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Apple独自のスマホ中毒対策

Apple独自のスマホ中毒対策

スマホ中毒対策の一手

今年秋に登場するアンドロイドの次期メジャーバージョンには、スマートフォンの使用時間を管理する機能や使いすぎを防ぐ機能が実装される。また5月末にマイクロソフトがファミリー向けサービスのペアレンタル機能の強化を発表した。そしてアップルもiOS 12に「おやすみモード」の改良や新たに「スクリーンタイム」機能を組み込む。米国で大きな社会問題となっているスマートフォンの使いすぎの対策で、モバイルに関わるテクノロジー大手がスマートフォン中毒対策の強化で足踏みを揃えた。

スマートフォンを利用するサービスやアプリの多くはエンゲージメント、ユーザと関わる時間を増やすことを重視してきた。その結果がスマートフォンの長時間使用の弊害である。さまざまな調査で、睡眠不足、視力低下、肥満や高血圧の引き金になると指摘されている。スマートフォンが目の届く範囲になかったら不安になる症状が「ノモフォビア」と呼ばれるようになった。そうした状態はストレスを生み、人間関係の悪化や生産性の減退につながる。

スマートフォン中毒の多くはソーシャルメディアやゲームアプリが主因だが、物心ついたときにはスマートフォンやタブレットが身近にあった子どもが増え始めている。モバイルプラットフォームを提供する企業が負う責任があるとして、市民団体や研究者、そして政治家や機関投資家からも対策を求める声が上がっていた。

中でもアップルは名指しされることが多い。プライバシー保護や通信の暗号化と同じで、ユーザのデータを収集したい広告ベースの企業だと、どこまでユーザのための対策を徹底できるのか疑問符が残る。その点、アップルはデバイスの販売から収益を上げる企業だ。エンドユーザが顧客であり、ユーザのために必要ならばエンゲージメントの制限も厭わない。

「やめろ」は効果なし

使いすぎ対策は、利用時間を制限する議論になりがちだ。だが、クレイグ・フェデリギ氏は「ユーザがたくさんの重要なことのバランスを保てるようにする」と述べていた。

iOS 12で搭載された機能の数々は制限を強いる機能と見なされがちだが、そうではなく、ポジティブにスマートフォンを正しく使いこなすための機能になっている。

iPhoneやiPadのような魅力的なデバイスを持ったら、その虜になってしまうのは当然のことだ。大人も手放せなくなるのだから、子どもが自制できないのは言うまでもない。なによりの問題は、スマートフォンが簡単に時間をつぶせる道具になっていることだろう。

アップルは、アップルウォッチを用意して両手に何も持たずにスマートデバイスを活用できるようにしたり、iPadで机や教室に縛られずにどこでも学べるようにするなど、ユーザのリアルな生活にスマートデバイスを活用する取り組みを続けてきた。スマートフォン利用をユーザが見直し、利用時間を管理できるツールは有用だが、ただ利用時間を制限することが目的になっては、スマートフォン中毒の問題の根本的な解決にはならない。

自分の人生の進み方を変えるような出来事や出会いに出くわしたとき、または何か学びたいことができたとき、刺激を受けたユーザが自分のやりたい道に進むのをサポートする道具であることが、もっとも効果的なスマートフォン中毒対策になるのである。

社会的な問題に

カリフォルニア州パロアルトのアップル直営店前で、スタンフォード大学の学生グループが、スマートフォン産業の先駆者として対策を講じるようAppleに求めるなど、スマートフォン中毒は社会的な問題に発展していた。

改良されたおやすみモード

コントロールセンターから簡単に、「このイベントが終わるまで」といった自動終了機能とともに設定できるおやすみモード、解除し忘れのようなトラブルなく使えるように実装してこそ利用者が増える。