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大きな可能性を秘めたmacOS Mojave

大きな可能性を秘めたmacOS Mojave

Mac復権のはじまり

2010年にスティーブ・ジョブズはポストPC時代のPCを“トラック”と表現しました。トラックは農場のニーズを満たして普及したものの、都市で車が使われるようになると手軽な乗用車(iOSデバイスなど)が選ばれるようになる。ジョブズはそう予言したのです。それは見事的中し、PC市場は縮小。その中でMacは、ポストPC時代のPCとして進化することで成長を遂げてきました。

しかし、Macがトラックとしての価値を追求しなかったことで、プロフェッショナルユーザから強い不満の声が上がり始めました。トラックが今でも社会に不可欠であるように、トラックのようなPCがなかったらエコシステムは機能しなくなります。たとえば、iOSアプリの開発はMacに支えられているように。アップルは過ちを認め、新しいMacプロの開発を表明、iMacプロを送り出すなど、プロ市場への対応に乗り出しました。もちろん、そうした変化はハードだけでなく、OS開発にも表れていくのです。

こうした背景で生まれたmacOSモハベは、パワーユーザのニーズを満たす新機能や強化を数多く含みます。たとえば、ソフトウェアを開かずにさまざまなタスクを直接実行できる自動化機能「クイックアクション」や、UIを黒系の暗い色に変更する「ダークモード」、デスクトップに散らばるファイルを自動整理する「スタック」などが挙げられます。加えて、iPhoneのカメラと連動した写真の撮影と取り込みなど、乗用車のような便利さも引き続き改良を重ねています。

モハベが意味すること

すべてのユーザにプラスをもたらし、使いやすさに磨きがかかったモハベは成熟を感じさせるアップデートです。それだけではなく、macOSのメジャーアップデートに付けられるカリフォルニアの地名に今回「モハベ」が選ばれたことには、特別な意味がありそうです。

モハベは砂漠地帯です。灼熱の昼間から一転、夜間は凍りつくぐらいに冷え込みます。そうした二面性が、ライトモードとダークモードのイメージにぴったりなのがモハベを選んだ理由のひとつでしょう。ちなみに、モハベはUFOの目撃報告が多い場所として有名です。スティーブン・スピルバーグはモハベ砂漠において映画「未知との遭遇」の発想を得ました。

実はモハベでは、古くは核実験、最近だと宇宙ベンチャーなど、時代を変えるような技術の実験が行われてきました。そのため、開発中の実験機などがUFOに見間違われるのが目撃情報の真相と言われています。もとい、モハベは広大な砂漠ですが、その名前は人々に未来や未知のものを想像させます。

モハベで新たに標準ソフトとして「株価」「ホーム」「ボイスメモ」「ニュース」が追加されました。これらはmacOSの開発環境にiOSのUIKitを取り込む技術を用いて、iOSから移植したものです。今はまだアップル製の4つのソフトだけですが、このiOSアプリの移植は来年にはサードパーティにも開放され、アップルのプラットフォームの未来に大きな変化をもたらす可能性が注目されています。

モハベはMacの過去と未来を結ぶアップデートです。それ自体は何かを刷新するような大きな変化ではありませんが、モハベによって過去から未来への道すじが通り、その先で何が起こるのか、ユーザの想像をかき立てます。それはまさに“未知との遭遇”のようです。

「Mojave」をもっと身近に感じるために

“モハベ砂漠”ってどんな場所なの?

macOS Mojaveの「モハベ」は、モハベ砂漠に由来します。モハベ砂漠は、これまで採用されたカリフォルニアの地名の中でもっともユニークな場所。米国の歴史においてさまざまな出来事の舞台になり、広大な砂漠地帯には数々の見どころが存在します。「Mojave」をもっと身近に感じるために!

意味は「水のそば」

アメリカ南西部にあるモハベは、カリフォルニア州からネバダ州にまたがり、ユタ州とアリゾナ州にも一部が広がる広大な砂漠です。ラスベガスやランカスターといった大都市を含みます。スペイン語に基づいて表記された「Mojave」は、砂漠に住んでいた種族の名前から付けられました。意味は、ネイティブ・アメリカンの言葉で「水のそば」です。

寒暖差の激しい気候

夏は暑いところで最高気温が50度を超えますが、日が落ちると急速に冷え込み、冬の最低気温は零下10度以下になります。年間降雨量は50ミリ以下。もっとも高い場所は標高3600メートル。逆に“死の谷”と呼ばれる「デスバレー」には海抜0メートル以下の場所があります。そのため、北米でもっとも低くて暑い場所なのです。高低差のある大地の山々や谷が、長い時間をかけて強い風に削られ、モハベでしか見られない自然の造形美がつくられました。

ツアー参加が吉

日本からモハベ砂漠に訪れるのなら、ラスベガスやロサンゼルスから出発するモハベの観光スポットへのツアーに参加するのがおすすめです。モハベ砂漠を通過するグランドキャニオン・ツアーもあります。砂漠をディープに体験するならレンタカーを借りてドライブもいいでしょう。ただし、厳しい気候、見渡す限りただ自然が広がるだけの広大な場所で、携帯電話を持っていてもつながらない場所ばかりです。事故のリスクが伴うので、しっかりとした準備が欠かせません。

観光スポットは「自然」

モハベ観光で人気なのは、広大で神秘を感じさせる「自然」。美しい砂丘と塩原、色彩豊かな砂岩峡谷が広がるデスバレー国立公園、奇妙な形をした木の森を周るジョシュア・ツリー国立公園など、感動的な自然を体験できます。引退した航空機や引き取り手のない飛行機が集められた「飛行機の墓場」と呼ばれる空港も人気です。米国の映画や小説、音楽に数多く登場する「ルート66」を走ると、成功を夢見て人々が東から西へと移動した頃の古きアメリカを体験できます。

数々の“砂漠伝説”

「砂漠の真ん中に電話ボックスが現れては消える」「砂漠の真ん中に予約制の無料プールがある」「サボテンのように針だらけの猫がいる」「宇宙人とのコンタクトに成功した」「Googleマップに表示されない場所がある」など、都市伝説ならぬ数々の砂漠伝説がささやかれています。中には単なる噂もありますが、歴史の産物だったり、アート作品または壮大なジョークなど、調べて行くとモハベの旅がさらに楽しくなります。

世界最大の太陽熱発電所

カリフォルニア州やネバダ州は米国の大規模太陽光発電の最前線であり、モハベ砂漠には数多くのメガソーラーがあります。中でも有名なのがモハベ砂漠にある「アイバンパ太陽発電所(Ivanpah Solar Electric Generating System)」です。反射鏡で集光した太陽熱で蒸気を発生させてタービンを回すタワー式太陽熱発電所では世界最大。広大な敷地に、タワーを中心に35万枚の反射鏡が並ぶ姿は壮観です。