テクノロジーと交通手段がここまで発達した今こそ、都市近郊でないと仕事がないから食っていけない、という思い込みを捨て去るべきだ。
まず、深呼吸して目を閉じ、胸に手をあてて自身に問いかけてみてほしい。
「自分が本当にやりたいことはなに?」
「そのために最適な居場所はどこ?」
今の住居で問題なければ、そのままで大丈夫だが、もうしそうでないなら、そのための“ホームプレイス探し”を始めたほうがいい。こう言うと、現在の職場近くの慣れ親しんだ生活環境を手放すことへの、不安やリスクが頭をよぎることだろう。そんなときは、さらに真剣に、自身の心にこう聞いてみてもらいたい。
「この恐怖感は10点満でどれくらい?」
「そのリスクは絶対に起こりうる?」
どうだろうか。「意外に大丈夫かもしれない」と思われた方はきっと多いはず。そういった人たちは過去に〝人生における大切な空想〟から逃げてきただけあり、「得られること vs 失うことこと」の重大性を本気になってシュミレーションしたことがなかっただけなのだ。
人生を本気で変えたい人たちが集まる、ぼくが主宰するオンラインサロン〈LifestyleDesign.Camp〉のワークショップや対面セッションでは、必ずこれらを問いかける。すると、「今の仕事も居場所も違う」「これらを手放しても何とかなりそう」という反応が大半を占める。
なお、「今の環境は捨てられない」と回答した人には“失うのが怖いことリスト”を書いてもらうのだが、その作業を経ることで、ほぼ全員が「きっと大丈夫」と思えるようになるからおもしろい。
次は、グーグル・アースを駆使してのバーチャルトリップを試みてみるべし。ここで大切なのは、「もし金銭的にも、人間関係的にも、言語的にもまったく制約がないとしたら、自分はどこに住みたいか」と考えながら、ネット空間に存在する地球を旅することである。そうやって、あらゆる縛りから精神的に自由になりながら空想し、ハイレベルのワクワク状態で世界を見てみると、思わぬ衝動(=本当の心の声)が湧き出てくるものだ。
「パリの真ん中に住みたかった」「毎日、青い海でダイビングできる環境に暮らしたかった」といった、心の声がどんどん聴こえてくるのである。次のアクションは、スカイスキャナ(Skyscanner)で、そこへの航空券を調べてみること。ぼくが20代の頃にはなかったLCC(格安航空会社)のおかげで、驚くほど安く行けることがわかるだろう。そして、そのワクワクが冷めないうちに、次の大型連休の日程でチケットを購入してしまうのだ。
ぼくは、仕事よりもライフスタイルを優先した結果、ニュージーランドの湖に暮らしながら、世界中を旅して生きている。理想の生き方とホームプレイスは、100人いれば100通りあるはず。これを機に、「あなただけの理想は何か、どこか」を本気で考えてほしい。そして、まずはそこへ旅してみることを勧める。必ずそこで、何かを感じるはずだから。

※この記事は『Mac Fan 2019年5月号』に掲載されたものです。
著者プロフィール

四角大輔
作家/森の生活者/環境保護アンバサダー。ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない生き方を構築。レコード会社プロデューサー時代に、10回のミリオンヒットを記録。Greenpeace JapanとFairtrade Japanの日本人初アンバサダー、環境省アンバサダーを務める。会員制コミュニティ〈LifestyleDesign.Camp〉主宰。ポッドキャスト〈noiseless world〉ナビゲーター。『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』『人生やらなくていいリスト』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』『バックパッキング登山大全』など著書多数。