーザの耳にまっすぐに届ける

Beatsのエンジニアは、妥協することなくサウンドクオリティの進化を追い求めた。Beats Pillの伝統的なデザインを継承しながら、リスニング感を向上させるための“ある工夫”を凝らしている。

それは、設置したときにスピーカユニットがユーザに対して正面に向くよう、「約20度の傾き」を本体に付けたことだ。

本体のに約20度の傾きをつけたことで、鮮度の高いサウンドを再現する。

スピーカユニットから生まれたサウンドは、空気中を伝わり、ユーザの耳に届くまでに少しずつ減衰して鮮度が落ちる。だからこそ、“生まれたてのサウンド”を可能な限りダイレクトにユーザの耳に届けられるスピーカの形状は大切だ。その点、Beats Pillの形状は、メリハリを効かせたサウンドを楽しませてくれる。

優れたモバイル性能で、レジャーシーンで大活躍

形状の変更によってポータビリティが損なわれることはない。強化された大型スピーカユニットや、高音質化のために再設計された音響機構を持ちながら、Beats Pill+の「約21(W)×6.4(H)×6.9(D)cm」という外形寸法が、新しいBeats Pillでは「21.9(W)×7.0(H)×7.1(D)cm」とほぼ変わっていない。しかも質量は約681gと、Pill+よりも10%軽くなった。

楕円形に近い形状は、片手で持ちやすいのもポイントだ。着脱可能なストラップが付属されているので、手からぶら下げて持ち運ぶこともできる。また、IP67等級の防塵・防水対応という高い耐久性を備えるため、ある程度ラフに使えるのも魅力だろう。

本体と同色のストラップを装着できる。

今回、筆者が入手したのは鮮やかな「ステートメントレッド」のモデル。フロントグリルにはBeatsのブランドロゴが上品に輝く。

ステートメントレッドはビビットな色味だが、上質なデザインであらゆるシーンにマッチする。写真●Beats

バッテリは、約24時間の連続再生に対応。急速充電機能により、10分間のチャージで2時間の再生が楽しめる。USB-Cケーブルで接続したiPhoneなどのスマホを、Beats Pillのバッテリで充電する機能も頼もしい。

気になる音質は? サイズからは想像できない大きなスケール

新しいBeats PillをiPhone 15 Proに接続し、Apple Musicの音源をリファレンスにして試聴した。Beats Pillが対応するBluetoothオーディオのコーデックは、iPhoneによるBluetoothオーディオ再生のパフォーマンスを引き出せるAACと、汎用性の高いSBCだ。

スマートフォンによる音楽リスニングは、圧倒的にリアリティが高まる。

ロック、ポップスのバンドによる演奏を聴くと、ボーカルの音像が真ん中に凜と立ち、分厚い演奏が包み込む。音像の立体感がとても鮮やかなので、それぞれの楽器が鳴っている位置も明瞭に見えた。

低音域はパワフルでエネルギッシュだ。だぶつく感じがなく、タイトでスピード感あふれるベースやドラムスのリズムが、アップテンポな楽曲の高揚感を引き立てる。

中高音域との分離も鮮明だ。ボーカルやピアノの静かな演奏を聴くと、伸びやかなサウンドと、シンとする静寂とのコントラストが明瞭に描き分けられる。奥行き方向も見晴らしの良い演奏で、深く没入しながら聴いた。このコンパクトなスピーカが、想像以上にスケールの大きなコンサートホールの臨場感を描いてみせる。

今回は試していないが、Beats Pillを2台ペアリングするとステレオ再生も楽しめるようだ。iOSの「設定」アプリ、AndroidのBeatsアプリからスピーカ2台によるステレオ再生、1台ずつのモノラル再生を選んで鳴らせるほか、1台のBeats Pillを家族や友だちで共有しながら聴くモードが選べる。

Vision Proとも接続可能な数少ないスピーカ

Beats Pillは、Appleデバイスとの相性がとてもよいBluetoothスピーカだ。本体の電源ボタンをダブルタップすると、ペアリングしているiPhoneやiPadのSiriが起動し、Beats Pillが内蔵するマイクから音声操作が行える。マイクが音声を取り込むときには、Beats Pillが搭載する機械学習によるノイズ低減処理が働くので、ビデオ会議などのコミュニケーションツールとしても本機が活かせるだろう。

Beats Pillの天面に搭載されたボタンで基本操作が行える。

ちなみに、空間コンピュータ「Apple Vision Pro」にも接続できた。2024年8月上旬時点では、Apple Vision Proに接続できるBluetoothオーディオ機器は限られている。

確認できているものは、AirPodsシリーズ、そしてBeatsがApple傘下のブランドになって以降に発売されたBluetoothオーディオ機器の一部のみ。Beats Pillは、Apple Vision Proで再生するコンテンツのオーディオを、ワイヤレスで受けられる数少ないスピーカなのだ。

Beats Pillは、Apple Vision Proとのペアリングが可能なワイヤレススピーカだ。

だが実際にBeats PillとVision Proの組み合わせを体験すると、Vision Proのディスプレイに表示される映像とは離れた場所からBeats Pillのサウンドが聞こえてくるので、あまり実用的な使い方ではないと感じた。それより、Apple TV 4Kに接続し、動画コンテンツを楽しむ際のサウンドバー的な使い方をするのが面白そうだ。

シリーズの誕生時から変わらない快適な使い勝手、そしてさらなるサウンドの充実と高いコストパフォーマンスを実現したBeats Pillを、ぜひ体験してみてほしい。

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著者プロフィール

山本敦

山本敦

オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。ITからオーディオ・ビジュアルまでスマート・エレクトロニクスの領域を多方面に幅広くカバーする。最先端の機器やサービスには自ら体当たりしながら触れて、魅力をわかりやすく伝えることがモットー。特にポータブルオーディオ製品には毎年300を超える新製品を試している。英語・仏語を活かし、海外のイベントにも年間多数取材。IT関連の商品企画・開発者へのインタビューもこなす。

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