山道を何日間も歩き続けるバックパッキング登山では、服1つの選択ミスが死に直結することがある。登山の世界では、服は「ギア」に含まれるのだ。
雨を通さず蒸れを排出する100g台のレインウエアや、綿の半袖Tシャツの半分以下の軽さの完全防風ジャケットなどは、もはやギアと呼べるだろう。20年以上にわたる長距離登山の経験から、g単位で荷を削る技術、ギアを徹底的に精査する感覚を身につけることができた。
ミニマリスト的な移動生活を好み、「UL(ウルトラライト)スタイル」を追求するぼくがギアを選ぶ基準は次の4つ。①1gでも軽いこと。②1立方センチでもコンパクトなこと。③「折りたたみ可能」であること。④「複数の機能つき」であればなおよし。
iPhoneが①②④をクリアしており、究極のULギアであることは言うまでもない。登山や移動生活を続ける中でわかったことは、実用的にも、生き方という面でも、荷物はなるべく少なく、身軽なほうがいいということだ。
ぼくの移動生活では、フライト時に荷物は預けずに機内持ち込みのバックパック1つで、世界中を何カ月も旅する。装備のUL化を徹底すれば、手荷物の制限内(約7kg)に抑えることが可能だ。荷を預けないので、空港での荷物の待ち時間は不要となり、着くなりすぐに街に出ることができるし、ラゲッジ紛失というリスクもゼロとなる。
荷物が少ないと、パッキングを素早く完了できるのがいい。ぼくは15分あれば出発が可能だ。スーツケースを使わずバックパックを使う理由はさらに2つある。「両手の自由を確保できること」と、引きずる必要がないため「フットワークが軽くなる」ということ。
さて、モバイルボヘミアンにとっての心臓部は、快適なネット環境だ。これも軽量&ミニマムであればあるほどいい。ここでは、ある革命的なULデジタルギアを1つだけ紹介したい。
それは、「グローバルeSIM」と言われる新しいサービス。特定のeSIMをダウンロードすることで、世界中でネット接続ができる画期的なもの。一般的なモバイルルータは軽くても100gはあるが、eSIMは事実上0gと超軽量! なうえに、当然、充電という手間も不要。これまで複数のグローバルSIMを試してきたが、SIMは物質なだけに、店で買うか送ってもらう必要があったが、それも不要に。まさに革命だ。
ぼくのおすすめは、圧倒的に使いやすい「Truphone」。eSIMのダウンロード購入も、エリア変更も、通話時間やデータ量の追加もiPhoneアプリ上で完結できる。これで昨年、南ヨーロッパから北ヨーロッパまで数カ国を旅したが、テザリングも可能で驚くほど快適だった。モバイルボヘミアンにとっては、ギアの取捨選択と荷のUL化は大切だが、いつでもどこでもストレスなく仕事ができる環境を整備することも、必須項目なのである。

※この記事は『Mac Fan 2020年4月号』に掲載されたものです。
著者プロフィール
四角大輔
作家/森の生活者/環境保護アンバサダー。ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない生き方を構築。レコード会社プロデューサー時代に、10回のミリオンヒットを記録。Greenpeace JapanとFairtrade Japanの日本人初アンバサダー、環境省アンバサダーを務める。会員制コミュニティ〈LifestyleDesign.Camp〉主宰。ポッドキャスト〈noiseless world〉ナビゲーター。『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』『人生やらなくていいリスト』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』『バックパッキング登山大全』など著書多数。




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