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Apple Design Awardsに見るデザインという言葉の意味

著者: 小平淳一

Apple Design Awardsに見るデザインという言葉の意味

優れたアプリ/ソフトの数々が表彰されるApple Design Awardsの受賞式は、WWDC(世界開発者会議)に欠かせない注目トピックの1つだ。今年表彰された10作品を見ていくと、「Design Awards」の名に込められた意味が浮かび上がってくる。

誰にとっても注目のイベント

6月4日(現地時間)に開催されたWWDC(世界開発者会議)2018。その基調講演の壇上でティム・クックCEOは、「アップストアには毎週5億人が訪れている」とアピールした。もはや世界最大のアプリマーケットであることは疑いようがないことだが、その市場を開拓したのは、アイデアと情熱を注ぎ込んで作り上げられたアプリ群とその開発者たちにほかならない。「アップル・デザインアワード(Apple Design Awards)」は、それらのアプリ群の中でも特に優れたものを選出し、栄誉を称えるセレモニーだ。表彰式はWWDCのプログラムの1つとして開催されており、今年で21年目。開発者のみならず、まだ巡り会っていない秀逸なアプリを教えてくれるという点ですべてのアップルファンにとって注目のイベントだといえる。

今年その栄誉に輝いたのは、全部で10タイトル。Mac用ソフトは1本と少なめだが、iPhone、iPad、アップルウォッチ、アップルTVと、それぞれのプラットフォームに対応するタイトルが出揃う結果となった。なお、受賞者にはキューブ型のトロフィーのほか、副賞としてiMacプロ5KとMacBookプロ15インチ、iPadプロなど、アップルの最新のハードウェアが一式授与された。

近年アップル・デザインアワードを受賞するアプリは、グラフィック面やインターフェイスデザイン、機能性、テクノロジーなど、総合的な完成度の高いものが揃っている。しかし、個々の受賞作品を実際に使ってみると、選出の理由は完成度だけに止まらないと気づかされる。

たとえば、MacとiPhone/iPadで同期できるメモアプリ「アジェンダ(Agenda)」は、アップル純正の「カレンダー」のイベントとリンクできるのが特徴だ。「A社プレゼン」といったイベントに必要なメモを紐づけておけば、当日カレンダーから素早く呼び出すといった使い方が可能になる。

純正の「カレンダー」アプリにもイベントにメモを追加する機能はあるが、それはあくまでも補助的に文章を書き添えておく程度。その点、このアプリを使えば自由に文章のスタイルを変更することも可能だし、スッキリとしたレイアウトで長い文章を書くこともできる。このアプリと「カレンダー」を組み合わせて使えば、「たっぷりとした自由記入欄があるシステム手帳」といった感覚でアップルデバイスを活用できるようになるのだ。

メモというカテゴリは、老舗のエバーノート(Evernote)をはじめ多くの強豪アプリがひしめきあう分野。そんな中、このアプリはほかとは違う着想で、メモアプリの新しい使い方、ひいてはアップルデバイスの新しい活用の形を提案している。

Appleの「Apple Design Awards」ページでは、今年の受賞タイトル一覧に加え、表彰式の様子も動画で閲覧できる。【URL】https://developer.apple.com/design/awards/

WWDC 2018の基調講演では、App Storeが毎週5億人の人が訪れるアプリマーケットであり、これまで合計1000億ドルをアプリ開発者に支払っているとア

大きな視点でのデザイン

もう1つ例を挙げよう。「バンディマル(BANDIMAL)」は、直感的な操作の子ども向け音楽アプリだ。いろいろな音を出しながらループ音楽を作り上げるアプリはほかにも数多く存在するが、このアプリが独創的なのは、音だけでなくアニメーションでも人を魅了する点にある。動物を選んでタップで鳴き声を追加していくと、鳴き声と同時にユーモラスなポーズをとってくれる。2匹、3匹と組み合わせていくことで、愉快な動物合唱団が出来上がる。子どもたちは、聴覚、視覚、触覚のすべてで「音を奏で、曲を作る」ことの喜びに目覚めることだろう。

それぞれの例に共通しているのは、ほかにはない独創性であり、さらに踏み込めば「使った人に新しい体験をもたらす」ことだといえる。つまり「デザイン」の言葉に込められているのは、単なるグラフィックの良し悪しを超えた「エクスペリエンス・デザイン」であり、それこそが選出の基準なのではないかという考えに辿り着く。アップル・デザインアワードは優れたアプリを知る機会であると同時に、「アップルデバイスの新しいユーザ体験」に気づかせてくれる場でもあるのだろう。

Apple Design Awards受賞アプリ10本を総チェック!

カレンダーと連係するメモ

Agenda

【対応デバイス】Mac/iPhone/iPad 【発売】Momenta B.V. 【価格】無料 【場所】App Store>仕事効率化

 

カレンダーに追加しているイベントとリンクできるメモソフト。iCloudでマルチデバイス間での同期も可能。カレンダーをシステム手帳のように使いたいけれど、イベントのメモ欄だけでは使いにくいと感じている人にうってつけだ。

音楽を作る喜びに目覚める

BANDIMAL

【対応デバイス】iPhone/iPad 【発売】YATATOY 【価格】480円 【場所】App Store>教育

 

10種類の動物の鳴き声を組み合わせて音楽を作ろう。わかりやすい画面構成は年齢を問わず気軽に使うことができるうえ、動物のアニメーションも楽しい。曲作りの楽しさを最短距離で感じられるソフトだ。

計算式を保存・再編集できる

Calzy 3

【対応デバイス】iPhone/iPad/Apple Watch 【発売】WapleStuff 【価格】無料 【場所】App Store>仕事効率化

 

計算式を保存して、その一部の数字を入れ直したりして再利用ができるパワフルな計算機。まるで表計算ソフトのように多岐にわたる用途で利用できるだろう。括弧を使った計算ができるのもうれしい。

わずか数タップで会話を翻訳

iTranslate Converse

【対応デバイス】iPhone/Apple Watch 【発売】iTranslate 【価格】無料 【場所】App Store>旅行

 

38カ国に対応した翻訳アプリ。スワイプで国旗を選んで話すだけの簡単操作が魅力だが、さらに何語かを自動で判断して翻訳する機能もある。アプリ自体は無料だが、継続使用にはアプリ内課金が必要。

医療用スポンジの状態を推測

Triton Sponge

【対応デバイス】iPad 【発売】Gauss Surgical, Inc. 【価格】無料 ※国内未発売 【場所】App Store>仕事効率化

 

手術中に使う医療用スポンジの状態を推測するアプリ。独自の画像処理アルゴリズムを用いて、スポンジの中に含まれている血液の量を推測することにより、手術中の失血リスクを抑えられる可能性がある。

初恋のせつなさを噛みしめる

Florence

【対応デバイス】iPhone/iPad 【発売】Mountains 【価格】無料 【場所】App Store>ゲーム

 

インタラクティブなストーリーブック。どこにでもいる普通の少女・フォローレンスは、ある日チェロ演奏者の男性と出会う…。登場人物の心情に自然とはまり込む演出と軽妙なタッチの絵柄が見事にマッチしている。

謎の研究所に侵入せよ

Playdead’s INSIDE

【対応デバイス】iPhone/iPad/AppleTV 【発売】Playdead 【価格】無料 【場所】App Store>ゲーム

 

監視員たちの目をかいくぐり、謎の研究所の秘密を探るアクションアドベンチャー。名作アドベンチャー「LIMBO」の開発者が作ったゲームで、やはり独特の世界観にハマり込める。誰もがドキドキしながらストーリーを進めていけるだろう。

美しい世界を思いっきり駆け回ろう

アルトのオデッセイ

【対応デバイス】iPhone/iPad/AppleTV 【発売】Snowman 【価格】600円 【場所】App Store>ゲーム

 

砂漠を越え、渓谷を飛び越え、伝説の神殿に辿りつこう。異国情緒たっぷりのステージで構成されたジャンプアクションゲームで、シンプルなタッチ操作で華麗にアクションを決められるのが心地いい。

きらめく命のかけらを導こう

Frost

【対応デバイス】iPhone/iPad 【発売】kunabi brother GmbH 【価格】600円 【場所】App Store>ゲーム

 

光の粒子は命のかけら。タッチ操作で粒子を引き連れ、ゴールに導く物理パズルゲーム。シンプルなルールでありながら、粒子がどのように動くかを考える奥深さがある。

小さなバイキングの大きな冒険

Oddmar

【対応デバイス】iPhone/iPad 【発売】Mobge Ltd 【価格】無料 【場所】App Store>ゲーム

 

ジャンプや斧の攻撃といった操作を行いながら進む横スクロールアクション。グラフィックの美しさもさることながら、キャラクターのちょっとした動きやステージごとの演出が凝っていて、小気味良い緊張感でゲームの世界に没頭できる。