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Apple Watchで使える「GymKit」対応マシンが日本上陸

著者: らいら

Apple Watchで使える「GymKit」対応マシンが日本上陸

2017年12月にリリースされたApple Watch(アップルウォッチ)向けOS「watchOS 4.2」では、スポーツジムのマシンとApple Watchをつなぐ新機能「GymKit」が搭載された。そして日本国内でも、ANYTIME FITNESS 恵比寿店でGymKit対応マシンを使えるようになった。リリース当日の体験レポートをお届けする。

「ジムキット」が日本でも

アップルウォッチの快進撃が止まらない。アップルの2018年第1四半期決算発表によると、アップルウォッチの売上は四半期最高を記録し、前年同期比で2倍の本数を売り上げたという。また4四半期連続で50%の伸びを記録しており、今やアップルウォッチはiPhoneに続くヒット商品となっている。

この快進撃のきっかけは、スポーツ路線へのシフトだ。初代アップルウォッチは、セレブやファッショニスタをターゲットにしたファッション路線だったが、2016年のシリーズ2以降、スポーツ路線に舵を切る。その結果、トップアスリートだけでなく、今や健康志向のライトユーザまで身につける大ヒットスマートウォッチとなりつつある。

アップルウォッチの魅力は、ワクワクする進化が今なお続いていることだ。そのひとつが、今回日本初上陸となった「ジムキット(GymKit)」である。これはアップルウォッチとスポーツジムの有酸素運動器具を接続し、運動データをシームレスに同期することで、正確かつスムースな測定を可能にする仕組みだ。ウォッチOS(watchOS)4の新機能として登場し、すでに豪、米国、欧州、中国、香港では対応するマシンが導入されていた。そして3月15日からは、ついに日本でもエニタイムフィットネス(ANYTIME FITNESS)恵比寿店で、ジムキット対応マシンを使えるようになったのだ。

Apple WatchとスポーツジムのマシンをシームレスにつなぐGymKit。マシンのNFCリーダにApple Watchをタッチすると、マシンとペアリングされ、測定データがBluetoothでリアルタイムに同期される。なおGymKitを利用するには、watchOS 4.2以上が必要だ。

国内でGymKit対応マシンをいち早く導入したANYTIME FITNESS 恵比寿店。ANYTIME FITNESSは米に本社を構える24時間営業のフィットネスクラブで、会員は国内外の同店舗3800店以上を自由に利用できる。

マシンにタッチで接続

今まではジムでアップルウォッチ(以下、ウォッチ)を使う場合、ワークアウトの開始や一時停止、終了時に、毎回マシンとウォッチの両方を操作する必要があった。ついウォッチ側のスタートボタンを押すのを忘れようものなら、記録が取れておらずがっかりしたものだ。

しかしジムキットなら、この課題が大きく改善される。使い方は、まず対応マシンのディスプレイ下部にあるNFCリーダに、自分のウォッチをタッチする。初回はウォッチにジムキットの説明が表示されるので、「続ける」をタップし、マシンの「クイックスタート」を押せばワークアウトが始まる。接続後は、マシンのディスプレイ右上にペアリングマークが表示されるのでわかりやすい。

2回目以降はNFC部分にピッとウォッチをかざして、マシンで「クイックスタート」を押すだけでよい。なおトレッドミル(ランニングマシン)の場合のみ、ウォッチで「室内ランニング」か「室内ウォーキング」か選択する必要がある。それでも、ユーザがウォッチを操作せずとも、ワークアウトアプリが自動で起ち上がるので快適だ。

マシンを一時停止すると、ウォッチも連動して自動的に一時停止する。同様にマシンで「終了」ボタンを押せばオートで接続が解除され、アクティビティアプリにワークアウトの記録が残る(しかもマシンメーカーのロゴつきで)。

さらに、もし最初にペアリングし忘れて途中から接続しても、開始時からの測定データが遡って同期される。つまりジムキットは、ウォッチの煩わしい操作をとことん排除し、ユーザの陥りがちなミスもカバーしてくれる優秀な存在なのだ。

GymKit対応マシンのディスプレイには、「Connects to Apple Watch」のマークが表示されるので迷うことは少ないはずだ。使い方がわからないときは、画面上でそのマークをタッチすると、使い方の説明が表示される。

ANYTIME FITNESS 恵比寿店では、トレッドミルのほかにも、クロストレーナー、インドアバイク、ステッパーといったLife Fitness社製の有酸素運動マシンでGymKitが利用できる。使い方はどの器具でもほぼ変わらないので簡単だ。

正確なデータを記録

もうひとつの大きな特徴は、データの正確性だ。今までは、マシンとウォッチで運動データの計測方法に違いがあるため、データのズレがしばしば生じていた。特にウォッチ側が少なく記録されてしまうと、自分の頑張りがなかったことにされるようで、想像以上にやる気が削げたものだ。

しかしジムキットではワークアウト中、マシンで計測した高精度なデータがリアルタイムにブルートゥース(Bluetooth)でウォッチに送られる。たとえばウォッチには気圧計が搭載されているが、トレッドミルやステッパー程度の傾斜では気圧の変化が測定できず、今までは高度変化のデータを残せなかった。しかしジムキットでは、マシンの傾斜情報をウォッチのデータに記録できるようになる。

逆にウォッチで計測した心拍データがマシンに送られることで、ディスプレイに心拍数を表示できるようになった。それぞれのデータを補完し合うことで、データの精度が向上し、より正確な記録を確認できるのだ。なおマシン側に送信されたデータは、接続解除後に自動消去され、個人情報が残らないようプライバシー保護にも配慮された設計となっている。

エクササイズ後、マシンの「ワークアウト終了」ボタンをタッチするまでは、Apple Watchに測定データを同期できる。最初にうっかり接続し忘れて、途中からペアリングしたとしても、データが遡って同期される心強い仕様となっている。

GymKitを実際に体験すると、ジムでApple Watchを使ったときに感じていた不満がほぼ解消されており、胸が躍った。Apple Watchによって、ジムでのワークアウト体験はより楽しく、素晴らしいものになるはずだ。

GymKitを使ってワークアウトを行うと、アクティビティアプリには使用したマシンメーカーの名前も記録される。しかもアイコンには、そのメーカーのロゴが使われるようになっている。

UXをとことん追求

アップルが目指すのは、手元を気にせずワークアウトに集中できる環境だ。ジムキットでもそのユーザエクスペリエンス(UX)を徹底して追求している。

たとえばブルートゥース接続の場合、同期には通常1~3秒程度のタイムラグが発生する。そこでアップルは通信プロトコルをジムキット専用に開発し、データの遅延がほぼないスムースな同期を実現したという。

ちなみにそのUXのイメージは、アップルのカーシステム「カープレイ(CarPlay)」からインスピレーションを受けたという。車の中でiPhoneを安全に使えるよう、車載ディスプレイから直接操作できるカープレイと同様、ジムキットはウォッチの小さな画面を見ずともワークアウトに集中できるよう工夫されている。

ジムキットの国内展開はまず恵比寿のみだが、今後エニタイムフィットネスの新規店舗では対応マシンも導入していくという。メーカーにもよるが、マシンにコンソールやチップを後付けすることで、従来のマシンをジムキット対応にアップグレードすることも可能だ。アップルウォッチの普及次第で、今後日本でもジムキット対応店舗はさらに広がっていくだろう。