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ベーシックインカムのススメ・後編/四角大輔の「Mobile Bohemian 旅するように暮らし、遊び、働く」 【第49話】

著者: 四角大輔

ベーシックインカムのススメ・後編/四角大輔の「Mobile Bohemian 旅するように暮らし、遊び、働く」 【第49話】

お金の代わりに、モノやサービスを受け取るというワークスタイルがある。ぼく自身が広告塔となったり、ブランドや商品の宣伝のお手伝いをするアンバサダーワークにこのパターンが多い。ぼくはこの仕事の受け方を、物々交換ならぬ技々交換、つまり「スキル交換スタイル」と呼んでいる。言い換えれば「新しい自給自足のカタチ」だ。

ぼく自身の個人ブランド、発信力や表現力、アイデアや知識といった、ぼく独自の「スキル=技」やコンテンツを提供する代わりに「お金以外のなにか」をいただくということだ。ここで役に立つのが、SNSのフォロワー数だけでなく、発信による経済効果の高さである。

ぼくが、あるアウトドアメーカーの服を着て登山雑誌に出たり、契約先の釣り竿を使って大きな魚を釣っている様子をSNSで発信する代わりに、契約金ではなく、ぼくが使いたい最新のアウトドアウェアやギアを受け取る。 

ぼく自身がもともと大好きで飲んでいたニュージーランドワインの例もわかりやすいだろう。実際にブドウ畑や醸造所を訪れて、作り手の哲学に惚れ込んだそのオーガニックワインのことを活字にしたり、写真などで発信しているうちに、自宅やぼく主宰のパーティーにワインを送ってくれるようになった。

それがきっかけで、ぼくの名前が入ったワインをプロデュースすることになったり、生産者さんを訪ねる旅自体を記事にするなど、さらなる仕事に発展。これぞまさに、仕事とプライベートの垣根がなくなるリアルストーリーだ。

海外で移動生活を送る際は、滞在地のPRをする代わりに、宿泊費を割引してもらったり、航空券を旅行代理店にサポートしてもらう代わりに、ぼくの個人ブランドや人脈を提供するパターンもある。過去10年に、こんなお金を介在させない契約を意識的に増やしている。

昨年まで多くやっていた、アドバイザーの仕事も「スキル交換スタイル」が大きな割合を占めていた。クライアント側にすれば、対価として、お金を支払うよりも、その企業がつくっているモノやサービスを提供するほうが簡単。仕事を受ける側のぼくは精神的な負荷が減る。こんなにもお互いがWin-Winな仕事であれば、やらない手はない。

ただし、ぼくがこういった仕事を受けるうえで、譲れない条件がある。それは、提供を受けるモノやサービスを元々愛用していたこと、大好きであること、もしくは暮らしや仕事に必要であること。高い報酬を提案されても、この条件に合致しないかぎり受けることはない。

そうすることで「遊び・生活・移動」の経費は下がり、ライフコストが飛躍的に小さくなっていき、わずかのベーシックインカムを確保すればOKとなる。結果、お金のための長時間労働や、お金の不安から解放されて心身は自由になり、新たな挑戦ができるようになる。そして、それがまた新たな仕事や収入をもたらす、という正のスパイラルに入っていくのだ。

最近は世界の果てにある離島でもWi-Fiを確保できるように。Aitutaki Islandにて。#shotoniphone

※この記事は『Mac Fan 2020年1月号』に掲載されたものです。

著者プロフィール

四角大輔

四角大輔

作家/森の生活者/環境保護アンバサダー。ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない生き方を構築。レコード会社プロデューサー時代に、10回のミリオンヒットを記録。Greenpeace JapanとFairtrade Japanの日本人初アンバサダー、環境省アンバサダーを務める。会員制コミュニティ〈LifestyleDesign.Camp〉主宰。ポッドキャスト〈‪noiseless‬ world〉ナビゲーター。『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』『人生やらなくていいリスト』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』『バックパッキング登山大全』など著書多数。

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