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新型iPhone発表会は地球人類に向けたメッセージだった

著者: 林信行

新型iPhone発表会は地球人類に向けたメッセージだった

日本の人口は減り続けているかもしれないが、世界の人口は爆発的な勢いで増え続けている。7年前の2011年に70億人を突破したばかりの世界の人口は、37年後の2055年には100億人を突破すると言われている。

未来を見据えた人々の中には、避けられない食糧不足に備え、今から代替肉の研究をしている人も多い。家畜の細胞を培養して3Dプリンタなどで血管などの食感も再現したクローン肉や、大豆などの植物性たんぱく質で肉の食感を再現する研究などもあり、ビル・ゲイツやポール・マッカートニーら国際的有名人もこうした研究を後押ししている。また最近、そこかしこで耳にする昆虫食など、新しい食材を開拓する試みも増えてきた。

資源枯渇の問題は食料だけの話ではない。2008年時点で、私たちの生活をこれからも続けるには地球1.5個分の資源が必要と言われていた。2030年頃には地球2個分にまで増える。

我々の多くは会社に行くと昨日の続きの仕事に没頭してしまうが、もはやそんな余裕はどこにもないのだ。それにも関わらず、多くの企業は厳しい資本主義の競争の中で、ライバル企業に負けずに右肩上がりの成長カーブを描くために、環境のことなど考えず競争に邁進している。

そんな中、今、世界でもっとも価値があり成功しているアップルがiPhoneの新型発表会という、世界中の注目を集める1年に1度のイベントにおいて、環境に配慮した製品開発をいかに真剣に行っているかについて、しっかりと時間をかけて説明をしたのは非常に意義深い。

具体的にどんなことを発表したかは40ページの詳細記事に譲るが、新型iPhoneのCPUやスクリーンサイズといったスペックだけでなく、地球環境に対する負荷をこれだけ抑えても、これだけ美しく高性能な製品がつくれることを世界のメディアにはもっと伝えてほしいと願ってやまない(なので、Mac Fanがこのことをきちんとページを割いて伝えていると知り、うれしく思う)。

11年前の日本でのiPhone発売が決まる前、筆者は書籍や講演、記事の執筆などを通して、日本のメーカーは「今こそ一度立ち止まって企業としてのあり方を俯瞰する必要がある」と訴えていた。このときは電話会社の言いなりになるのではなく、自社の価値観を体現した製品を全力勝負で開発する必要がある、という意味で言っていたが、今は、一度立ち止まって環境に対する取り組みを真剣に考えてもらいたいと思う。過激なことでも知られる環境保護団体・グリーンピースに一時は槍玉に挙げられていたこともあったアップルが、よくぞここまで環境優良企業に転換したと驚くばかりだ。動きを止めずに全体を見渡しながらでも、企業としての在り方を全面的にシできることを示した点でも素晴らしいと思う。

ちなみに、アップルの環境に対する取り組みには40ページで触れられていない素晴らしさもある。

それは製品を美しく仕上げることだ。今回、発表された新型iPhoneやアップルウォッチも、その美しさは他社製品と比べて卓越していることは改めて説明する必要もなかろう。

5色のiMacを発表した1999年、製品発表後の記者会見でデザイン部門を率いていたジョナサン・アイヴが「美しいものをつくることが何よりも大事だ。そのほうが製品を長く愛してもらえ、その結果、無駄に廃棄されることも減る」といっていたのを思い出す。今回の発表会で「(iPhoneを)長く使ってもらうのが一番環境に優しい」と語っていたリサ・ジャクソン氏の言葉にも共鳴するものを感じた。

Nobuyuki Hayashi

aka Nobi/デザインエンジニアを育てる教育プログラムを運営するジェームス ダイソン財団理事でグッドデザイン賞審査員。世の中の風景を変えるテクノロジーとデザインを取材し、執筆や講演、コンサルティング活動を通して広げる活動家。ツイッターアカウントは@nobi。