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取り組み続けるプライバシー尊重

取り組み続けるプライバシー尊重

邪悪にならないアップル

この春にグーグルの行動規範から「邪悪になるな(Don't be evil)」という有名なモットーが削除された。オープンなWEBの進化を後押しするグーグルをよく表した言葉だったが、その一方で広告ベースの無料サービスでユーザから収集したデータから収益を上げるビジネスモデルとの矛盾が指摘されていた。

今、米国では人々のプライバシー保護に対する関心が、過去に例がないほど高まっている。今年春に発覚したフェイスブックのデータ不正流出問題で、よりユーザ情報の収集に厳しい目が向けられるようになった。さらに欧州連合(EU)において、個人データ保護を強化する「一般データ保護規則」(GDPR)の適用が始まった。そうした中で、グーグルは「邪悪になるな」という看板を下げざるを得なかった。

「邪悪になるな」はユーザに対するサービスの行動規範を意図した言葉だった。しかし今日のIT産業において、そのモットーを掲げ続けられる企業を見つけるほうが難しい。

そうした状況だから、逆に「邪悪になるな」を実践しているようなアップルのプライバシー方針が評価されている。

徹底したオプトイン

アップルのプライバシー保護の姿勢は昨日今日に設けられたものではない。故スティーブ・ジョブズ氏もCEO時代に、個人情報に基づいたビジネス展開の危うさを指摘し、データ共有の可能性を認める一方で、共有の際にオプトイン(ユーザによる許諾や参加)を徹底する考えを示した。後を継いだティム・クック氏も「顧客(ユーザ)は我々の商品ではない」と過去に何度も明言している。

macOSモハベやiOS 12では、サファリのプライバシー保護機能が、トラッキングにつながる共有ボタンやコメント・ウィジェットをデフォルトでブロックする。さらに、クッキーを使わなくても、ユーザのデバイスの構成、インストールされているフォントや拡張機能から、ユーザのデバイスを推定するフィンガープリンティングに対しても、デバイスが特定しにくくなる対策を施す。また、macOSで、ユーザのデータや情報、デバイスの機能にアクセスしようとするソフトに対して、より広い範囲でユーザの許諾を求めさせるようにする。

ほかのIT大手がプライバシー方針を見直す中で、アップルは変わらず、顧客の情報の保護を継続的に強化し、共有や機能アクセスにはユーザのオプトインを徹底している。

しつこい警告や確認を嫌うユーザは少なくない。手間なく開始できるオプトアウト(ユーザによる拒否)のほうが、表向きはユーザにとって快適に思える。しかし、そうしたサービスによって、ユーザの知らないところでユーザの情報が利用される問題が生じた。オプトインはユーザにひと手間を強いるが、安全と安心の上にこそ、ユーザの快適な使用体験は成り立つ。

しつこいオプトインを強要したり、サブスクプション契約でアクセスできるユーザ情報を制限するなど、アップルはユーザ中心のプライバシー保護を重視して、開発者やコンテンツ提供者にビジネス機会の制限を強いてきた。でも、忘れてはならないのは、プライバシーの保護の尊重によって、個人情報の活用をユーザに認めてもらう権利もきちんと保護されるということだ。プライバシーに関わる情報を顧客が安心して管理・共有できる環境の先に、モバイル時代の新しい体験やサービスの可能性が広がる。

徹底した個人情報保護

ユーザが気づかないうちにコメント欄や共有ボタンを通じてトラッキングされるため、そうした構成要素をデフォルトでブロック、ユーザが使用を希望する場合も許諾画面で再確認する。

フィンガープリンティングを防ぐ

Cookieなしでもユーザのデバイスの特定を試みるフィンガープリンティングに対して、標準的な構成情報しか見えないようにして推定されるのを防ぐ。モバイル時代の追跡技術にも対策を講じる。