何を隠そう、この原稿は一気に書いたわけではない。「切れ端時間」で少しずつ書き足していったのである。この冒頭の部分も、某自動車会社のミーティングが8分ほど早く終わったので、そのままロビーのテーブルで書いている。3分あれば、iPad Proを起ち上げ、5行でも10行でも書く。
このタイトルのとおり、僕は非常にケチである。名古屋人だからかもしれない(おっと、経歴詐称になるので要注意だ。正確には愛知県大府市生まれ)。名古屋人はケチで有名だ。貯金で、でかい一戸建てを建てるのが自慢だ(ちなみに僕は未だに賃貸。お金がないので…)。さて、そんな僕の連載、今回からスタート。とはいえ、ケチなので、原稿を書く時間をわざわざ設定しない。会議と会議の合間の「切れ端時間」を上手に使って、僕は今を構築しているのだ。
そのために必要なのが、iPad ProとiPhone7である。まずは、その機能を使いこなすところから始まる。「せっかく買ったのだから使わないと損」というケチ根性でいろいろな機能を試す。ケチなので紙もできる限り使わない。iPad Proにしたらノートもなくなった。文具が趣味だが、今一番使う筆記用具は、Apple Pencilに。以前は、年に5000枚ほど使っていたコピー用紙も今はたったの200枚ほど。
ちなみに本もできる限りKindle。「本は紙でなければならない」という人もいるが、そもそも人類は石版や木版の文字を読んでいる時代のほうが長い。だったらタブレットでも大丈夫じゃないかと思う。
さっきも、地下鉄表参道駅で2分の時間があった。その時間に名刺管理アプリの「Eight」を起ち上げる。それで、とりあえず「大久保」という苗字の人を検索。計17人、上から順番に近況メールを送っていく。「お元気ですか?」「最近はどんなことをしていますか?」とメールする。アプリの「ワールドカード・モバイル(WorldCardMobile)」とEightを合わせると1万人近い人が入っている。そんな人々に思いつくままメールをしていくのだ。さっきもクライアントさんのロビーで、4人に挨拶メールを送った。
「そんなことして何になる?」と思うかもしれない。でも、「せっかく出逢ったのだからもったいない」「人を大切にしたい」という思いが強い。データとして持っていても仕方がない。ケチだから活用するのだ。毎日、切れ端時間に、この手法で30人ぐらいにメールをしている。年に1万人以上にメールをすることができる計算だ。
そんなメールから、今年になって3冊本が決まった。「久しぶりです。会いましょう」というところから始まってランチしたりしてミーティング。「その話面白いじゃないですか」という展開になることがほとんどだ。
実はそれだけではない。「あ、アイデア思いついた」と思ったら僕は企画書にせずにまずはメールをする。それが何か面白いことにつながったり、仕事になったりすることが実に多い。速さが勝負だ。
いつからそんなふうに「切れ端時間」を使えるようになったのだろうか?多分中学生の頃だ。「中島みゆきのオールナイトニッポン」など、深夜ラジオ聞いていてほとんど勉強をしていなかった。隙間のCMや学校帰りの時間を利用して宿題をやったものだ。
面倒なのが、領収書の整理。地下鉄の移動中に車内で領収書の整理をした。8枚ほどの領収書をGoogleのスプレッドシートに打ち込む。あとで税理士がそれを見るだけだ。「塵も積もれば山となる」だが、「切れ端時間も積もれば宝となる」と考える。そう僕には「待ち時間」はない。人生に待ち時間はない。特にテクノロジーの進化がそれを実現していることを実感している。ほら、14回の切れ端時間でこの原稿も完成した。次の切れ端時間が待ち遠しい。
※この記事は『Mac Fan』2017年6月号に掲載されたものです。
著者プロフィール
野呂エイシロウ
放送作家、戦略的PRコンサルタント。毎日オールナイトニッポンを朝5時まで聴き、テレビの見過ぎで受験失敗し、人生いろいろあって放送作家に。「元気が出るテレビ」「鉄腕DASH」「NHK紅白歌合戦」「アンビリバボー」などを構成。テレビ番組も、CMやPRをヒットさせることも一緒。放送作家はヒットするためのコンサルタント業だ!と、戦略的PRコンサルタントに。偉そうなことを言った割には、『テレビで売り上げ100倍にする私の方法』(講談社)『プレスリリースはラブレター』(万来舎)が、ミリオンセラーにならず悩み中。